金融そして時々山

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最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

紺屋の「老後三点セットアドバイス」

2020年02月20日 | ライフプランニングファイル

先日ご近所の方に「老後三点セット」についてアドバイスを行った。このご近所の方は80歳位の独居のおばあさんと結婚して外国に暮らすお嬢さんである。おばあさんはお元気なのだが将来自分が死んだ場合、娘さんが自宅等の財産を相続することができるかどうかという不安をお持ちで私の家内に相談していた。

偶々娘さんが帰国された機会にお二人そろって私宛相談に来られた次第。私は以前相続関係の社団法人の理事をしていたことがあるので、一般の方よりは相続問題に詳しい(と家内は思っている)が、相続を生業とする司法書士等士族ではないので、一般的なアドバイスになるがそれでよろしければお話をお伺いします、という条件でお話をお伺いすることになった。

 私のアドバイスの中心は「公正証書遺言の作成」「任意後見契約の締結」「リビングウイルまたは事前指示書」の作成というものである。これらの書類を作る必要性や作成手順について私はもちろんかなり知っているが、実は自分ではまだ何一つ準備していないのである。これは「まだすぐには大病はしないだろう」という根拠のない楽観に基づいて怠けているということなのだが。

 ということで「紺屋の白袴」なアドバイスになってしまったが、話のポイントを紹介しておきたい。

1.被相続人が日本人であれば相続は日本法で行われる

「法の適用に関する通則法」はこのように定めているので、娘さんの国籍の如何に関わらず日本の相続法に基づいて相続が行わることは間違いない。

2.絶対に公正証書遺言を作成するべきである

法律上「相続人になる」ことと実際に相続財産を自分のものにするということの間には大きなギャップがあります。たとえば遺言書がない場合、銀行に行って「私だけが相続人だからお母さんの預金を払い出してほしい」といっても「はい、そうですか」とはいかない。払い出しにきた人が唯一の相続人であるかどうかは戸籍謄本などで確認しないと銀行は払い出しに応じない。これは大変手間なのであらかじめ強制力のある公正証書遺言を作成しておくべきなのだ。

なお相続人が海外にいる場合は、遺言の執行(預金や不動産の相続手続き)が大変なので遺言執行人を定めておくべきである。

3.任意後見契約の締結

意思能力が弱まり喪失する場合に備えて任意後見人を定めておくことは重要。特に信頼できる身寄りが近くにいない場合は特に重要だろう。

4.リビングウイルまたは事前指示書の作成

これは終末期についてどのような処置をして欲しいか?またはして欲しくないか?を指示しておくものだ。簡単な例では「回復の見込みがない場合の胃ろうはしていらない」などだ。

これも尊厳を維持しながら苦痛のない終末を迎えるために必要な書類だ。

ざっと説明申し上げた上で「でも一番大切なことは手続きではありません。まずお母さんと娘さんでこれからどうしたいか?どのように充実してかつ安心した人生を送りたいのか?ということをよく話し合ってください。そしてやりたいこと・やってほしくないことなどを箇条書きにしてみては如何でしょうか?」とアドバイスした。もしやりたいことややってほしくないことがまとまり手続きに進みたいということであれば、それほど遠くないところにいるある専門家を紹介しようと考えている。

一人の専門家でこれらのタスクを全部こなすのは難しいだろうが、窓口は一つの方が良い。ワンストップサービスが必要だからだ。因みにいうとカナダを例を調べたことがあるが、カナダでは「穴埋め型」の3点セットのひな型にパソコンで遺言書などを作成し、弁護士に遺言執行(あるいは信託契約の受託)や任意後見人をお願いするというのが一般的だ。

 私は日本では地域金融機関の活路の一つとして、高齢者に対するこのようなサービスの提供があるのではないか?と考えているが、同時にかなり難しいだろうとも考えている。それは一般論として金融機関の勤務員は傾聴力が乏しいことによる。つまり自分たちの商品やサービスを売り込むことは教育訓練されているが、人の話を聞いて寄り添うようなソリューションを提供するという教育訓練を受けていないから、このようなサービス提供は困難だと思われる。仮にこのハードルを越えることができると地域金融機関のレーゾンデートルは高まるのだが。

 実は私が相続等について個別具体的な相談にはあまり首を突っ込まないことにしているのも上記のような理由によるところが大きいのである。

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