病気の中には「症状の過激さから患者は非常に心配するけれど医者はそれほど心配していない」病気というものがあると思います。私は中年時代に腎臓結石を患ったことがありますが、腎臓結石はそのような病気だと思います。
最初に結石の激痛が襲ってきた時は、何が何だかわからず、救急車で病院に駆け付けたのですが、お医者さんの方はあまり慌てる様子もなく「痛いだろう?痛いんだ、腎臓結石は。だけど腎臓結石で死んだ人はいないから安心しなさい」と言いました。
さて2カ月ほど前喀血があった時も慌てました。喀血した血の量はそれほど多くはないと思うのですが、赤い血はインパクトが強く心配してすぐに地域最大手の総合病院で診察を受けました。ところがその病院の診断結果は「肺に小さな影がある。若い時にごく軽い結核にかかり気が付かないうちに治ってしまったようだ。その古い病巣の一部のカサブタがはがれて出血したようだ」ということでした。「先生、それでは病名は何なのでしょうか?」と質問すると「病名は特にありません」という回答。その後も若干喀血が続くので私はこの回答に満足できず、インターネットで専門病院を調べたところ、比較的自宅に近い複十字病院という呼吸器の専門病院があることが分かりました。
そして複十字病院にでかけ造影剤付きのCT検査を受けたところ、「気管支動脈が肺動脈と異常吻合しているのが出血の原因」と分かりました。ご担当の先生は懇切丁寧に説明してくれましたが、ポイントは次のようなことでした。
「肺には気管支動脈と肺動脈が流れている。気管支動脈は血圧が高い(血圧計ではかる血圧)が、肺動脈の血圧はその数分の一と低い。普通二つの動脈は別々に流れているが、何らかの理由で肺動脈に気管支動脈が繋がってしまった場合、血圧の高い気管支動脈の血が肺動脈に流れ込む。肺動脈の血管は低い血圧用で薄いからそこから出血を起こす」
なお後ほどインターネットで調べたところ「血管や神経が繋がってしまうこと」を吻合といい、異常な吻合なので今回の症状は異常吻合と呼ばれるようです。先生にどうして「異常吻合が起きたのですか?」と尋ねると「古い病巣の中で二つの血管が吻合した可能性がたかい」ということでした。
次に治療方法をお伺いすると「根本的な治療はカテーテルで吻合している気管支動脈の一部を塞ぐ方法がある」ということでした。このような治療法を塞栓術と呼ぶそうです。
そこで先生に「どうして最初にかかった地域最大手の病院(実は日赤)では、そのような治療法を提案してくれなかったのでしょうか?」と質問してみました。先生の答えは「症状から見てそれほど緊急性を要するとは判断しなかったので、塞栓術を行わなっかのでしょう。塞栓術(カテーテル治療)は専門の先生が少ないからです。ちなみにあなたの場合も今申し込んでも手術は9月末になりますよ」ということでした。
喀血の不安を抱えながら1カ月半以上も待つのはつらいのですが、他に選択肢もなさそうなので、その場で手術の申し込みをして帰りました。私の喀血も冒頭で述べたとおり「患者は非常に心配するけれど医者はそれほど心配していない」病気なのかもしれません。
それから約1カ月。先生のアドバイスに従い飲酒をできるだけ控えていたお陰で喀血することなく今日まで来ました。手術まであと一週間です。なお塞栓術そのものは安全性の高い治療方法という説明を受けていますのでほとんど心配していません。
なお手術までの期間がたっぷりあったので「高額医療費の限度額適用」を受ける準備や加入している保険会社の診断書(用紙)の取り寄せを行いました。高額医療費については加入している健保に事前申請して「限度額適用認定証」をもらっておくと窓口での支払いを自己負担限度額までにすることができます。医療保険の方はどれほど給付金が出るか分かりません。こちらは出たとこ勝負ですね。