田辺三菱製薬が昨日から新型コロナワクチン候補の国内臨床試験に取りかかったことが報ぜられました(プレスリリース「新型コロナウイルス感染症ワクチン候補MT-2766の日本における臨床試験の開始について」)。
これを読んでまず驚くのは、「ウイルス様粒子(Virus Like Particle)製造技術を用いた新規ワクチン」である「VLPワクチン」なるものだということ。
説明を見ると、ワクチンから内部の遺伝物質を取り除いた、ワクチンの「殻」のようなもののようです。これなら人間の体内で増殖することはないし、病気も引き起こさない。抗原としての役割のみを果たしてくれるすぐれものに見えます。
次に驚くのは、これが「世界初の植物由来ワクチン」であるらしいこと。しかし、これをどうやって植物で作りだすのか。
ウイルスそのものだとしたら、植物がウイルス病にやられることは市民農園で痛い目にあって、よく知っています。しかし、遺伝情報をもたないVLPを植物の細胞内で増やすことが可能なのか?
悩んでいたら、今回のワクチンの製造法に関する簡単な説明が日経ビジネスWeb版の9月3日付け記事で読めました → 「植物由来のコロナワクチンが最終治験に、まもなく実現か」。これ、実は「ナショナルジオグラフィック日本版」からの転載ですが、元記事は会員でないと読めない部分があるので、助かります。
VLPを増殖させる仕組みのところを見ると、タバコの仲間の植物の苗を「植物への感染力がある土壌細菌アグロバクテリウムを無数に含む液で満たされた容器に浸す」とあります。
で、このアグロバクテリウムには「ウイルスの遺伝情報の断片を組み込んでいる」とのこと。
そして「アグロバクテリウムが植物細胞に感染すると、感染力をもたない抗原であるウイルス様粒子(VLP)を無数に作りだす」というのです。
VLPそのものが増殖するわけではなく、バクテリアがもたらした遺伝情報からVLPが作られるわけなんですね。
まだよくわからない部分がありますが、すこしは理解に近づけたような気がします。
このワクチンは、これまでのところ、新型コロナウイルスに感染した患者の10倍の抗体を生みだすという報告があるとか。無事、実用化されるといいですね。
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