最近相場を動かしているのは、経済統計データでも企業業績でもない。相場を動かしているのは、コロナウイルスの動向である。コロナウイルスが沈静化の兆しを見せたというニュースでリスクオンになり、感染拡大の懸念でリスクオンになる。
昨日(2月21日)は米国株は売られた。S&P500は約1%値を下げてボラタイルな取引を終えた。この日は投資家をリスクオフムードにするニュースが流れたのだろう、という程度に私は考えている。つまりこのようなムードで動いている相場をあまり真剣に見つめても仕方がないと感じている。
実際投資環境が不透明な中で不思議がことが二つ起きている。
一つは米国株市場で、ITセクターとユーティリティ(公益事業)セクターという相反するセクターがともに高いパフォーマンスを上げていることだ。一般にイケイケ相場では成長セクターであるITセクターが買われ、不確実性が高まると公益事業銘柄が買われる。公益事業銘柄はリスク回避先なのだ。
今米国株市場でリスクオンの代表選手であるIT株とリスクオフの代表選手である公益事業株が買われているということは投資家の見方が二つに分かれていることを示唆しているようだ。
もう一つの不思議なことは、円が対ドルで安くなる動きを示していることだ。昨日は111円50銭程度と少し円高に戻ったがその前は112円まで円安になっていた。
「有事の円買い」ということが示すように、円は安全資産と思われていたが、ここにきて必ずしも安全資産ではないという見方をする投資家が増えてきたのだろうか?
以下はこの回の円安傾向が起きていることについて考えらえれる理由
- コロナウイルスの影響(中国の経済活動低迷・インバウンド観光客の鈍化など)で日本経済はしばらくマイナス成長に陥る。債券・株式とも高いパフォーマンスが期待できる米国の資産配分を増やし、日本への資産配分を減らした方がよい
- 1月に日本の年金基金が信託勘定で2兆円相当の外債をネットで買いますなど、日本の機関投資家の外債投資が高まっている。WSJなど専門紙は昨年GPIFが為替リスクをフルヘッジした外債投資は国内債券扱いにできると運用ルールを変えたことで外債購入が増えた(外債購入が増えると直物の円売・ドル買いが増える。ヘッジすると先物のドル売りは立つが)
- もう少しファンダメンタルな理由として「少子高齢化による人口減少と国内市場の縮小」「縮小する国内市場を埋めていたインバウンド客の急減という基盤の脆弱性」「改善が進まない労働市場と生産性の低さに対する投資家としての忌避感」・・・・
などの理由が考えられる。円安・ドル高はトランプ大統領が嫌うところなので一方的に円安が進むとは考えにくいが、「有事の円買い」というマントラも賞味期限切れかもしれない。
不確実な時代を生きるには過去の経験に頼り過ぎないことも大切である。