本郷武夫『日常の 頭・手足の無い胴体だけの彫像』(待望社、2019年02月10日発行)
本郷武夫『日常の 頭・手足の無い胴体だけの彫像』には「手」を描いた作品がいくつかある。「殺す」にも手が出てくる。
三行目の「それ」とは何か。「にぎりしめたいと」思う「なにか」か。本郷は「ある/か」を重ねている。疑問を重ねている。自問と言いなおすべきか。「にぎりしめたい」もそれとは「思い」そのものかもしれない。「思い」を探している、と。
「ある」は消え、「か」も消え、「ない」が増えてくる。
その変化の境目に「ものにはきまって首があり」と書いているが、これはほんとうか。「問い(疑問)」が「答え」を生み出すように、この「首」は「手」によって生み出されたものだろう。そしてそれはさらに「殺す」を生み出していく。
では、「首」が生み出すものは何だろうか。「頭」と「頭」以外のものである。
「ことば」(思考)は、どちらに属しているか。
「手」はことばにはならないもの、「答え」にはならないものを探している、と読んでみたい。
「バスに乗って」も印象的だ。
この散文のようにはじまったことばが二連目で変化する。
反対のことばが結びついている。一緒に存在している。それを「わからない」と言いなおしている。
ことばは「わからない」ものをめぐって動くものだ。
簡単に「答え」を求めずに、うろうろしている部分が、私は好きだ。「うれしかなしや/かなしうれしや」が音楽のように酔いをもたらす。
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本郷武夫『日常の 頭・手足の無い胴体だけの彫像』には「手」を描いた作品がいくつかある。「殺す」にも手が出てくる。
手はいつもおもっているのだ
なにかをにぎりしめたいと
それがものへの愛であるか
あるいは憎しみであるか
殺すことがにくしみであるか
それともそれへの愛であるか
おお 手があるからにぎらねばならないのか
三行目の「それ」とは何か。「にぎりしめたいと」思う「なにか」か。本郷は「ある/か」を重ねている。疑問を重ねている。自問と言いなおすべきか。「にぎりしめたい」もそれとは「思い」そのものかもしれない。「思い」を探している、と。
ものにはきまって首があり
手は首しかにぎることをしらない
手があるから 足があるから
いけないとさけんだとて
手は手をしめ殺すことはできないし
手には首しかしめることがないし
愛でもないしにくしみでもなく
手は首をさがしている
「ある」は消え、「か」も消え、「ない」が増えてくる。
その変化の境目に「ものにはきまって首があり」と書いているが、これはほんとうか。「問い(疑問)」が「答え」を生み出すように、この「首」は「手」によって生み出されたものだろう。そしてそれはさらに「殺す」を生み出していく。
では、「首」が生み出すものは何だろうか。「頭」と「頭」以外のものである。
「ことば」(思考)は、どちらに属しているか。
「手」はことばにはならないもの、「答え」にはならないものを探している、と読んでみたい。
「バスに乗って」も印象的だ。
四十人ものが一緒に
温泉を目指して旅行に出る
近頃みんなてんでに勝手なことを言って
集まることのなかった者たち
バスに乗り込んで
廃墟の無明の夕暮れを通って
生き残ったホテルに押し掛ける
みんな生き残ったもの
この散文のようにはじまったことばが二連目で変化する。
うれしかなしや
かなしうれしや
行きたくないけど行きたい
死にたいけど死にたくない
生きたいけどわからない
残ったけど残りたくない
反対のことばが結びついている。一緒に存在している。それを「わからない」と言いなおしている。
ことばは「わからない」ものをめぐって動くものだ。
簡単に「答え」を求めずに、うろうろしている部分が、私は好きだ。「うれしかなしや/かなしうれしや」が音楽のように酔いをもたらす。
*
評論『池澤夏樹訳「カヴァフィス全詩」を読む』を一冊にまとめました。314ページ、2500円。(送料別)
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「詩はどこにあるか」2019年4-5月の詩の批評を一冊にまとめました。
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オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
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(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com