金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

Life Planning Holder構想(2)アカウント・アグリゲーション

2015年01月20日 | 英語・経済

私のLife Planning Holder(以下LPH)の一つの核になるのが、アカウント・アグリゲーションAccount Aggregationの活用だ。

アカウント・アグリゲーションとは、「インターネットを使って、複数の銀行・証券・クレジットカード会社の残高・請求額などを集めてくる」サービスのことだ。詳しくはこちら

元々はアメリカで始まった金融サービスで、私の理解では年金基金が複数の運用者に委託しているファンドの運用状況をリアルタイムで把握するために導入したのが始まりだと思っている。それが個人富裕層に広まり、今では米国の多くの一般の消費者が利用するサービスになっている。

日本ではソニー銀行などネット銀行やマネーフォワードなどの専門業者がこのサービスを提供しているが、米国に較べると利用者の数はまだまだ少ない。私が利用しているソニー銀行のアカウント・アグリゲーション・サービス「人生通帳」の利用者は約9万人だが、米国最大手の専門業者Mint社のユーザは10百万人を超えるという。

アカウント・アグリゲーション・サービスでは、金融情報を集めるため、業者のサイトに口座番号とパスワードを登録する。業者のコンピュータが、その情報に基づいて銀行等の口座から情報を自動的に収集してくる訳だが、「業者に口座番号とパスワードを登録する」と悪用される・重要情報が漏えいする・ハッカーに情報を取られ悪用される、という懸念を持つ消費者がまだまだ日本では多いと思う。

この種のリスクが存在することは事実だろうが、私はアカウント・アグリゲーションを使うメリットと使わないリスクも合わせて考慮するべきだろうと考えている。

アカウント・アグリゲーションを使うメリットは明確だ。つまり一つのサイトを見るだけで、保有資産の時価やクレジットカードの請求金額を一覧できる。また各取引先の「詳細」をクリックすると、個別保有銘柄の株数・時価やクレジットカードの請求明細を見ることができる。アグリゲーション・サイトをプラットフォームにして、個別金融機関等の取引サイトに簡単にログインできるので、資産管理に使う時間を大幅に節約することができる。更に大雑把ではあるが、支出状況も把握できるから家計の診断を行うことも可能だ。

次にアカウント・アグリゲーションを使わないリスクを考えてみた。それは資産やクレジットカードの請求額をリアルタイムに一覧できないことが第一に挙げられると思う。つまりある口座に対して何らかの不正な引出が行われていたとしても、チェックが遅れるというリスクだ。アカウント・アグリゲーションを使い、定期的に保有する全口座の状況を確認するクセをつけておくと、不正の早期発見が可能だ。

リスクはそれ以外にもある。例えばある日意思能力を失ったり、突然死した時、金融情報をまとめておかないと残された人が保有資産の把握に苦労して、悪いケースでは長い間資産が放置される可能性もあるということだ。

私はソニー銀行の「人生通帳」を使っているが、利用前にアカウント・アグリゲーションのリスクについて考えてみた。そしてそのリスクは許容できると判断した。その一つの根拠はこの分野の先進国である米国で恐らく数千万人の人がアカウント・アグリゲーションを利用しているが、目立つほどの事故が報道されていないことである。次に「資金が外部に流出する可能性がある」銀行取引(証券取引の場合、資金はあらかじめ指定した自分の銀行口座に送金される)の場合、銀行側のセキュリティが進歩し、ワンタイム・パスワードの発行などの手法で、不正な資金流出が防がれていることだ。

ただしアカウント・アグリゲーション利用に関して次の点に留意している。まずサービス・プロバイダーがしっかりしていることだ。しっかりしているというのは、システム運用・内部管理・万一の場合の補償能力についてである。この点から私はソニー銀行を選んだ。

アカウント・アグリゲーションに登録する個別金融機関のセキュリティ・レベルが高いことも重要な要件だろう。私は資金決済に三井住友銀行を使っているが、ワンタイム・パスワードの発行システム等の点でしっかりしているのではないか?と感じている。

クレジットカード会社についても、大手でしっかりしていそうなところを選んでいるつもりだが、こちらについてはセキュリティレベルを判断する材料がない。

なおアカウント・アグリゲーションに使うパスワードは「パスワードのパスワード」のようなものだから、より厳密な管理と頻繁な変更を行うべきだろうと私は感じている。

便利になった時代だが、便利は多少のリスクを内包している。そのリスクを許容して便利なサービスを利用するかどうかは、総合的に判断するしかない。世の中、便利でまったくリスクもないというものはそれほど多くないのだろう。

 

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米金利引上げの鍵を握るpatient

2015年01月20日 | 英語・経済

今年の相場を動かす大きな要因の一つは米連銀がいつ政策金利の引き上げを決定するか?という点だが、その時の鍵になるのが、FOMC議事録の中のpatient(我慢する)という言葉だろう。1月27-28日のFOMC議事録(3週間後に発表)では、they can be patient about rate increases(金利引上げを我慢することができる)という言葉を従来どおり使われるともっぱら予想されている。このことは、少なくともあと2回のFOMCを終えるまで、つまり巷間言われるように今年の6月まで金利引上げは行われないことを示唆していると判断される。

このことはもし連銀が6月に政策金利を引き上げるとするならば、3月のFOMC議事録からpatientという言葉が取り除かれるだろうという推測を呼んでいる。

投資家の動きを見ると、6月の金利引上げ見通しは少し後にずれると予想する筋が増えていることが推測される。FFレート先物は年初の0.2%から0.16%に低下しているのはその兆候だ。

金利引上げ時期が遅れると予想する根拠は、低インフレ率と債券利回りの低下だ。先週労働省が発表した12月の消費者物価指数は前年比0.8%増にとどまった。価格変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアインフレ率は1.6%上昇しているが、10月の1.8%、11月の1.7%に較べると低下傾向にあることも、連銀が金利引上げ時期を遅らせるのではないか?という憶測につながっている。

このような環境の中、注目しておきたいのは、セントルイス地区連銀のブラード総裁の発言だ。ブラード総裁は、経済調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズの調査によると、昨年最も(つまりイエレン議長よりも)米国債券市場に影響を与えた人物だ。

ブラード総裁は月曜日に行われたWSJのインタビューで「金利引上げを始め、金融政策を正常化することが重要だ」「金利を引き上げたとしても、それは極めて低い水準だろう」「インフレ率はゼロ金利政策を正当化するほど低い水準ではない」と述べ、大方の予想よりも早い3月までに金利引上げを求めている。

WSJによると、FOMCのメンバーは、自然失業率を5.2-5.5%と想定している。つまり失業率がこの水準を越えて低下すると、賃金上昇圧力が生じると考えられる。しかし12月の失業率が5.6%とほぼこの水準に近づいても、賃金上昇圧力が高まらないことから、ボストン地区連銀総裁のローゼングレンなどは、自然失業率の水準を引き下げ見直しすることを考えていると述べている。

もし引下げ見直し勢力が増えると、政策金利の引き上げは後ずれするだろう。


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