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北朝鮮のミサイルは失敗か成功か

2009年04月06日 | 国際・政治

昨日(4月5日)のお昼前、ジムでランニングをしながらテレビを見ていると「北朝鮮が飛翔体を発射した模様」というテロップが流れた。飛翔体とは聞きなれない呼び方だが、北朝鮮が人工衛星と呼び、日米などがミサイルと呼ぶ物体である。北朝鮮は人工衛星は軌道に乗ったと成功を宣言したが、米軍や民間の専門家は弾頭部分も太平洋に落下し、打ち上げは失敗したと発表している。

北朝鮮のミサイルは失敗か?成功か?という問題は、中々興味深い問題である。ファイナンシャル・タイムズは米国ケンブリッジの民間団体Union of Concerned Scienistsの科学者Wright氏のコメントを紹介している。「今回の発射を『失敗した人工衛星打ち上げ』と分類するか『成功したミサイル実験』と分類するべきか述べるには早過ぎる」

中々フェアな判断というべきだろう。確かに北朝鮮は人工衛星の打ち上げには失敗したが、かなり長距離のミサイルの発射能力を示した。ではどれ位の射程能力があるかというと、ミサイル防衛網の民間支持団体Missle Defence Advocacyの会長Ellison氏は「北朝鮮は最低でも2千kmを飛ばせる能力を示した」と述べている。また前述のWright氏は「北朝鮮が改善を重ねれば、最終的には2200ポンドの弾頭を持つミサイルを3,700マイル(約6千km)~これはアラスカを攻撃できる距離~飛ばせるようになるし、弾頭の重さを半分にすると5,600マイル(約9千km)~これは米国西海岸を攻撃できる距離~を飛ばせるようになる」と述べている。同時にWright氏は「弾頭を小型化することは北朝鮮には極めて難しいだろう」と述べている。

これらのことを総合すると、米軍や米国の専門家は北朝鮮がミサイルの性能をある程度改善したことを認めたとしても、軍事的脅威になるのはまだかなり先の話だと判断していることになる。2月に小型軌道衛星の打ち上げを行ったイランの方に、軍事技術面の脅威を感じているとしてもおかしくはない。

北朝鮮は1998年にテポドン1の発射実験をし、06年にはテポオン2の発射実験を行ったが、いずれも「技術的には」失敗している。これを見て専門家達は「北朝鮮は品質管理面で極めて重要な問題を抱えているのではないか?」と述べている。

この話を見て私は少し前に読んだ「ものつくり敗戦」(日経プレミアシリーズ 木村英紀著)が指摘している第二次大戦における日本の敗因のことを思い出した。一般的に「日本が米国に負けたのは物量の差」と言われているが、木村氏は「実際に戦局を支配したのは、生産力の量的な差ではなく、兵器の質的な差であった」と述べる。兵器の質的な差がどこから来るのか?という点についての一例は「日本では工作機械の発達が遅れ、兵器の規格化が進まなかった」ことであると木村氏は述べている。また日本の制御技術の遅れも技術の専門家である木村氏の指摘しているところだ。

北朝鮮と戦前の日本を同一視するのは乱暴だが、幾つかの共通点はあるだろう。例えば「失敗を認めずにウソの成功を国民に宣伝する」「技術的な問題を直視せず、精神論で片付けようとする」などという点だ。

米国のある調査機関の専門家は「ミサイル・プログラムの初期の段階で連続的に失敗することは異常なことではない」としながらも「(北朝鮮は失敗から学ぶ姿勢に欠け)信頼度合いを高める十分なテストを行っていない」と指摘している。これもまた戦前の日本の兵器開発と同じ問題点だろう。

ところでミサイルにせよ、人工衛星にせよ、今回の発射物には「内政的な目的」と「外交的な目的」がある。内政的な目的とは金政権の基盤強化だ。北朝鮮は衛星放送と称して、ラジオで国家でも流すのだろうか?「外交的な目的」とは米国と直接対話の場を作り出すことだ。これらの目的が達成されるかどうかの判断にももう少し時間がかかるだろう。

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