日本語タイトルが「この世の果てまで」となっているアメリカのスタンダードナンバー「The End of the World」は、もともとは1963年にスキーター・デイヴィスが歌ってヒットした名曲。
ちょうどその頃、洋楽とSFに目覚めた私は英語タイトルを見て、「すわ地球絶滅テーマの曲か!」と興奮し、 歌詞を懸命に読んだものでした。そしたら、「貴方がもう私を愛してないのに、なぜ、この世界が続いているのかしら」という、恋に破れた女心を詩的かつ妄想的に歌うラブソングなのでした。
最近、我が家でこの曲のことが話題になったので、スキーター・デイヴィスについて少し調べてみました。
本名、メアリ・フランセス・ピーニック。1931年12月30日生まれで、亡くなったのは2004年9月19日。もっとも有名な女性カントリーシンガーの1人とありました。
スキーター・デイヴィスという芸名は、もともと、ハイスクールで意気投合したベティ・ジャック・デイヴィスらとコーラスグループを組み「デイヴィス・シスターズ」と名乗ったところからきているようです。
デイヴィス・シスターズはRCAと契約し、1953年には「I Forgot More Than You'll Ever Know」という大ヒット曲を発表します。カントリー部門で8週連続1位、ポピュラー部門でもトップ20に入ったというから素晴らしい。ところが、この曲がヒットしているさなか、彼女たちは交通事故に遭い、ベティ・ジャックは死亡、スキーターも重傷を負ってしまいました。
回復したスキーターはベティ・ジャックの妹とデイヴィス・シスターズを復活させますが、うまくゆかず解散、ソロシンガーになります。その後、飛ばした大ヒットが「The End of the World」だったのです。
ということで、デイヴィス・シスターズ時代のスキーターに興味を覚え、代表作「I Forgot More Than You'll Ever Know」を聴いてみました。
これも失恋の曲。恋人を奪った女性に向かって、「あなたなんかより、私の方が……」と、彼を忘れられない気持ちを切々と歌っています。
タイトルは「あなたが知るよりもっとたくさんのことを、私は忘れたわ」という奇妙な意味になりますが、この場合の「忘れた」は「覚えている」という意味なんですね。女心の複雑さというか、どうしても忘れられないけれど「忘れた」と言い張るしかないのでしょう。
伴奏にはチェット・アトキンスがついているといいます。印象的なギター演奏は彼のものでしょう。
歌詞といい、曲といい、演奏といい、なかなかのもの。今回、初めて聴きましたが、すっかり気に入りました。