Pew Research Centerが7月14日に「世界の国々がアメリカや中国をどう見ているか」という世論調査の結果を発表していた。これはその中の中国に関する各国の見方を抜き出したものだ。
まず「中国を好意的に見るか非好意的に見るか」ということについて全世界の中央値を見ると好意的が49%、非好意的が32%である。好意的な見方をしている人が多い国は、旧ソ連圏のロシア(好意的64%)、ウクライナ(同64%)、アジアのイスラム国のパキスタン(同76%)、バングラディシュ(同77%)、マレーシア(同74%)、インドネシア(同66%)、アフリカのタンザニア(同77%)、ケニア(同74%)、南米のベネズエラ(同67%)、チリ(同60%)だ。
米国では好意的な見方をする人が35%で非好意的は55%。英国では好意的47%が非好意的38%を上回るが、ドイツでは非好意的64%が好意的28%を圧倒している。
中国と離島の領有問題を巡って緊張が高まっている東アジア諸国では当然のことながら、中国に対する見方は厳しい。ベトナムでは非好意的78%好意的16%、フィリピンでは非好意的58%好意的38%だ。韓国では好意的56%が非好意的42%を上回っている。
調査対象国の中で中国に対してもっとも厳しい見方をしているのは日本で非好意的は91%(好意的は7%)に達している。
「中国の経済発展は自国にとって良いことか?悪いことか?」という質問については、全世界の中央値は良いこと53%で、悪いことは27%だった。
米国では良い42%悪い49%がほぼ拮抗。英国やドイツでは良いが上回った。また日本でも良い47%が悪い39%を上回っている。一方フィリピン(悪い57%良い30%)、インド(同46%:23%)、ベトナム(同71%:21%)では悪いが良いを圧倒している。
「中国が個人の自由を尊重しているか?」という質問について全世界の中央値は、尊重している36%していない39%と尊重していないがやや上回るがほぼ拮抗状態だ。
中国は個人の自由を尊重していないと判断しているのは欧米諸国や日本、韓国などだ。
米国では78%、ドイツでは91%、日本では89%、韓国では73%の人が中国は個人の自由を尊重していないと判断している。
一方トルコとエジプトを除く中東イスラム諸国では中国は個人の自由を尊重していると判断する人が多い。また南アフリカを除くアフリカ諸国も大多数の人が中国は個人の自由を尊重していると判断している。
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Pew Reseach Centerはこの調査結果から何を読み取るか?ということは示唆していないが、国ごとの中国という新巨人に対する見方が相当違うことが興味深い。
日本と韓国は「中国の経済成長の自国に対する影響」という点ではベクトルが揃っている(日本では47%良いこと39%が悪いこと、韓国では57%が良いこと36%が悪いこと)。また人権尊重の点でもほぼ同じ見方だ。ただし全体的な中国に対する評価は逆だ。日本では91%の人が中国に非好意を示し、好意的な見方をする人はわずかに7%だが、韓国では56%の人が好意的な見方を示している。
このような見方が韓国と中国の長い友好関係(あるいは臣属関係)を反映したものなのか、あるいは日本に対する共闘意識の産物なのかまでPewは分析していないし、私もそれを判断する材料は持ち合わせていない。
中国古代の兵法は「遠交近攻策」~遠くの同盟国と手を結び、近隣国を攻める戦略~を教えている。今の中国を見ると一部の例外を除いて「遠交近攻」の状態になっているが、これが古代の英知に従ったものなのか、近隣諸国と融和が図れないないので遠くに仲間を求めた結果なのだろうか?