惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

『ベンダ・ビリリ!』

2010-09-25 21:15:56 | 映画
 昨日は青山で日本SF作家クラブの臨時総会。

 途中、渋谷のシアター・イメージフォーラムに寄って映画『ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』(フランス、監督:ルノー・バレ、フローラン・ドラデュライ)を観ました。コンゴ共和国の首都キンシャサのバンド「スタッフ・ベンダ・ビリリ」を追ったドキュメンタリー。

 このバンドの音楽は数回、ラジオで聴いていました。楽曲も良かったし、キンシャサのバンドということで興味をもっていたのですが、メンバーの大半が小児麻痺で脚が悪く、車椅子生活をしているとは知りませんでした。

 映画は、撮影したスタッフたちがキンシャサでスタッフ・ベンダ・ビリリと出会った2004年から始まります。
 路上で演奏する身体障害者たち。貧しく、体が不自由なのに、音楽は明るく力強い。ギターには1本しか弦が張られてなく、パーカッションはスリッパで地面を叩くだけだったりするのに、素晴らしくノリが良い演奏なのです。
 監督のバレたちはすぐに撮影するとともに、彼らのCDを作ろうとしますが、バンドのメンバーが住む障害者キャンプが火事になって路上で暮らすしかなくなったり、録音の資金も尽きたりして、いったん中断。
 その間に、撮影スタッフはキンシャサに出てきたミュージシャン志望の少年と出会います。ロジェという名のその少年は、空き缶に曲がった枝を突き刺し、1本だけ弦を張った手製の琴というか、ギターというか、とにかく世界に1個だけの楽器を演奏するのです。小さな音しか出ない素朴な楽器なのに、ロジェの演奏はなかなかのもの。ペンダ・ビリリのところに連れてゆくと、すぐにメンバーの一員に迎えられました。

 この後、5年がかりでCDが完成し、ヨーロッパの音楽祭で大喝采を浴びるまでが描かれるのですが、生きることと直結した彼らの音楽の見事なこと。ヨーロッパの人々にベンダ・ビリリが受け入れられるコンサートのシーンではボロボロ泣いてしまいました。

 この映画はヴィム・ヴェンダース監督の『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』とも比較されているようですが、『ブエナ・ビスタ……』がベテランミュージシャンたちの演奏に酔えるのに比べて、こちらはまだ誰も知らない素人バンド――それも障害者たちの――が栄光をつかむまでを記録していて、感動はまるで別ものです。どちらも素晴らしいのですけどもね。