先週某米系投資銀行の日本人社員と雑談をしていたら、本国の方ではサブプライム問題でM&Aは開店休業状態だが、日本では結構ディールがあるということだった。しかしM&Aのディールが盛んなのはやはり経済の元気が良い中国、インドだろう。インドといえば英国のジャガーとランド・ローバーの買収候補としてインド企業の名前が上がっていることは既に良く知られているが、エコノミスト誌が最近の状況を分析していた。
ジャガーとランド・ローバーを持っているのはフォード社で同社は米国での事業に専念するためジャガーとランド・ローバー両者をまとめて売りたがっている。今週フォードは3つの最終候補を選択した。インド最大の自動車メーカー「タタ・モーターズ」、インドの多目的車メーカーの「マヒンドラ・マヒンドラ」とプライベート・エクイティのアポロの連合軍そして最後はプライベート・エクイティの「ワン・エクイティ・パートナーズ」だ。
三つの買い手候補が出した値段は15億ドル近辺だと信じられている。フォードはオークションの手法を使って値段を吊り上げることができるだろうが、それ以上の懸念材料はジャガーとランド・ローバーの利益と1万6千人の労働者の問題だ。これはフォードの利他的な判断によるものではなく、フォードにとって二番目に大きい市場である英国で良き企業市民と思われたいからである。
三つの買い手候補の中でタタが最短距離にいると見られている。タタが何故ジャガーとランド・ローバーを買おうとしているかについては見方が分かれている様だ。英国の名門企業を所有するという名声を欲していると見る者がいる一方、ジャガーとランド・ローバーの業績が急回復しているから興味を示しているという者もいる。
だがジャガーにしてもランド・ローバーにしても古い企業で、最新の燃費の良い車を作る技術は持っていない。ここは非常に効率性の高いディーゼルエンジンを作っているドイツのメルセデスなどに劣るところだ。欧州では排ガス規制法が2012年から施行されるので、基準に到達できないと思われるジャガーやランド・ローバーは車を売るたびに課徴金を支払うことになる。ということは名門ジャガーやランド・ローバーの企業価値が低下するということだ。計算の得意なインド企業はそれ位のそろばんは弾いているに違いないが、勝算の程を聞いてみたいものである。
さて四輪駆動の名門であるランド・ローバーの話が出たついでに、今私が買い換えようと考え始めたSUVについて話をしよう。それはフォルクスワーゲンが最近モーターショーで発表したティグアンTiguanという車だ。大体日産のデュアリスより少し大きくX-Trailより少し小さいサイズでワーゲンのSUVトゥアレグの弟分になる。
TSIというツインチャージャーを備えたガソリン・エンジンとTDIという直噴ディーゼル・エンジンの2つのタイプがあり、高性能と低燃費という二律背反を実現した車だ。フォルクスワーゲンというと「国民車」=経済性優先でスピードは今ひとつというイメージを持っている人がいるかもしれない(実は私も大昔にワーゲン・ジェッタに乗っていたことがあり、そんなイメージを持っていた)が、現実は違う様だ。ベンツのAクラスでは全くワーゲンに歯が立たないというマニアもいる。
このティグアン、買うか買わないかは最後は値段との相談になるが、四輪駆動車の悪路踏破能力とクーペのような加速感を備え持つなら、まじめに検討する必要がある。
話はすっかりそれてしまったが、車に求められる技術も日進月歩なので名門企業が良い車を作り続けるという保証はないかもしれない。