惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

小松左京批判

2021-09-18 21:25:15 | 本と雑誌

 昨夜から時おり激しい雨が降るものの、風はほとんど吹かず。台風はその後、紀伊半島から太平洋に出て、午後3時に静岡県沖合で温帯低気圧に変わったとか。
 夜になっても雨は降ってますが、もう風の心配はしなくてよいのかな。ひとまず安心。

 午後はほとんどをオンライン会議に費やしました。
 『現代思想:総特集 小松左京』で読めたのは1編のみ。

 社会思想史を専門となさっている酒井隆史さんの「アパッチ族はメガイベントの夢をみない――「破局の精神史」のための断章」。これは『日本アパッチ族』を高く評価する一方で、『日本沈没』をはじめとするSF作品を書いたり、「花と緑の博物館」総合プロデューサーをつとめた小松さんを批判する内容。

 『日本アパッチ族』の読解にはいくつもの見事な指摘があり、よいヒントをいただきました。
 まとめの部分から引けば、『日本アパッチ族』を書いた小松左京は――

……コミュニストの残滓をいまだ保持する権力嫌い、あらゆる陣営の核兵器の撤廃を愚直に望む反戦主義者、そして階級闘争のタームで世界をいまだ分節していたであろう小松「左」京である。

 たぶんこの通りなんでしょうね。

 で、『日本沈没』や花博の頃になると――

 細心の注意で距離をとりながら大阪万博に参加した繊細な小松左京は、その二〇年後には中核からイベントを差配するようになる。その堂々たる態度からは、二〇年前の躊躇やためらい、理念に賭けた真正の怒りは消えている。それとともに、沈没や消失ものでは、アパッチ族では後景に退いていた「エリート・ネットワーク」のみが目立つようになり、大衆はといえば、ただパニックにまどうばかりの存在となるのである。

 この見方にもうなずけるものがあります。

 でも、小松さんの愛読者であり、さらに、じかに本人を知る者としては、どう反論、あるいは弁護すればいいのか、考えてみざるを得ません。
 そこには「革命運動」への距離感と日本というシステムがどう動いているかについての小松さんの考えがあると思うのですが、今ここで、すぐにはまとめきれません。



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