ブルンバーグの記事によると、野村證券の木下チーフエコノミストは、ドル円為替は来年末には125円まで円安が進むと予想している。昨日(12月4日)の海外市場では一時120.25円まで下落した円。120円を超える円安が進んだのは2007年7月以降初めてのことだが、125円となると2002年以降初めてのことだ。
野村證券の予想では、今回の総選挙の結果いかんに関わらず、円安の方向は変わらないという。その理由は日米の金融政策の違いが今後一層鮮明になることによるという。
昨日大手新聞が発表した世論調査によると、自民党は衆院475議席のうち、300議席を確保する勢いだ。このことがアベノミクスに対する国民の全面的な信頼を意味するかどうかは疑問だが。恐らく「金融緩和」については、可とする意見が多いだろうが、経済成長につながる構造改革という第3の矢については、理念は可としても、安倍政権の実行力については疑問を呈する人は多いだろう。それでも現政権が絶対的多数の確保する勢いでいるのは、野党側から有力な対案が出されていないことによるのだろう。
長期的な眼で見ると日本が抱える大きな問題は2つある。一つは「高齢化と労働力減少に対する対応」でもう一つは「GDPの2倍以上に積み上がった公的債務の返済問題」だ。後者の問題については、今回引上げを見送った消費税の引き上げだけで対応できるレベルの話ではない。支出面では増大を続ける社会保険料、特に医療費に歯止めをかけないといけない。簡単にいうと高齢者の医療費負担割合を引き上げるしかないと私は思うのだが、このような「不人気政策」を正面切って打ち出す政党は少ないから、この問題の解決は進まない。
だが仮に社会保険料の支出に歯止めがかかったとしても、それだけで公的債務の削減が進む訳ではない。公的債務の削減を進めるには、インフレを進行させ、国債の実質価値を下げるしかないのである。仮に年率2%でインフレが進行すると20年後に貨幣価値は2/3になる。日銀がインフレ政策に拘るのは、国の債務の実質価値を下げることしか国債の弁済方法がないからである。
とすれば日銀はインフレ政策に固執し、景気回復から金利引上げに動く可能性が高い米国との金融政策の違いは一層鮮明になり、構造的な円安が進行すると私は考えている。
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