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米中貿易抗争、中国は長期戦の構え

2019年08月29日 | 投資

昨日(8月28日)の米国株は、経済統計の発表や米中貿易問題の目立った進展がなかったが、ダウは258ポイント(1%)上昇した。ヒューレットパッカードなどの好決算が薄商いの相場を牽引した。

米中貿易問題の目立った進展がなかったと書いたが、ひょっとすると相場は少し米中貿易問題の進展に一喜一憂するのに疲れてきたのかもしれない。特に交渉の当事者の少なくとも一方が早期解決を望んでいないとすれば、交渉が長期化するのは必至であり、細かい動きはそれほど意味を持たないからだ。

私はかなり前から「中国はトランプ大統領との取引を避けて2020年の大統領選挙後の交渉を期待している」と判断していたが、中国指導部はもっと長いスパンで交渉問題をとらえている可能性があることも視野に入れるべきだと思うようになった。

CNBCにChina's playing the long game, and is making key moves to hedge against Trump's tariffsという記事が出ていた。

ポイントは中国は1980年代の日米貿易摩擦の経験(貿易摩擦は10年以上続いた)などを踏まえ長期戦の準備を進めている(ドイチェ銀行のエコノミストの意見)。具体的には米国への依存度を低下させ、タイ、日本、韓国、南米諸国との貿易拡大を図り、商業道路のインフラ改善、コンビニエンスストア網の拡充など国内市場基盤強化に努めている。

また米国の関税引き上げ圧力に対し、小さな範囲で目標を絞った報復措置を行う作戦を取っている。これは中国の目標が相手のダメージの極大化を目指すのではなく、相手(米国)が関税競争を続けるインセンティブを失わせることにあると考えれられるからだ。

私はこの分析は中々説得力があると考えている。中国は現時点で強烈な反攻を行わず、交渉再開にも意欲を示しながら、一方長期戦に備え、米国依存度を低下させる戦略を取るという分析。無論中国が有利と判断する条件を引き出すことができるなら、早期を手打ちもありだが、中国側から取引は急がないという姿勢だろう。

中国のアキレス腱は経済成長鈍化が引き起こす民間・地方政府の債務増加問題やインフラ整備が後回しになることだが、そこは一党独裁の強みで逆風を乗り越えられると判断しているのだろう。

長征など長い戦いに慣れている国だけに、貿易戦争の長期化も左程気にならないのかもしれない。

 

 

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