金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

不確実な投資環境の中の二つの奇妙な動き

2020年02月22日 | 投資

最近相場を動かしているのは、経済統計データでも企業業績でもない。相場を動かしているのは、コロナウイルスの動向である。コロナウイルスが沈静化の兆しを見せたというニュースでリスクオンになり、感染拡大の懸念でリスクオンになる。

昨日(2月21日)は米国株は売られた。S&P500は約1%値を下げてボラタイルな取引を終えた。この日は投資家をリスクオフムードにするニュースが流れたのだろう、という程度に私は考えている。つまりこのようなムードで動いている相場をあまり真剣に見つめても仕方がないと感じている。

実際投資環境が不透明な中で不思議がことが二つ起きている。

一つは米国株市場で、ITセクターとユーティリティ(公益事業)セクターという相反するセクターがともに高いパフォーマンスを上げていることだ。一般にイケイケ相場では成長セクターであるITセクターが買われ、不確実性が高まると公益事業銘柄が買われる。公益事業銘柄はリスク回避先なのだ。

今米国株市場でリスクオンの代表選手であるIT株とリスクオフの代表選手である公益事業株が買われているということは投資家の見方が二つに分かれていることを示唆しているようだ。

もう一つの不思議なことは、円が対ドルで安くなる動きを示していることだ。昨日は111円50銭程度と少し円高に戻ったがその前は112円まで円安になっていた。

「有事の円買い」ということが示すように、円は安全資産と思われていたが、ここにきて必ずしも安全資産ではないという見方をする投資家が増えてきたのだろうか?

以下はこの回の円安傾向が起きていることについて考えらえれる理由

  • コロナウイルスの影響(中国の経済活動低迷・インバウンド観光客の鈍化など)で日本経済はしばらくマイナス成長に陥る。債券・株式とも高いパフォーマンスが期待できる米国の資産配分を増やし、日本への資産配分を減らした方がよい
  • 1月に日本の年金基金が信託勘定で2兆円相当の外債をネットで買いますなど、日本の機関投資家の外債投資が高まっている。WSJなど専門紙は昨年GPIFが為替リスクをフルヘッジした外債投資は国内債券扱いにできると運用ルールを変えたことで外債購入が増えた(外債購入が増えると直物の円売・ドル買いが増える。ヘッジすると先物のドル売りは立つが)
  • もう少しファンダメンタルな理由として「少子高齢化による人口減少と国内市場の縮小」「縮小する国内市場を埋めていたインバウンド客の急減という基盤の脆弱性」「改善が進まない労働市場と生産性の低さに対する投資家としての忌避感」・・・・

などの理由が考えられる。円安・ドル高はトランプ大統領が嫌うところなので一方的に円安が進むとは考えにくいが、「有事の円買い」というマントラも賞味期限切れかもしれない。

不確実な時代を生きるには過去の経験に頼り過ぎないことも大切である。

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紺屋の「老後三点セットアドバイス」

2020年02月20日 | ライフプランニングファイル

先日ご近所の方に「老後三点セット」についてアドバイスを行った。このご近所の方は80歳位の独居のおばあさんと結婚して外国に暮らすお嬢さんである。おばあさんはお元気なのだが将来自分が死んだ場合、娘さんが自宅等の財産を相続することができるかどうかという不安をお持ちで私の家内に相談していた。

偶々娘さんが帰国された機会にお二人そろって私宛相談に来られた次第。私は以前相続関係の社団法人の理事をしていたことがあるので、一般の方よりは相続問題に詳しい(と家内は思っている)が、相続を生業とする司法書士等士族ではないので、一般的なアドバイスになるがそれでよろしければお話をお伺いします、という条件でお話をお伺いすることになった。

 私のアドバイスの中心は「公正証書遺言の作成」「任意後見契約の締結」「リビングウイルまたは事前指示書」の作成というものである。これらの書類を作る必要性や作成手順について私はもちろんかなり知っているが、実は自分ではまだ何一つ準備していないのである。これは「まだすぐには大病はしないだろう」という根拠のない楽観に基づいて怠けているということなのだが。

 ということで「紺屋の白袴」なアドバイスになってしまったが、話のポイントを紹介しておきたい。

1.被相続人が日本人であれば相続は日本法で行われる

「法の適用に関する通則法」はこのように定めているので、娘さんの国籍の如何に関わらず日本の相続法に基づいて相続が行わることは間違いない。

2.絶対に公正証書遺言を作成するべきである

法律上「相続人になる」ことと実際に相続財産を自分のものにするということの間には大きなギャップがあります。たとえば遺言書がない場合、銀行に行って「私だけが相続人だからお母さんの預金を払い出してほしい」といっても「はい、そうですか」とはいかない。払い出しにきた人が唯一の相続人であるかどうかは戸籍謄本などで確認しないと銀行は払い出しに応じない。これは大変手間なのであらかじめ強制力のある公正証書遺言を作成しておくべきなのだ。

