金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国株、小売売上高好調で上昇。ただし売上高は数量ベースでは鈍化

2021年11月17日 | 投資
 昨日発表された10月の米国小売売上高は、前月比1.7%と予想1.4%を上回る好調ぶりだった。これを好感して米国株はダウ0.2%、S&P500 0.4%、ナスダック0.8%上昇した。
 連銀のテーパリング開始など欧米の中央銀行が超緩和政策から方向転換を進めるなど株式相場にはネガティブな情報が多い中、インフレ傾向の中で消費者が強い購買意欲を示したことを好材料と評価する向きは多い。
 実際ホームデポやウオールマートの株価は躍進した。
 だがWSJには少しうがった見方が出ていた。
  Bleakley Advisory Group によると「物価は小売売上高の増加幅や賃金の上昇幅より早いペースで上昇しているので、実質価値でみた場合売上高は伸びていない。」「実質賃金が落ちている中で販売量ベースで売上高を維持するのは難しい」ということだ。
 つまり商品の値上げによって、販売金額は増えているが、販売数量ベースでは伸びていないということだ。
 話は少し変わるが、日本では色々な商品の販売金額を値上げするのは難しいので、小売業者はパッケージの重量を減らすことが多いようだ。
 たとえばこの前まで500g2千円だった商品が、値段は変わらず中身が450gに減っているという具合に。
 比較的物価上昇に賃金の上昇が追いつきやすいアメリカでも物価上昇は少しずつ消費者にダメージを与え始めている。ダメージが本格化する前に物価が安定すれば株式相場も安定するだろうが・・・
 本格的な物価上昇が起きれば、個人生活が受けるマイナスの影響は日本の方がアメリカより大きいはずだ。大きな理由は三つある。一つは日本の方が物価上昇が賃金にストレートに跳ねにくいことだ。もう一つは公的年金の仕組みの違いだ。アメリカの公的年金(ソーシャルセキュリティ)は、物価上昇率に合わせて年金支給額も増額するが、日本の年金はマクロスライド制を取っているので、物価上昇率に較べて年金の支給額の増額幅は小さくなる。つまり年金生活者はインフレの影響を強く受け、ますます消費を減らさざるを得ない状況に追い込まれる。
三番目の理由はアメリカの個人資産は、株式・投資信託・オルタナティブ投資など多少なりともインフレヘッジ力のある資産にも分散されているが、日本の個人資産は預貯金への偏りが大きいため、インフレヘッジ力がないことだ。つまりインフレは個人資産の実質価値を確実に蝕むのである。
というようなことを考えると気が重くなるのでこの辺りでやめておこう。
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