「ホラーの人」じゃありません。よくある、人の名前が出てこなくなる状態。
昼過ぎ、北大路公子さんのエッセイを読んでいる時でした。「夕日の沈むビーチで、夫のコーイチ(日系三世)とビールを飲み……」などという妄想を書き連ねているところで、あ、この「コーイチ」はあの俳優さんのことだ、と思いました。北大路さん憧れの男性なのです。
で、その俳優が佐藤浩市さんであることは、わりとすぐ思い出せた。同時に、佐藤浩市さんの父親のことも思い出したのですが、その名前が出てこない。顔は思い浮かべることができる。年がいってからの「魁偉」といいたいような容貌も、若い時の、佐藤さんそっくりの二枚目の顔も、浮かんでくる。でも、名前が……。
「佐藤」じゃないんだよなぁ。違う姓で、なんか、こう、堂々たる名前だったんだけど。
イライラするので、家人ところへ行って「ほらあの人――」と訊いてみようかとも思ったのですが、それも癪なので、なんとか自分で思い出そうと努力しました。
数分おきに考えつづけたものの、出てきません。もし出てきたら、今度は忘れないように「佐藤浩市」と結びつける連想法も考えておこう、などと対策も立てようとしたのですが、肝心の名前が……。
2時間あまり経った時でしょうか。台所のストッカーの上に何かを置いた時、ひょいと「三国連太郎」が出てきました。努力してもダメで、何でもない時に、思い出せるんですね。何がどうなっているのやら。
対策は立てました。「佐藤」の「さ」から「3」という数字を思い出し、そこから「三国」とつなげればいい。そういうことにしてありますが、さて、次回、同様のことがあった時には功を奏しますかどうか。