なお相続人が海外にいる場合は、遺言の執行(預金や不動産の相続手続き)が大変なので遺言執行人を定めておくべきである。

3.任意後見契約の締結

意思能力が弱まり喪失する場合に備えて任意後見人を定めておくことは重要。特に信頼できる身寄りが近くにいない場合は特に重要だろう。

4.リビングウイルまたは事前指示書の作成

これは終末期についてどのような処置をして欲しいか?またはして欲しくないか?を指示しておくものだ。簡単な例では「回復の見込みがない場合の胃ろうはしていらない」などだ。

これも尊厳を維持しながら苦痛のない終末を迎えるために必要な書類だ。

ざっと説明申し上げた上で「でも一番大切なことは手続きではありません。まずお母さんと娘さんでこれからどうしたいか?どのように充実してかつ安心した人生を送りたいのか?ということをよく話し合ってください。そしてやりたいこと・やってほしくないことなどを箇条書きにしてみては如何でしょうか?」とアドバイスした。もしやりたいことややってほしくないことがまとまり手続きに進みたいということであれば、それほど遠くないところにいるある専門家を紹介しようと考えている。

一人の専門家でこれらのタスクを全部こなすのは難しいだろうが、窓口は一つの方が良い。ワンストップサービスが必要だからだ。因みにいうとカナダを例を調べたことがあるが、カナダでは「穴埋め型」の3点セットのひな型にパソコンで遺言書などを作成し、弁護士に遺言執行(あるいは信託契約の受託)や任意後見人をお願いするというのが一般的だ。

 私は日本では地域金融機関の活路の一つとして、高齢者に対するこのようなサービスの提供があるのではないか?と考えているが、同時にかなり難しいだろうとも考えている。それは一般論として金融機関の勤務員は傾聴力が乏しいことによる。つまり自分たちの商品やサービスを売り込むことは教育訓練されているが、人の話を聞いて寄り添うようなソリューションを提供するという教育訓練を受けていないから、このようなサービス提供は困難だと思われる。仮にこのハードルを越えることができると地域金融機関のレーゾンデートルは高まるのだが。

 実は私が相続等について個別具体的な相談にはあまり首を突っ込まないことにしているのも上記のような理由によるところが大きいのである。

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京都のホテル料金は下がっている

2020年02月18日 | 旅行

来月お彼岸の頃、京都に旅行する予定があり、ブッキングコムでホテルを予約した。

予想されたことだが、ホテル料金はかなり下がっている。添付した画像は3月初めの料金だが、最初のオファー価格の半額程度になっている感じだ。

価格が低下している一番の理由は中国人を始めとするインバウンド観光客の減少だ。

それに加えて政府は「不要不急の外出を避ける」ように自粛を要請しているので、日本人観光客も春の京都観光を見合わせているのだろう。

「不要不急の外出を避ける」呼びかけは政策のように見えて実は政府の言い逃れ・言い訳に過ぎないようだ。つまり「外出してコロナウイルスに罹った」人が出た場合、「ほら、ちゃんと政府は警鐘をならしていたでしょ」という具合に。

 

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リセッション入りは安倍内閣の弔鐘になるか?

2020年02月18日 | 投資

今日(2月18日)の日本株は大幅下落。午後の日経平均は前日比360ポイント(1.5%強)下落して推移している。大幅続落の背景には昨日アップルが第1四半期の売上高がコロナウイルスの影響で予想より悪いだろうという見通しを発表したことによる。

コロナウイルスの影響が広範かつ長期にわたるという予想は日本がリセッションに陥る可能性が相当高いことを投資家に改めて認識させたのだろう。昨日発表された日本の昨年10~12月のGDPは前年比6.3%減少した。

INGの日)の日本株は大幅下落。午後の日経平均は前日比360ポイント(1.5%強)下落して推移している。大幅続落の背景には昨日アップルが第1四半期の売上高がコロナウイルスの影響で予想より悪いだろうという見通しを発表したことによる。

 

コロナウイルスの影響が広範かつ長期にわたるという予想は日本がリセッションに陥る可能性が相当高いことを投資家に改めて認識させたのだろう。昨日発表された日本の昨年10~12月のGDPは前年比6.3%減少した。

INGのチーフエコノミストは、2020年全体を通じて日本のGDPは1.1%縮小すると予想し、日本のリセッション入りは避けがたいと予想している。リセッションの定義は2四半期連続でGDPが縮小することなので、昨年の10~12月に続いて今年の1~3月のGDPが縮小するとリセッションつまり景気後退が宣言されることだ。

