団塊の世代の退職や山ガールの進出で、国内の登山人口は増えていると言われている。では時間的な余裕のあるはずの中高年の増加で、海外トレッキングに出かける人が増えているか?というと必ずしもそうではないようだ。
統計的なデータに基づく話ではないが、次のようなことから私は海外トレッキングに出かける人の数は減っていると判断している。
一つは今月ネパールのトレッキング中に、現地にガイド連中に聞いた話だ。ネパールのガイド試験では外国語一つが必須ということだが、最近は中国人や韓国人のトレッカーが増え、日本人トレッカーが減っているので、日本語で受験する人が減り、中国語や韓国語を選択する人が増えているということだ。
次に私が顧問を務めている某ロータリークラブ・トレッキング同好会から「来年度の海外トレッキングのトレッキングプランを幾つか作って欲しい」と頼まれ、下調べに「海外トレッキングの入門書」を探したところ、ここ10年ほど更新されていないことが分った(「海外トレッキングベスト50コース」)。10年前の本では実用性は皆無であるから、日本人の海外トレッキング熱が下火になっていることが伺える。
もっともこの見方に対して反論も考えられる。たとえば10月に出かけた台湾・玉山では、中国人についで日本人登山客が多いと思われた。
また来年行きたいと考え始めているボルネオ島・キナバル山の情報を眺めていると、日本の旅行会社が山小屋の予約をかなり押さえているという情報に出会った。
ネパールでも〇〇旅行のツアーで「ナムチェバザールのエベレストビューホテル(一泊約4万円の高級ホテル)に泊まり帰りはルクラまでヘリで戻り」という企画で旅をしている日本人に沢山出会った。
以上のようなことを見ると海外トレッキングに出かける人が減っていると断言するのも危険かもしれない。
そこでこの2つの少し矛盾する情報を整理すると今の日本人トレッカーの大雑把な傾向が見えてくると思われた。
- 経済的に余裕のある中高年を中心に、日本の旅行会社が国内で企画するパッケージ型トレッキング(日本人ガイド付)を利用する人が増えている(だから「トレッキング本」を買う必要がない)。
- 台湾・ボルネオ等近距離・短期間のトレッキングが選好される。
- 「死ぬまでに一度はエベレストを見ておきたい」的な一度きりのトレッカーが多い。
これに較べてネパールを旅している欧州系のトレッカーの多くは「何度でもネパールに来たい。だから1回あたりの旅行費用は抑えたいし、折角来た以上はできるだけ長く滞在したい」と考えているようだ。
台湾やボルネオではリピートする人は少ないだろうし、「死ぬまでに一度はエベレスト」ではネパールでもリピーターは期待薄だ。以上のようなことから、海外トレッキングの経験者は仮に減っていないとしても、滞在日数やリピート数が少なく、また現地ガイドへの依存度も低いので、全体としては「日本人トレッカーは減っている」ということになるのだろう。
私はここに今の日本人の「旅に対する心の持ち方」があるように感じた。人それぞれなので、とやかく言う話ではないが。
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