金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

GDPマイナス成長はアベノミクスの挫折?

2018年05月17日 | ライフプランニングファイル

昨日(5月16日)内閣府が発表した今年1~3月期のGDP速報値は年率換算で前期比0.6%減となり、この期としては7年ぶりのマイナスとなった。

今年の1,2月は降雪量が多く、消費者が外出を控えたことや、野菜やガソリン価格が高止まりし、消費者が財布の紐を緩めなかったことなどが、国内総生産が縮んだことの要因の一つとエコノミストは分析しているようだ。

従って一四半期の成長率をもってアベノミクスが挫折したと評価を下すのは、早急であると私は思う。しかしWSJはJapan's longest strech of economic growth in 28 years endsという記事の中「新しいデータ(GDPデータ)は、経済成長をエコノミックプラットフォームの成功の証拠に使ってきた安倍首相の挫折である」と述べていた。

挫折という判断が早急であるかどうかは別として、WSJが「挫折」と述べたことは、海外勢のセンチメントに影響を与えそうだ。

第2四半期以降経済が成長路線に戻る可能性は高いが、年間成長率は昨年の1.7%より低くなると予想するエコノミストが多い。

たとえばキャピタルエコノミクスのシニアアナリストは今年の成長率は1.2%と予想している。

だが加計学園問題などから重要法案の立法が見送られる可能性は高い。目玉の働き方改革が実現しないとなれば、経済プラットフォームの挫折となる。一四半期のマイナス成長で挫折と判断するのは早計だが、結果として挫折の先行指標になったと後日語られる可能性はあるだろうと私は考えている。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高齢者雇用テコ入れの鍵は企業の人事考課プロセスの変革にあり

2018年05月17日 | 資格・転職・就職

政府は昨日「人生100年時代構想会議」を開き、高齢者の雇用拡大について議論を始めた。それによると加藤厚生労働相を中心に継続雇用年齢を65歳以上に引き上げる環境整備を進めるということだ。

会議では日本総研の高橋氏が「継続雇用時に、一律に賃金を定める会社が多く働くインセンティブをそいでいる」(日経新聞による)と問題点を指摘していた。

私もある会社の継続雇用制度をレビューしているところなので、この問題には関心が高い。

レビュー先も継続再雇用時に定年前の給与の一律〇〇%という賃金の決め方をしている。また私がこれまで務めてきた幾つかの会社もほぼ同じ方式を取っていた。

なぜこのような一律減額方式を企業は取るのか?という最大の理由は「継続雇用は法的義務で会社の従業員に対する恩恵だと考えている会社が多い」ことにあると私は考えている。

多くの日本の会社は勤続年数と職能資格をベースにした賃金体系を取っていて、職能資格給の割合が増えている。そして年齢が高くなると管理者能力の高さが給与に反映されることが多いと判断される(もっとも専門能力の評価を高める方向に動いている企業も増えているが)。

再雇用後はラインで働くより、個人のスキル・経験を生かしてスタッフ的な働き方をすることが期待されるので、管理能力を中心に判断されてきた定年前の給与をベースに一律的な決め方をするのは、合理的ではないと思われる。

しかし現実には一律減額型が多い。その最大の理由は既に述べた通り、再雇用を恩恵と考える風潮が強いことにあるが、加えて人事考課プロセスに問題があるのではないか?と私は考えている。

本来再雇用時には「従来の役割とは違う仕事をする」ことが原則である(もし従来とまったく同じ仕事をするのであれば、同一労働同一賃金の考え方に基づいて、従来並みあるいは少々の賃金ダウンの水準で賃金は決定されるべきである。)

「従来の役割と違う仕事をする」のであれば、新しい職務内容Job descriptionに基づいて賃金を決めるべきだし、新しい職務内容の達成度合いにより、定期的に賃金水準が見直されるべきである。

ところが多くの日本の企業は職務内容を細かく規定する習慣がない。また人事部や現場の人事責任者は職務内容に基づく人事考課の経験が乏しい。そこで無難で手間のかからない一律減額型を採用しているのではないか?と私は判断している。

この問題は高齢者の再雇用に留まる問題ではない。これから労働力不足に面する日本の会社は、外国人労働者を含めて様々な労働力を活用していく必要がある。この様々な労働力を活用するには、職務内容を具体的に明確にして、客観的な成果の判定方法を作っていくということが必要である。

つまり人事考課手法・プロセスの見直しとそれに基づく評価者訓練が大きな課題であり、それなくして本当の意味での高齢者の活用は難しいと私は考えている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする