惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

13夜

2015-11-24 20:57:19 | 季節

 夕方、マイナンバー到着。
 お国が国民一人一人の収入や資産を把握するための制度なので愉快ではありませんが、仕方のないことだと諦めています。
 ただし、私のような職業の場合、原稿料をもらうところには必ずマイナンバーを明かさなければならないので、すごく洩れやすいと思います。本物のナンバーを渡さず、あらかじめ登録したペンネームなどで代行できるシステムにして欲しい。

 マイナンバーが到着したのは午後6時過ぎ。その前に出かけた散歩では、13夜の月が東の空で煌々と輝いていました。

 午後4時半頃。
 剪定した2本のケヤキの間から覗いているところを撮ってみました。

 H2Aロケット29号機が打ち上げに成功、衛星も軌道に投入できたということで、大変、めでたい。日本の航空・宇宙産業はこのところ順調ですね。


砂糖の価格

2015-11-23 20:52:23 | 社会・経済

 今日はオーディオセットのプリメインアンプを新しいものに取り換えました(新旧どちらもマランツ製)。
 古いのは購入して10年あまりだと思うのですが、左チャンネルの音がひずみ聞き苦しくなっていました。
 新しくすると、当然のことながら、症状は消え、クリアな音声。気持ちよく音楽や落語やラジオ放送を聞くことができます。

 日記を書かなかった20日(金)は、故・小松左京さん関係の集まりに参加(といっても今回は3人こっきりでしたが)。あれこれ興味深い話になりましたが、話題の中に「TPPで砂糖はどうなったのか?」というのがありました。交渉に入る前は大問題のひとつとされていたのに、今回、決着した際には耳にした覚えがありません。

 帰宅して調べてみると〈宮古毎日新聞〉のこの記事(10月7日付)が目に留まりました。現在の砂糖価格を支えている「糖価調整制度」が維持されることになったので、国内農家への影響はほとんどないというものです。
 それはそれで良かったのですが、これまで砂糖の国内価格がどのように決められているのかまったく知らなかったので、農家がサトウキビを工場に売る価格はトン当たり約5000円。他に交付金が1万6420円という記述に驚きました。農家のサトウキビ収入の4分の3以上が調整制度による交付金だというのです。

 では、消費価格はどうなっているのか?

 糖価調整を担っている独立行政法人農畜産業振興機構のこのページ(PDF)でよくわかります。6割をしめる輸入糖は調整に充てる金額を上乗せして値段を上げ、国産糖は価格を下げることで価格差をなくしているのですね。

 糖価調整制度は関税ではない(国内業者が負担)ということで、維持できたのでしょうか。ま、米国などにも同様の制度があるというので交渉がやりやすかったのかもしれません。勉強になりました。


ミハル・アイヴァス講演会

2015-11-22 21:43:37 | アート・文化

 アボカドのピンポン玉のような種を半分水に浸からせて水栽培しています。9月末から始め、今は根が10センチぐらい伸び、種は真半分に割れかけています。隙間から芽がのぞいているみたい。
 で、根が容器の底につきそうになったので、もっと深い容器に移し替えようとしていて大失敗。根の出た種を底に落とし、傷つけてしまったのです。この後、うまく育つかどうか。

 さて、今日は昨日の記事より1日さかのぼり、18日(水)の夜のことを。

 チェコの現代作家にミハル・アイヴァスという人がいて、『もうひとつの街』と『黄金時代』の2作が翻訳されています(河出書房新社刊)。翻訳は阿部賢一さん。
 チェコらしい幻想味ゆたかな素晴らしい作家で、特に『黄金時代』は大のお気に入り。この度、阿部さんが准教授をつとめておられる立教大学の招きで来日し、18日の夜、公開講座がもたれたのです。

 テーマは「『プラハ的なるもの』とは何か? プラハの作家たちの共通のモチーフをめぐって」。
 グスタフ・マイリンクやカフカ、リルケ、マックス・ブロート、レオ・ペルッツなど、プラハの作家の作品をアイヴァスさん流に読み直す試みなのですが、大変な構想力をふるった議論で、聴いているうち、これらの作家の作品とプラハの街を素材にしたアイヴァスさんの新作小説を語ってもらっているような気になりました。

 アイヴァスさんによれば、プラハの街は「上」と「下」、そしてさらに底部を流れる「川」という構造をなしており、この地理的特徴がプラハ人の意識の構造と照応していることが、小説から読み取れるのだそうです。
 「上」はプラハ城のある丘で、ここから眺める街全体の光景は、世界の秩序と人間の生の意味を見ることにつながっている。
 「下」は迷宮に似た旧市街・ユダヤ人街で、混沌としていながら、抜け道が意外な出口へと至ることに見られるような、思わぬ秩序が隠れているとか。
 さらに低いところを流れる「川」は、無形の要素であり、そこに溶け込むことで問題は消失してしまう。
 ――というのが、簡単な私の受け止め方だったのですが、誤解や短絡があるかもしれません。