これは約5年ぶりのリセッション入りだが、問題はリセッション入りすることではなく、景気回復の手が打ち難いことにあることだろう。

リセッション入りするとしてその要因は何かということを考えてみると、直接的な要因として「米中貿易摩擦長期化による世界経済の減速」「中国経済の減速」「消費税引き上げ」「台風19号(ハギビス)の直撃」「コロナウイルス感染拡大」などがあげられる。またより根本的な問題としては、高齢化進行に伴う労働力の減少と個人消費力の減退、賃金と物価の低迷が考えらえる。これらの根本的な問題の背景には官民挙げて労働慣行と労働市場の改革に本格的に取り組んでこなかったことがある。

政府は昨年12月に13兆円規模の財政支出を閣議決定しているがその効果については疑問視する声が上がっている。

中国経済が世界経済に占める影響力は今世紀初めのサーズ問題の頃に較べると4倍に拡大しいている。日本経済に与える影響も年間8百万人の中国人旅行客とその人々が買い物で落とす金だけでも極めて大きい。この個人消費が日本人の個人消費力の減退を補っていた訳だが、短期的にせよこれが失われる場合穴埋めは極めて困難だ。

将来の政治情勢を予想するのは余り趣味に合わないが、桜を見る会問題、コロナウイルス対策の評価に加えてリセッション入りということになると「アベノミクスとは何だったのか?」という声が上がり、弔鐘に繋がるかもしれない。

もっともそれで事態が好転するとは、考えらえないところに日本の大きな問題はあるのだが。

 

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不透明な時期に資金を集める超優良米国巨大企業の株式

2020年02月17日 | 投資

今朝(2月17日)の日本株市場は日経平均が280ポイント(1.2%)以上下げて取引されている。昨年10月~12月の実質GDPが前年比▲6.3%と5四半期ぶりにマイナス成長になったことに対する失望やコロナウイルス問題の先行きに対する不透明感から、株が売られているのだ。

先行きの不透明感が高まると株を売り、信用度の高い国債など債券を買うのが投資家の常のパターンで、これら安全性が高いと思われる資産はSafe havenと呼ばれている。

前段で先行きの不透明感が高いと株は売られると書いたが、これは一般論で現在の状況を見ると、「世界的には株式相場はぱっとしないが、アメリカの巨大企業の株は集中的に買われている」という現象が起きている。

下のグラフはCNBCから借用したもので、米国の巨大企業の株式で構成されるETFと世界の優良企業に投資

するグローバル・ダウETFのパフォーマンスを示している。

グラフを見て一目瞭然のとおり、今年に入って米国巨大企業ETFのパフォーマンスの強さが際立っている。

ではこのETF(Vanguard Mega Cap Growth ETF)の構成銘柄を見てみよう。

マイクロソフト5.21% アップル5.09%、アマゾン3.38% アルファベット(グーグル親会社)3.4%・・

ジョンソンアンドジョンソン1.66%などとなっている。

リストアップした銘柄の内ジョンソンアンドジョンソン以外はハイテク銘柄だ(アマゾンをハイテクと見るか小売業と見るかは議論のある問題だが、投資家目線はアマゾンのクラウドビジネスを注目していると判断)。

このことから「不透明な時期にはハイテク株が強いのか?」という結論を引き出す人がいるかもしれない。

それは半分当たりで半分外れである、と私は思う。

外れの部分は何か?というとこれ等の企業は格付的に非常に優良な会社だ、ということだ。

格付が一番高いのはマイクロソフトとジョンソンアンドジョンソンで最上格のAAAだ。米国でAAAの企業はこの2社しかない。いや全世界でAAAの格付を得ている企業はこの2社しかないのだ。因みに日本国債の格付はA+に過ぎない。格付会社は「借りたお金を返す能力」については日本国よりもマイクロソフトとジョンソンエンドジョンソンの方が信用できると判断しているのだ。

アップルとアルファベットはAA+でアマゾンは少し劣りAA-。これはトヨタ自動車と同格だ。

債券格付は債券を発行する場合、その債券の元利払いの確実性の度合いを示すもので将来の株価を示すものではない。だが高い格付は、所属する業界の成長性、業界地位、自己資本の厚さなどを総合的に分析して与えらえる。従って不透明な時期に高格付企業の株式が選好されるのは「安全資産への逃避行動」ということができる。

一国の国民の福利は、国や社会が提供する様々な商品やサービスで決まってくる。米国社会については格差問題等色々な問題があることは間違いないが、一方で資産形成や老後資金の運用を考える人に高格付企業の株式やそれらの株式で構成されるETF(上場型投信)という魅力的な投資ツールを提供している点では素晴らしい国ということもできるだろう。 

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