金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

エコノミスト誌、郵政改革法案参院通過を予見

2005年07月07日 | 国際・政治

エコノミスト誌は7月5日の記事で郵政改革法案の衆院通過と今後の見通し・論点等をまとめている。同法案が参院を通過するだろうという観測はエコノミスト誌による小泉改革への援護射撃とも取れなくはないが、一部の日本の新聞が参院における自民党の数の少なさから法案の廃案を予測する論調にあるよりは冷静な見方かもしれない。あるいは説明不足の小泉首相になりかわってエコノミスト誌が郵政事業民営化の意義と問題点を解説して国内外各界のコンセンサスを得ようとしているのだろうか?

いずれにせよ「法案が通過するかどうか」ということばかりに関心が移ってしまった感があるが、郵政事業民営化の影響を冷静に考えることが必要だろう。エコノミストの記事はこの点からも正鵠を得ているのでポイントを紹介したい。

  • 小泉首相は参院で法案が否決された場合、衆院の解散・総選挙という脅しをかけている。参院での自民党議員割合は衆院より少ないが、参院のリーダーの統制力があるので法案は通過すると思われる。何故なら東京都議選で見られた民主党の躍進を考えると自民党内で誰もこの時期の総選挙を望んでいないからである。又小泉首相の人気度合いは5割を切ったとはいえ、自民党内では一番人気が高い。
  • 一方郵政事業民営化により郵政労働者と地方投票者の指示を失うことは自民党にとって悩ましいことである。従って小泉首相は民営化のタイムテーブルにおいて譲歩を行ない完全民営化を2017年まで延期しているのである。
  • 郵貯+簡保の残高は386兆円、これは世界のトップ銀行(東京三菱+UFJやUBS、シティバンク、みずほ)の個別預金残高の3倍近い預金残高である。郵貯が民営化されるということはこの巨大な資金が市場に出てくるということである。日本の郵政公社の役割に対するより大きな批判は、金融システムに大きなひずみがある日本において資金が誤って配分されていることをベースにしている。
  • 郵貯残高は265兆円でこれは総預金残高の約3割であるが、郵貯は税金や預金保険料を払っていない。これは郵貯が実質的な補助金を得ているのと同じである。銀行業界は郵貯の業務自由化・拡大の前にこれらの補助が取り払われるべきであると主張している。
  • また信用リスク判断経験の少ない郵貯が与信判断を誤り、不良債権問題を悪化されることへの懸念がある。また郵貯と銀行で監督官庁が異なることも問題だ。また郵便局の支店ネットワークは潜在的な競争相手である銀行より大きいので、銀行業界の中には業務撤退を強いられるようなところがあるかもしれないと銀行業界は恐れている。
  • 郵貯が民営化されると現在のように国債を買い~そしてその国債発行替り金で効果の疑わしい公共投資を行なう~といったことはできなくなるだろう。これは地方の自民党支持者の権益に反することだ(それ故自民党内に郵政改革に対する反対が強い)

以下はかなり個人的な異見であることを承知で「大きなサービス・技術の変革の流れの中」で郵政事業問題をちょっと論じてみた。

  • 郵貯問題と増税問題は別の話のようで「国の借金のファイナンス」という点で強いリンケージがある。郵貯で国債を買うということは借金を先送りすることだが、財政が改善しない限りいずれは破綻する懸念がある。増税は痛みであるが借りたものは返さないといけないのは国も個人も同じ話。そろそろ借金の退路を断って財政健全化に向かう必要があるだろう。
  • 紙ベースの郵便はもっと電子メールに置き換わらないのだろうか?私個人的には相当電子メール化している。残るところは年賀状とか転勤挨拶状位だ。これも電子メールの普及でいずれ変るのではないか?紙ベースの手紙・葉書がなくなるとは思わないが、10年、20年のタームで考えるとエネルギーコストの上昇等から郵便配達コストが上がる可能性は高いと考えている。もし郵便料金が上がれば電子メールへのシフトが進むかもしれない。

