金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国の社債デフォルトは氷山の一角

2014年03月13日 | 国際・政治

今日(3月13日)中国の全人代閉会の演説で李克強首相は個別の高金利商品のデフォルトは避けられないという見方をしめした。また李首相はGDPは完全雇用と所得増加のために必要だが、我々は成長率そのものにとらわれていないとも述べた。

先週金曜日にソーラーエネルギーの上海チャオリが利払い不能に陥り、また火曜日には他のエネルギー会社が2年連続の赤字を発表したので、中国の社債問題は投資家の懸念材料だった。

中国政府が「個別債権のデフォルトは避けられないが金融システムは守る」という宣言は妥当だが、一方改めて中国企業の過剰借り入れ問題の根の深さを浮き彫りにした。

中国の企業債務の残高は昨年末で12兆ドルで、これはGDPの120%に相当する。中国がこの過剰債務を解消して、金融システムの健全性を維持できるかどうかは大きな問題だ。

中国政府は今年の経済成長見通しを7.5%程度としているが、米国投資家の予想はもう少し低いようだ。(ピムコは6.5-7.5%と予想)

少し極端な例なので、半信半疑なのだが、Marc Faber氏は中国政府のいう7.5%という経済成長見通しは響きが良いように持ってきた数字に過ぎず、実際の成長率は最大でも4%程度だろうと述べている。

そして中国の貿易相手国の輸入の数字を分析すれば、中国の輸出はほとんど伸びていないことがわかるという。

中国の景気減速が銅などコモディティ価格を数年ぶりの安値に押し下げ、上海総合指数がリーマンショック前の1/3程度のところをうろうろしていることを見ると中国の経済成長率は中国政府の「計画」」よりかなり低くなりそうだ、という投資家・投機家は判断していることがわかる。

中国政府が「経済成長一辺倒を政策目標にしない」と言い出すときは、「経済成長目標の達成は不可能になった」と読むべきなのだろう。

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アメリカの強気姿勢は誤算?中国の防空識別圏

2013年11月29日 | 国際・政治

先週土曜日に突然新防空識別圏の設定を発表して、日韓米などを驚かせた中国だが、26日に米軍がB52爆撃機を識別圏内に事前通知なしに飛行させた時は、中国側からのスクランブル発進等警告は行われなかった。

WSJによるとその翌日中国の国防省は「米軍機が識別圏に入ってきたことはモニターしていた」と述べたが、外務省は識別圏内のルールの実施は環境によって変わると述べた。

WSJの記事の見出しはChina qualifies Air-Zone Threats after U.S.Challengeというもの。

「中国はアメリカの挑戦の後、防空識別圏の脅しを弱めた」ということだ。

日本の小野田防衛大臣は「米軍機は通常通り訓練飛行を行っただけで何の変化もなかった。中国の行動は一方的unilateralなものだという見方を日米は共有している」と述べた。

復旦大学(上海)の国際関係論の専門家は「中国はいかなる環境下においても領空外の防衛識別圏において侵入してくる航空機を撃墜する権利を持たない。中国は識別圏に入ってくる飛行機をエスコート(護衛)するだろう」と述べた。

中国空軍がB52の防空識別圏内を飛行したことに対して立ち上がらなかったことについては、中国の比較的オープンなオンラインフォーラムでは、批判の声が上がっている。もっともその前に新防空識別圏設定に対する疑問の声も上がっているが。

国内の強硬派の意見に押されて防空識別圏制定を打ち出した中国だが、米国の言葉と行動による素早い対応は予想外だったのではないか?

強気に出られて防空識別圏を少しトーダウンしたように見えるが油断は禁物。国内強硬派が騒ぎ出すと又々テンションが高まる危険性がある。

たとえば直前のブルンバーグのニュースを見ると、28日に日本の自衛隊機が識別圏内に入った時は中国側から戦闘機と早期警戒機が飛んだということだ。中国の対応は統一のとれたものとは判断しにくい。

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来年のグローバルトレンド~ピュー・リサーチ・センターから

2013年11月25日 | 国際・政治

半月ほど余り新聞やテレビを見ずにネパールの山奥を歩いていると市場の動きとズレが出ていてまだあまり相場関係のニュースを見る気がしない。幸いなことに株高傾向なのでボーとしていても今のところ良さそうなので助かる。

足慣らしのためにピュー・リサーチ・センターのHPを見ていたら、専門家がランク付けした来年の10大トレンドという記事がでていた。以下引用する。

1.中東と北アフリカにおける社会的緊張の高まり

2.所得格差の拡大

3.持続する構造的な失業

4.高まるサイバースペース(コンピューター空間)への脅威

5.地球温暖化問題への不対応

6.経済政策に対する信頼の低下

7.指導層の価値観の欠如

8.アジアにおける中間層の拡大

9.巨大都市圏の重要性の伸張

10.オンライン上の誤報の拡大

幾つかの点について感じるところを述べたい。

まず「持続する構造的な失業」の問題。失業は北米や欧州では人々の最大の関心事だが、それ以外の地域でも大きな問題だ。IT技術の発展と経済活動のグローバル化に失業の責任があるという意見もあるが、IT技術の発展により一つの作業プロセスや一つの産業が衰退しても、新しい産業が起きれば雇用需要は発生する。

