金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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暴力団向け融資、国が買い取り?根は深そうだ

2013年11月06日 | ニュース

WSJを見ていると「暴力団向けの融資を国が買い取りを検討している」という記事が出ていた。元ネタ数日前日経新聞にでていた「預金保険機構が暴力団向け融資の買い取りを拡大する」という記事だろう。オリジナルの日経記事が事実なのか一種の憶測記事なのかは分からない(他の新聞にはあまり出ていないようである)が、まずWSJのポイントを紹介すると次のとおり。

  • 政府はKnow your client rule(顧客熟知規則)を強化し、みずほグループに対する罰則を厳しくする一方、預金保険機構による暴力団向け融資の買い取りをするという救済策を提供している。もっともそのようなローンは低価格で引き取られるので債権を売却する銀行は損失を被る。
  • その背景には金融機関が融資実行時点で、借入人が暴力団関係者かどうか見極めるのはきわめて困難だという問題や疑わしいと銀行が判断した融資先から暴力団に関係ないという訴訟を受けるリスクがあるからだ。

小口融資の場合、融資実行時点で借入人が暴力団関係者であるかどうかを判断するのは困難だ、というのは事実であろう。報道によるとみずほは230件で2億円の融資を行っていた。1件平均百万円以下である。このような融資は過去に延滞実績がないかどうか、といったことをデータベースで審査して行われる(そうでないとコストに合わない)。暴力団関係者を融資を受けやすくするため通常信用履歴をきれいにしておくと言われているから小口融資の審査窓口を通過しやすい。

仮にこの報道内容が事実だとした場合、次のことが気になる。

一つは問題はみずほGにとどまらず(すでにいくつかの銀行が暴力団向け融資が行われていたことを認めている)、相当数の金融機関にまたがる話で金融庁の検査を強化する一方で救済策を出さないと収まらないところまできている可能性がある。

一方預金保険機構が暴力団向け融資をディープ・デスカウントとはいえ購入する(日経記事では「拡大」だから以前から購入していたということだが)ことになると、銀行側には一種のmoral hazardが起きるとともに、暴力団関係者は大手を振って融資を受けに来ることにはならないだろうか?

だが仮に預金保険機構が買い取らないにしても、それらのローンがパッケージ化されて機関投資家等に販売されている可能性はある。

暴力団関係者向け融資を金融機関の窓口だけで防ぐのが困難なことは分かるが、国がそれを買い取ることを公言するのはいかがなものか?国もまた暴力団関係者の資金源撲滅に全力を投入するべきだろう。

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