郵便貯金業務と銀行の業務の競合は?ということも職業柄大いなる関心事である。しかしながらこの問題については「自己に近すぎる問題」だけにバイアスがかかり、冷静な分析が曇る可能性がある。いずれゆっくり考えたいが「今の姿」をベースに論じるだけではなく、郵政事業が完全自由化される12年後のIT技術や金融市場の革新とか人口動態等を踏まえながらものを見て行きたいと思う。例えば電子マネーの普及等が金融機関における小口現金の出し入れという現在の窓口業務を変える可能性もあるか・・・などとも考えている。

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夏山登山道具考

2005年07月07日 | 

会社の後輩から「初秋に北アルプス登山をする。山登りは初めてなので登山道具についてアドヴァイスをして欲しい」という電話があった。そこで基本的な用具について簡単なリストを作り送ってあげたが、これを機会に「登山道具に関わる基本的な考え方」をちょっとまとめてみた。(対象とする山は無雪期の北アルプスの一般ルートとする)

  • 基本は「歩き」と「担ぎ」

山登りは「必要な装備・食料を担いで歩く」ことであるから「歩く」ことに始まり「歩く」ことに終わると言って良い。従って「足」と「大地」の接点になる「登山靴」が一番大切である。まず靴は「足を保護する適当な深さと硬さ」「防水性」「岩角等に対する耐摩耗性」「滑りやすい岩・残雪・ぬかるんだ坂道等に対するグリップ力」「体重+荷物という重量に耐えるある程度の底の硬さ」「履き心地」等が選定ポイントとなる。

まず靴底については私は昔から「ビブラム」社製のゴム底に拘っている。靴の素材は私は皮製を使っているが、ゴアテックスなど防水性のある布を一部使ったものも悪くはないと思う。靴底の硬さだが、私はある程度硬い方が鋭利な石を踏んだとき等衝撃が少ないので良いと思っている。従って私の登山靴は少し重た目であるかもしれないが、この少し重たいことが「ゆっくりとした足の運び」という登山の基本歩行につながると考えている。

いずれにしても靴が一番大切であり、それなりのお金をかけるべきである。

次に重要なものはザックだと思っている。特に10kg以上の荷物を担ぐ場合等ザックの良し悪しが疲労の大小に直結してくる。ザックの選び方は素人では難しいので一流メーカーの製品を専門店で選ぶことが良いだろう。私が実際に使って最も気に入っているのはオスプレー(Osprey)社のザックだ。同サイズの他社商品に比べてかなり高いが担ぎやすさは抜群である。

  • 衣料品は汗と雨対策~「インナー」と「アウター」が大切

私の学生時代に比べて登山道具は格段に進歩したが、特に繊維類の進歩が大きい。昔は冬山では高価なウールの下着を着たものだが、今ではポリエステル中空繊維の方がはるかに性能が良い。さて無雪期の下着だが、汗対策から速乾性素材の下着をお勧めする。積雪期登山であれば下着の良し悪しが命に関わることもあるので、少々高くても本格的な登山用を勧めるが、それ程寒くない時期であればユニクロ等で売っている速乾性素材のもので十分だろう。私も沢登の時などユニクロの速乾性シャツを愛用している。無雪期のアウターはしっかりした雨具で良い。上下分かれてしっかりした雨具を着るとかなり耐風製がある。雨具はゴアテックス製をお勧めする。最近ゴアテックスと同じ効果を持った他社の製品も出ているが私は使ったことがないのでコメントは差し控える。

いずれにせよ雨具の良し悪しは、遭難等万一の場合に生死を分けることもあるので納得がいくものを持つべきだろう。それに比べて登山シャツなどは必ずしも専門店で高いものを買う必要はないというのが私の意見だ。ただし夏でも濡れることを考えると綿製品ではなく、ポリエステル系などがお勧めである。

なお夏山といえども寒冷前線の通過なので急速な気温低下もあるので、フリースのジャケット等を一枚持っていく必要があるだろう。このフリースと雨具を重ねると相当な寒さでも凌げるものである。

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