山にいって登山道を登っていると「標識」がある。「標識」には次の目的地までの距離や所要時間(コースタイム)を示していることがある。私は以前から「コースタイム」表示には疑問を持っていた。というのは「距離」は絶対的なものだが、「コースタイム」は歩く人の速度によって異なるからだ。このことは標識設置者も気が付いているようで、私の見るところ「距離表示」を示す標識が増えて、「コースタイム」を表示する標識は減っているようだ。ただ先週南アルプスの北岳に登った時は「コースタイム」表示が多かったので、改めてこの問題を考えてみたいと思った次第。
コースタイムは山の中の標識に書かれているだけでなく、ガイドブックやガイドマップにも書かれている。このコースタイムを参考に登山計画を作っている人は多いはずだ。
だがコースタイムはガイドブック毎にかなり異なることがある。
例えば白根御池小屋から北岳山頂までのコースタイムを「関東の山歩き100選」(昭文社 以下「100選」)、「北岳・甲斐駒・千丈」(ヤマケイアルペンガイド 以下「北岳」)と私たちが歩いた実時間(休憩込 以下「実例」)で較べてみよう。
「100選」では、白根御池小屋→北岳肩の小屋が3時間30分(「北岳」も同じ。「実例」は3時間)、肩の小屋→北岳山頂が50分(「北岳」では30分、「実例」では50分。白根御池小屋→北岳を通しては「100選」が4時間20分、「北岳」が4時間、「実例」は4時間となっている。コースタイムは「休憩時間を含まない」のに対し「実例」は「休憩時間を含む」ので、休憩時間を除くと3時間40分程度で歩いたことになるので、少し早いペースで歩いたと様だがそのことは本題ではない。
本題は「コースタイムはガイドブックによって異なる」ということと「山の難易度によってコースタイムの基になる歩行速度は異なる」ということだ。
簡単にいうとより登山指向の強い人を対象としたガイドブックでは「短めのコースタイム」が設定され、より一般的な人を対象としたガイドブックでは「長めのコースタイム」が設定される傾向が強いと言えるだろう。
また「険しい高山になるほど登山上級者のペースでコースタイムが設定され」「ハイキング的なやさしい山では、登山初級者のペースでコースタイムが設定される」傾向があることを頭に入れておいた方が良いだろう。
だから「比較的やさしい山でコースタイム通りにあるいはコースタイム以下で登山ができた」としても「険しい高山でコースタイム通りに歩くことができる」という保証はないのである。
登山計画を作る時はこのような「コースタイムのクセ」を頭に入れて計画を組む必要がある。また荷物の軽重も重要な要素だ。岩場歩きが得意・不得意なども計画を組む上での重要な要素になる。
今月末に台湾の玉山に登る計画があるので、Lonely Planet社のガイドブックで、トレッキング時間を調べてみたらコースタイムは「4時間ー6時間」などとかなり幅を持った表示をしていた。中高年登山者が増える中、若者登山者をベースに計算されたコースタイムで登山計画を組むと痛い目にあう可能性があるだろう。
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