惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

長老たち

2015-11-08 20:30:28 | SF

 アメリカSFファンタジー作家協会(日本でいえば「日本SF作家クラブ」にあたる)が、1975年から「グランド・マスター賞」という賞を授与しています。立派な作品を発表し続けてきた存命作家に贈るもので、いってみれば「長老、ご苦労さんです」といった趣旨なんでしょうね。

 仕事の参考のためもあって、最初の10人の作家さんたちが受賞した時の年齢を調べてみました(受賞年の誕生日を迎えた時点でカウント)。

  1. (1975年) ロバート・A・ハインライン――68歳
  2. (1976年) ジャック・ウィリアムスン――68歳
  3. (1977年) クリフォード・D・シマック――73歳
  4. (1979年) L・スプレイグ・ディ = キャンプ――72歳
  5. (1981年) フリッツ・ライバー――71歳
  6. (1984年) アンドレ・ノートン――72歳
  7. (1986年) アーサー・C・クラーク――69歳
  8. (1987年) アイザック・アシモフ――67歳
  9. (1988年) アルフレッド・ベスター――75歳
  10. (1989年) レイ・ブラッドベリ――69歳

 60歳代後半から上の人が対象になっているようで、毎年、出るというわけでもない。
 今までの最年長受賞者は1996年のヴァン・ヴォークトで84歳。若い方はアシモフとコニー・ウィリス(2012年)の67歳となっています。若死にしてしまうと貰えないのが、ちょっと気の毒。

 日本に紹介された順でいえばハインライン、クラーク、アシモフ、ブラッドベリあたり、そんなに違わないように感じていましたが、ハインラインはずいぶん年長だったのですね。

 今日は夕食後に、8代目・三笑亭可楽師匠の「文違い」を聴きました。

 廓を舞台に、男と女が金をめぐって繰り広げる騙し合いの噺。これまで聴いたことがありませんでした。
 2人の男を騙して金を貢がせた女郎が、その金を本命の男に渡す。しかし、この女郎も男に騙されているのだった。

 もてたい一心から、口先だけの言葉に騙される男女を描く、一種の心理的サスペンス劇といえばいいのでしょうか。後味の悪い噺ですが、もてたと信じ切っている田舎者の口調に救われます。

 遊郭こそなくなりましたが、男と女の虚構の愛を商売にする場所は今でもあるはず。そこで交わされる言葉は基本的には「嘘」なのでしょうが、そこにいくばくかの本音や願望が混じってくることもある。真実の心の触れ合いも生まれることがあるでしょうし、気づきながら知らない振りをすることもあるでしょう。
 残念なことに、そんな「教育」を受ける機会が、私にはありませんでしたが。