 こうした分析の上に立って、アイヴァスさんは「プラハ的なものとは、常に秩序の探求を問題にしていて、そこには逆説と両義性がつきものである。そして、それらの逆説と両義性は統合されるのではなく、繊細な和解によって解決される」と言っておられたように思います。
 難しい議論ですが、地理と歴史と人物と小説とを練り混ぜて大きな構造物を組み立ててゆく感じで、凄いなぁと感歎しました。もっと多くの作品を読みたいものです。ぜひ、続けて翻訳を。


第3回ハヤカワSFコンテスト贈賞式

2015-11-21 21:12:19 | SF

 夜の外出が続いて、日記が更新できませんでした。すみません。

 一昨日のことから振り返ることにします。
 19日午後6時から神宮外苑の明治記念館にて「第5回アガサ・クリスティー使用/第3回ハヤカワSFコンテスト贈賞式」。早川書房の新人賞2賞の合同贈賞式です。私はSF方面から出席ですので、ここではSFコンテスト関係のみを報告します。

 第3回受賞者は次のとおり――

  • 大賞:『ユートロニカのこちら側』小川哲(さとし)
  • 佳作:『世界の涯ての夏』つかいまこと

 選考経過の報告は選考委員のお1人、神林長平さん。

 「前回、前々回の選考と違い、今回はサクサクと結論がでました。大賞受賞作は筆力、小説の完成度ともに他の候補作を圧倒。登場人物が善人すぎるという選考委員もいたが、私は問題ないと思った。あえて文句をつけるとすれば、シチュエーションが現実と地続きでSFらしさが薄いといえなくもない点。これに対し、佳作になった『世界の涯ての夏』は状況がすごく面白く、いかにもSFらしい。ロバート・F・ヤングっぽいボーイ・ミーツ・ガールであるところは東委員にウケていた。この2作に見られるような正反対の作風を受け入れるのがSFのふところの深さで、おもちゃ箱をひっくり返したような面白さを打ち出すことができる。どうぞSFをよろしく!」

 写真は大賞(右)と佳作(左)のポスター。

 佳作受賞のつかいまことさんは、「昭和生まれがここに来てしまい、恐縮しています。表現したい人は多いが、読む人は少ないというような昨今ですが、自分は書く側の人間でいつづけたいと思う」と、受賞の言葉。
 大賞受賞の小川哲さんは、「創作は孤独で地道なものと思う。これからも孤独で地道な作業をつづけてゆきたい」とのことでした。

 写真は大賞受賞の小川さんを中心に、左から、早川淳(あつし)早川書房副社長、塩澤快浩〈SFマガジン〉編集長/選考委員、神林長平 選考委員、小川哲さん、東浩紀 選考委員、小川一水 選考委員、早川浩 早川書房社長の皆さん。

 受賞作は今月25日発売予定。『ユートロニカのこちら側』は〈ハヤカワSFシリーズJコレクション〉、『世界の涯ての夏』は〈ハヤカワ文庫JA〉となります。乞う御期待。


渋谷フランセ

2015-11-17 21:00:07 | 日記・エッセイ・コラム

 立川談志師匠のDVD全集で、いちばん最初に入っている「明烏」を観ました。この有名な噺は、なぜか小学館のCD『東横落語会』には入ってないんですよね。
 1978年、家元が42歳の時の高座。

 遊びの今昔のマクラから始め、自分の政治家生活をダシにしたり、昨今の18歳頃の女性の違いに触れたりしてから、本編へ。
 上手いんだよなぁ。堅物の若旦那の口調や肩のすぼめ方に対して、若旦那を吉原へ連れてゆく源兵衛と太助の能天気でありながら、世話好きなところ。店の婆さんの首のすくめようまで、やはり映像で観ると格別。テンポもメリハリも絶品で、若い頃から家元は別格級の上手さだったことがわかります。
 なぜ、東横ではやっていないのか。
 立川志らくさんの「解説」によれば、この噺に「〈童貞喪失〉というテーマしか見出せず、やがて興味の対象ではなくなったからであろう」とのこと。童貞喪失というか、女性との交遊の喜びがテーマなんですよね。それだけじゃあ、足りなかったのか。

 赤瀬川原平『世の中は偶然に満ちている』(筑摩書房)を読んでいると、1981年12月22日の項に、渋谷東急プラザ2階の喫茶「フランセ」で、たまたま川本三郎さんと出遭った、とありました。
 ここを読んで、突如として懐かしい気分に襲われたのです。

 渋谷フランセ。私も利用しました。文春の編集者・A宮さんに原稿を渡すのは、だいたいここだったと思います。当時、私は駒沢に住んでいたので、渋谷まで出て、東急プラザ2階のこの店で編集者と会ったりしていたのです。
 A宮さんは、元アナウンサーでパリに行ったりなさってるA宮塔子さんのおじさん。〈オール讀物〉の書評原稿や短い小説を注文してくださってました。
 趣味の豊かな、楽しい方で、コーヒーも実に美味しそうに飲んでたなあ。

 その後、私は転居し、フランセも店をたたみ、この春には東急プラザが取り壊されてしまった。過ぎ去った年月を感じます。
 同じ頃、赤瀬川さんもフランセに行ってたのだと知ったのも、うれしいような、なぜか寂しいような。