惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

栃の実

2012-09-23 20:36:14 | 季節
 夕方まで雨。昨日よりさらに気温が下がり、最高気温20.7度(隣町アメダス)は夜中の零時に記録されたもので、日中は20度を下回っていました。残暑に慣れた身には「寒い」と思えるほど。それでも、街にはTシャツ1枚で歩く人も。

Tochi1209 写真は数日前に撮ったトチの実。

 この季節、トチノキの下に落ちています。直径5センチほどで、大きなツバキの実にも似ています。
 必ず3筋の割れ目があって、簡単に割れます。すると、中から大きな栗のような実が1個だけゴロリと出てきます。

 この実を昔の人は食べたんですねぇ。えぐ味が強くて、舌を刺すとか。いくつもの行程を経た丁寧なあく抜き処理が必要だといいます。

 今は使いませんが、古語には「栃目」という言葉があって、大きく目を見開き、あわてふためいている様子を表わしていました。
 「醒酔笑」に――

 あわてふためき、前後を忘じたるを、栃目になって尋ねたは、栃目になりて走り歩きたるは、など言ふ事、何の故ぞや
 とあって、既に語源があやふやですが、それからさらに、舞台でしくじることの「とちる」へと転じたりしていったとか。
 「とちる」が、元々はこのデカい木の実から来ていると思うとなんだか愉快です。

 さらに蛇足ですが、矢野誠一『三遊亭圓朝の明治』(朝日文庫)を読んでいたら、44ページの「圓朝遺文」引用中に――

 ……圓朝も吐胸をつかれてぐつと詰り、大いにトツチて話もそこそこに高座を下つたといふ
 とありました。
 「トツチて」は「トチって」と同意だと思われますが、こういう言いかたもあったのでしょうか。