これで、アシモフ・クラーク・ハインラインという「三大SF作家」(彼らが自分たちで決めたのですよ)がすべて鬼籍に入ったことになる。現代SFのひとつの節目でしょうね。
クラークのSFで私が真っ先に思い浮かべるのは短編「太陽系最後の日」。〈SFマガジン〉創刊号に訳載されたのですが、私がSFを読み始めたのはもうちょっと後なので、何かのアンソロジーで読んだと思います。たぶん『SFマガジン傑作選』。
「これこそがSF」という感じは、今でも抱いています。ラストシーンでは武者震いのようなものを覚えました。
長編だと『幼年期の終り』か『都市と星』。
学生時分、『幼年期の終り』は福島正実訳のハヤカワSFシリーズ版と、沼沢洽治訳『地球幼年期の終わり』(創元文庫)の2種類が出ていて、どちらを読めばいいのか迷った記憶があります。結局、福島訳を古本屋で入手して読んだのではなかったかしら。
あと、『グランド・バンクスの幻影』の文庫版には解説を書かせてもらいました。
科学ノンフィクションも忘れ難いのです。『未来のプロフィル』が代表作でしょうが、私の場合、ライフ・サイエンス・ライブラリーから出た『人間と宇宙の話』が記憶に残る1冊。確かコンパクト版が出てすぐに入手したので1967年でしょうか。高校1年の時かな。この宇宙に人間が存在する意味、人類が地球から飛び出す可能性などを考えさせられ、ゾクゾク、ワクワクしました。本文、図版、引用文まで、飽きずに何度も読み返したものです。
スリランカ移住に関してはスキャンダルめいたことも報じられましたが、真相はどうだったのでしょう。いずれにせよ、作家としての名声にさほど影を落とすものではないと、個人的には思います。
享年、90。よくぞ今まで同じ地球上にいてくださいました。合掌。