今日はお茶の水の全電通労働会館ホールにて、毎年恒例のSFセミナー。夜は旅館で合宿があるのですが、私は昼の部のみ参加。
今年のSFセミナー、昼の部の企画は、以下の4本――
- ゲーム・場所・コミュニケーション ~ 宮内悠介インタビュー
- クラークの世紀を語ろう!
- シミズ・ドリーム 海洋未来都市プロジェクト
- 辻真先インタビュー
1限目、宮内悠介さんに評論家の鈴木力さんが、主に作品内容について聞く。
『彼女がエスパーだったころ』『アメリカ最後の実験』『スペース金融道』それに、最新作『あとは野となれ大和撫子』などで扱われるテーマを、鈴木さんが掘り起こし、作者の宮内さんに鋭く問いかけるのが面白い。
私にとっていちばん印象的だったのは、「場所」について鈴木さんが訊いた際、「伊藤計劃さんが作品の舞台にしているチェチェンなどは、その土地に限定しなくても、別の場所でも成立すると思うが、自分の場合は、特定の土地に結びつけて発想している」といった趣旨のことを、宮内さんが述べたところ。伊藤計劃さんを意識していた時期があったのだなと感じたのと、東京生まれアメリカ育ちの宮内さんが、世界各地を旅して見聞したことが作品の血肉となっていることが伝わってくる内容でした。
写真は『あとは野となれ大和撫子』の創作メモを示す宮内さん。
A4の紙3枚をつなぎ合わせて、作中の年代全体が見通せるようになっているそうです。
お昼の休憩をはさんで2限目は、生誕100年目に当たるアーサー・C・クラークの魅力を語るパネル。出席者それぞれにとっての「好きな作品」「読みどころと思うところ」「科学」などについて語り合いました。
話が盛り上がったのは、「人類は、海から陸地へ上がることで進化した。宇宙へ出てゆけば、さらなる進化があるだろう」というクラークの思想というか、宗教的信念とでもいうべものに関連した部分。キリスト教や神秘主義などとの関係なども出てきて、クラーク、一筋縄ではいかないぞ、と思わせられました。
写真はクラーク・パネルの舞台。
左から、牧眞司さん、大野万紀さん、酒井昭伸さん、山本弘さん、中村融さん。
なお、この企画で参考資料として配られた牧眞司編「アーサー・C・クラーク年譜」は、クラークの生涯を丹念にたどった労作。良いお宝となりました。
3限目は、清水建設で海洋都市建設計画のプロジェクトリーダーをなさってる竹内真幸さんが登場。これまでに立ち上げた「海洋未来都市構想 GREEN FLOAT 」及び「深海未来都市構想 OCEAN SPIRAL 」の説明をしてくださいました。
前者は、海面に浮かび、高さ1000メートルに達する巨大浮遊都市。後者は、海面から海底に向かって螺旋形に伸びる海中・海底都市の計画。
「実現性はあるが、採算性がない」とおっしゃってたように思いますが、ひさびさに胸躍る未来図に接し、わくわくしました。
4限目。辻真先さんへのインタビュアーは日下三蔵さん。
例によって、自作の詳細な書誌にもとづき、ゲストの経歴をたどる予定だったようですが、辻さんの闊達な話しっぷりと豊富なエピソードのおかげで数年分をたどったのみ。テレビ創成期のドラマ放映(生放送とか、やたらに高価だったビデオテープでの録画とか)にまつわる話や、マンガ家さんの原作をした話など、面白すぎる裏話の連続でした。
以上。今年もたっぷり勉強させてもらいました。