私のLife Planning Holder(以下LPH)の一つの核になるのが、アカウント・アグリゲーションAccount Aggregationの活用だ。
アカウント・アグリゲーションとは、「インターネットを使って、複数の銀行・証券・クレジットカード会社の残高・請求額などを集めてくる」サービスのことだ。詳しくはこちら。
元々はアメリカで始まった金融サービスで、私の理解では年金基金が複数の運用者に委託しているファンドの運用状況をリアルタイムで把握するために導入したのが始まりだと思っている。それが個人富裕層に広まり、今では米国の多くの一般の消費者が利用するサービスになっている。
日本ではソニー銀行などネット銀行やマネーフォワードなどの専門業者がこのサービスを提供しているが、米国に較べると利用者の数はまだまだ少ない。私が利用しているソニー銀行のアカウント・アグリゲーション・サービス「人生通帳」の利用者は約9万人だが、米国最大手の専門業者Mint社のユーザは10百万人を超えるという。
アカウント・アグリゲーション・サービスでは、金融情報を集めるため、業者のサイトに口座番号とパスワードを登録する。業者のコンピュータが、その情報に基づいて銀行等の口座から情報を自動的に収集してくる訳だが、「業者に口座番号とパスワードを登録する」と悪用される・重要情報が漏えいする・ハッカーに情報を取られ悪用される、という懸念を持つ消費者がまだまだ日本では多いと思う。
この種のリスクが存在することは事実だろうが、私はアカウント・アグリゲーションを使うメリットと使わないリスクも合わせて考慮するべきだろうと考えている。
アカウント・アグリゲーションを使うメリットは明確だ。つまり一つのサイトを見るだけで、保有資産の時価やクレジットカードの請求金額を一覧できる。また各取引先の「詳細」をクリックすると、個別保有銘柄の株数・時価やクレジットカードの請求明細を見ることができる。アグリゲーション・サイトをプラットフォームにして、個別金融機関等の取引サイトに簡単にログインできるので、資産管理に使う時間を大幅に節約することができる。更に大雑把ではあるが、支出状況も把握できるから家計の診断を行うことも可能だ。
次にアカウント・アグリゲーションを使わないリスクを考えてみた。それは資産やクレジットカードの請求額をリアルタイムに一覧できないことが第一に挙げられると思う。つまりある口座に対して何らかの不正な引出が行われていたとしても、チェックが遅れるというリスクだ。アカウント・アグリゲーションを使い、定期的に保有する全口座の状況を確認するクセをつけておくと、不正の早期発見が可能だ。
リスクはそれ以外にもある。例えばある日意思能力を失ったり、突然死した時、金融情報をまとめておかないと残された人が保有資産の把握に苦労して、悪いケースでは長い間資産が放置される可能性もあるということだ。
私はソニー銀行の「人生通帳」を使っているが、利用前にアカウント・アグリゲーションのリスクについて考えてみた。そしてそのリスクは許容できると判断した。その一つの根拠はこの分野の先進国である米国で恐らく数千万人の人がアカウント・アグリゲーションを利用しているが、目立つほどの事故が報道されていないことである。次に「資金が外部に流出する可能性がある」銀行取引(証券取引の場合、資金はあらかじめ指定した自分の銀行口座に送金される)の場合、銀行側のセキュリティが進歩し、ワンタイム・パスワードの発行などの手法で、不正な資金流出が防がれていることだ。
ただしアカウント・アグリゲーション利用に関して次の点に留意している。まずサービス・プロバイダーがしっかりしていることだ。しっかりしているというのは、システム運用・内部管理・万一の場合の補償能力についてである。この点から私はソニー銀行を選んだ。
アカウント・アグリゲーションに登録する個別金融機関のセキュリティ・レベルが高いことも重要な要件だろう。私は資金決済に三井住友銀行を使っているが、ワンタイム・パスワードの発行システム等の点でしっかりしているのではないか?と感じている。
クレジットカード会社についても、大手でしっかりしていそうなところを選んでいるつもりだが、こちらについてはセキュリティレベルを判断する材料がない。
なおアカウント・アグリゲーションに使うパスワードは「パスワードのパスワード」のようなものだから、より厳密な管理と頻繁な変更を行うべきだろうと私は感じている。
便利になった時代だが、便利は多少のリスクを内包している。そのリスクを許容して便利なサービスを利用するかどうかは、総合的に判断するしかない。世の中、便利でまったくリスクもないというものはそれほど多くないのだろう。