何の予備知識もなかったので、最後までどういう展開になるのか気を抜けませんでした。そして、主人公の秘密がわかると愕然としてしまった。
主人公の女性ハンナ(サラ・ポーリー)は工場で単純作業に携わる孤独な女性。30歳ぐらいか。弁当は鶏肉(フライドチキン?)とライスとリンゴ半個と決めているようで、アパートの冷蔵庫にもそれしか入っていない。
ある日、上司から「きみは働きすぎで周りから苦情が出ている。南の浜辺へでも行って、椰子の木陰で時間を過ごせばどうか」というようなことを言われ、ハンナは休暇をとり、勧められたのとは裏腹の、陰鬱な北の海辺の町へと向かう。
その町の食堂に、食事をしながら携帯電話で話をしている男がいた。男は電話の相手に向かって「看護士が必要なんだ」と怒鳴っている。それを聞き、ハンナは電話を終えた男に「私は看護士です」と申し出る。
……ということで、北海とおぼしい寂しい海の中にぽつりと建つ石油掘削施設へ行く、というお話。そこで重い火傷のため寝ている中年男ジョゼフ(ティム・ロビンス)との交流が物語の中心になります。果たして、ハンナは火傷の手当てが出来るのか?
監督もつとめるイサベル・コイシェの脚本が素晴らしい。そして、難しい役柄をこなすサラ・ポーリーとティム・ロビンスも見事。派手な事件が起こるわけでもないのに、奇妙なシチュエーションと登場人物たちの魅力でぐいぐいと引き込んでゆきます。
タイトルにある「秘密のこと」が問題になりますが、それを書くわけにはゆきません。おそらく多くの事例を取材し、コイシェがひとつの人物像を練り上げたのでしょう。深い衝撃とともに、多くのことを考えさせられました。
音楽にトム・ウェイツの曲が使われているのもうれしかった。