例えば米国では失業率は全体では8.5%(ピューの記事の数字を採用した。現在はもう少し低い)だがITセクターについて見ると3.5%に過ぎない。また欧州では失業率は高止まりしているが、ヘルスケア部門では人材不足に陥っている。

日本についてもヘルスケア部門が人材不足なのはご承知のとおり。この産業別による労働需給の是正にどう取り組んでいくか?というのが各国の政治家や事業家が考えるべき大きな課題だ。

だが各国の指導層は「価値観が欠如している」と指摘されている。多少指導層に同情的な意見を述べると、色々な国において価値観の多様化が起きている。たとえば「尊厳死を認めるかどうか」という問題を世論調査すれば各国でさまざまな意見がでるはずだ。

色々なモノゴトに対する情報はサイバー空間に溢れ、良く言えば誰もが簡単にちょっとした専門家になることができる。その一方国として社会として一つの問題について意見を統一することが難しくなっている。

そのサイバー上のツイッターなどには誤報が流れそれが大きな社会的混乱を引き起こす可能性を秘めている。

★   ★   ★

好き勝手なことをいうと、年に何日か何週間か「情報断食」を行って、自分でものを考える修行をすることも悪くはないと思った。それによりサイバー空間を飛び交う色々な情報の中から本当に自分に必要なもの、正しいと思うものを選択する目を養う必要があるのではないか?と感じた次第だ。

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オバマ政権、シリア攻撃の第一ハードルを越えたが・・・

2013年09月05日 | 国際・政治

昨日(9月4日)米国上院の外交委員会は、条件付きで対シリア軍事行動を承認した。主な条件は軍事行動の期間は60日とし、30日限りの延長を認める、地上軍は参加しないというものだ。修正案は賛成10、反対7という僅差で承認された。

これで議案は来週上院に付議されることになった。第一のハードルは越えたが、反対派の多い下院で支持されるかどうか見通しははっきりしないと私は感じている。

調査機関ピュー・リサーチ・センターの直近の世論調査によると「オバマ大統領がシリアを空爆する必要性の根拠を明らかにしたか?」という質問について世論は先週の前半と週末では改善した。すなわち火曜日から金曜日にかけての調査では「説明した」という人は27%、「不十分」という人が51%、「不明」22%だったが、土日の調査では各々38%、44%、18%となった。

空爆理由の説明については10ポイント以上改善したが、空爆支持者・反対者の割合はほとんど変わっていない。週の前半の調査では支持者28%、反対派47%、不明25%で週末の調査では各々30%、48%、21%だった。

オバマ政権の説明努力は認めるけれども、私の意見は変わらないよ、というところだろう。

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ロイヤルベビー誕生、英国を勉強する機会

2013年07月23日 | 国際・政治

英国のウイリアム王子の妻キャサリンさんが男の子を出産した。日本でも関心が高まっていた話題だ。関心が高まるといえば、これを機会に少し英国のことを勉強して学ぶべきことは学ぶチャンスではないか?などと考えている。と偉そうに書き出したが、私は英国については全くの門外漢。30代中頃は仕事で年に4,5回出張していたが、それ以来すっかりご無沙汰である。

「英国に関心を払ってはどうか?」といった背景は二つある。一つは昨日テレビのニュースを観ていたら、町の人から「男の赤ちゃん、女の赤ちゃんどちらを期待していますか?」と声をかけられたエリザベス女王が「どちらでも良いわよ」と答えたシーン。

英国では2011年に王位継承法が改正され男女にかかわらず長子が承継することに改正された。もちろん長子承継に変わったから女王が「どちらでも良いわよ」と言った訳ではないだろうが(子供はすべて可愛いから)、女王はじめ英国の人が新しい承継者の誕生にホッとしたことは間違いないだろう。出産の高齢化や少子化が進む中で男女を問わない長子承継を決めた英国の知恵に学ぶところはあるのではないだろうか?

もう一つの背景は7月6日付のダイヤモンドで読んだ櫻井よしこさんの話。櫻井さんは英国公使のジュリア・ロングボトム氏から「(歴史認識問題について)中国の印象が正しいという印象が母国でも強かったのは事実です。しかしそれは微妙に変わりつつあります」という話を聞いている。

そして櫻井さんは「英国の微妙な変化は、情報の死活的重要性に気づいて発信し始めた安倍政権の世界戦略を奨励するものとみてよいだろう。そもそも日英両国には多くの共通点がある。島国、誇り高い文明、倫理観と慎み深さ。日本の主張に少し、耳を傾け始めた英国との絆を深めていく好機である」と結んでいる。

情報発信といえば、参院選の自公勝利の後、中国と韓国のメディアから安倍政権で日本の軍国主義化が強まるといった発言が流れているが、英国のBBCはさすがに冷静な見方を示していた。

BBCは「中国、韓国は安倍内閣が第二次大戦の戦争責任の見直し、憲法改正を推進し、島嶼問題でもっと好戦的になるのではないか?と懸念を示しているが、現実はもっと平凡でドラマチックなものではないだろう」と述べている。BBCは安倍内閣がまず国内の経済問題に集中すると予想しているからだ。

英国の一つの強みは世界的に影響力を持つクオリティの高いメディアを持っていることだ。そのメディアの共感を得られるような、論理的で明快だけれど慎み深い主張を続けていくことが必要だろう。

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