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高齢化社会対策は「働くことからの自由」から「働く自由へ」~全米退職者協会の提言

2021年09月25日 | うんちく・小ネタ
 Barron'sに全米退職者協会のジェンキンスCEOが次のような寄稿をしていた。
  • 2020年はコロナウイルス問題が世界を揺るがした年だったが、別の面でも我々の世界の変化を特徴づける年だった。それは65歳以上のアメリカ人の数が5歳以下の数を初めて上回った年だった。
  • この傾向は持続し、次の20年間で65歳以上の人口は倍になり、アメリカ人の5人に1人は65歳以上になっている。
  • これまでの老後資金のモデルは、ソシアルセキュリティ(社会保障、大雑把に言って国民年金)、個人貯蓄、企業年金だった。だが人生100年時代にはこのモデルではおぼつかない。
  • 従来は退職モデルは「働くことからの自由を得る」ことだったが、現在広範囲の中年層に必要なのは「働くことの自由を得る」モデルである。
ここのところは原文の方がニュアンスが伝わりやすいので原文を引用しておこう。
A key part of that retirement model that most of us have grown up with is freedom from work. Today, a key part of extended middle age is the freedom to work.
 話をまとめると、長寿命化社会では長生きして老後資金が枯渇することが大きなリスクだが、そのリスクは従来モデルの個人貯蓄や企業年金では賄えない。寿命が伸びているのだから、働く年数も伸ばして退職年齢を遅くしようという主張だ。
 アメリカには定年年齢はない。何故なら年齢により解雇することは差別に該当するので法的に禁じられているからだ。ただし実質的にはソシアルセキュリティが満額支払われる66歳前後で退職する人が多い。
 制度としての定年がないので、理屈の上ではアメリカ人は働こうと思うと職務遂行能力がある限り働き続けることができるので、日本より高齢化問題には取り組みやすいだろうと私は考えている。
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今自民党の総裁選で各候補が、高齢化対策や格差是正について色々な政策を提言しているようだが、私は多くの問題を解決するシンプルな方法は「同一労働同一賃金の原則」に立ち返ってものをものを考えることではないか?と考えている。
そうすれば理屈の上では定年制はなくなる。正社員と非正規社員の所得格差も職務内容が同じであれば、なくなるはずだ。
もちろん勤務制度や労働慣行は長年の積み重ねで出来上がっているものだから、急激な変更には抵抗勢力が多いことは百も承知だ。
 「同一労働同一賃金制度を導入しているヨーロッパでは失業率の高止まりなど多くの問題はある」などの反論もあるだろう。
 だがコロナウイルスなど世界的なパンデミックリスクの拡大、デジタルトランスフォーメーション、地球温暖化による災害の激甚化やエネルギー革命の必要性、高齢化社会の持続など我々を取り巻く環境は激しく動いている。
 一度原点に返ってものを考える中にソリューションがあると私は考えている。
 
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