金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

今日は事前投票に行こう

2014年12月12日 | 国際・政治

日曜日は朝から出かける用事があるので、今日事前投票に行く予定だ。

投票先は自民党の予定だが、このことは必ずしも自民党が掲げる総ての政策に無条件で賛成していることを意味しない。国家の基盤である安全保障問題や政策遂行能力を考えると他に選択肢がないというだけの話である。新聞の世論調査によると与党が300議席を確保する勢い、という予想だが、与党に投票するという多くの人はこのような思いを持っているのではないだろうか?

仮に与党が大勝すると、自公政権は4年続く可能性が高いが、今回の投票で与党にフリーハンドを与えたくないという思いは残る。今の日本の選挙の仕組みでは、政治家が選挙民に顔を向けるのは選挙の時だけだ(日頃から選挙民との対話を重視している政治家もいるとは思うが)。

選挙以外の時、多くの政治家は選挙民ではなく、所属する党を見ていて、党が決めた政策をフォローしているに過ぎない。

私はこの仕組みを変えないといけないと思う。簡単にいうと一党が掲げる総ての政策・法案を無条件に丸呑みするには、選挙民の思いは多様化し過ぎているので、それに対応した政策・法案決定の仕組みを考える必要があるということだ。簡単にいうと各党の「党議拘束」をもっと緩やかにして、重要な問題については超党派的な決議を行う仕組みを取り入れることだ。この時選ばれた議員がしなければならないことは、党の意見に従うということではなく、自分を選んでくれた選挙民の意見を国会に反映するということなのだ。

選挙公報などを見ると各党の主張は「あれもする・これもする」とバラ色の話が多いのにもうんざりする。「あれもする・これもする」には、必ず財源負担や既得権益者の利益侵害を伴う(経済の高度成長時には、経済成長で吸収できた面があったが)。だが各党の主張には痛みとそれに対する対応策の話が見えてこない。

たとえばいわゆるアベノミクスの第三の矢といわれる「構造改革」とは、簡単にいうと、もっと競争原理を高めて、生産性の低い分野や企業の排除を行うというもののはずだが、経済成長というオブラートに包まれて、焦点がぼけている。今日の世界を概観すれば、どこかの時点で傷みを伴いながら、競争原理を高めた国が国際競争力を保ち、そこそこの経済成長を維持しているので、競争原理の強化がポイントであることは間違いないのだが。

もう一つのポイントは「個人の選択肢を広げ、個人の生活を重視した国」が結局生産性を高め、経済成長を維持していることが多いという事実に着目することだ。

巷間「競争原理」と「個人の生活重視」は対極だとするような意見を見るが、私はそれは相矛盾するものではなく、経済と国民政策の持続的な発展の両輪であると考えている。

安倍政権の長期政権持続戦略のため、急に行われることになった解散総選挙。与党の勝利は間違いないとして、与党に投票する人は、構造改革に伴う痛みを甘受することまで含めて、与党にゴーサインを出すのだろうか?

 

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【イディオム】Beyond the pale 日中雪解けの兆し

2014年10月06日 | 国際・政治

安倍首相が11月に北京で開催されるAPEC会議に出席し、習近平主席と会談する可能性が高まっている。エコノミスト誌はEdging closerという記事でこの話題を取り上げていた。

記事の中に次の一文があった。Until now, China has considered Mr Abe beyond the pale because of his visit last December to Tokyo's imperialist Yasukuni shirine.

「今にいたるまで中国は、昨年12月に東京の帝国主義的な靖国神社を参拝した安倍首相を不穏当で受け入れ難いと考えてきた」という意味だ。

Paleは一般的には「青ざめた」という形容詞で使われることが多い。You look pale. Are you all right?と言えば「顔色が悪いけれど大丈夫?」という意味だ。

Beyond the paleのPaleは「限界、範囲」という意味の名詞として使われている。Beyond the paleには、社会規範や道徳規範を越えていて受け入れ難いという意味がある。

景気の減速が鮮明な中国にとっては、今年に入って日本からの直接投資が4割方減少しているのは頭に痛い話だし、消費税再引き上げの可否判断を控えている日本にとっても中国との緊張緩和は歓迎すべき話だ。もっとも緊張緩和が簡単に進むとは考えにくいが、糸口を作る意味は大きい。

ところで靖国神社が帝国主義的であるかどうかは、日本国内ではcontroversial(議論の多い)な問題だが、エコノミスト誌のような世界的に権威のある雑誌が帝国主義と断定していることには留意しておいた方が良い。現在では帝国主義はbeyond the paleだからだ。

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【イディオム】a good-faith effort 香港の抗議活動

2014年09月30日 | 国際・政治

民主的な選挙を求める抗議活動が拡大している香港。その行方はどうなるのか?

WSJのChina President Xi Jinpin faces stark choices over Honk Kong protestsの中に、次の一文があった。

But the chance of a Tiananmen-like response is remote,and the govenment pulled back riot police on Monday as a good-faith effort aimed at diffusing the tention after widspread global criticism of the weekend's tear gas.

「週末の催涙ガス使用に対する国際的な批判の後、緊張を緩和するため月曜日に中国政府は正当と評価される努力として治安警察を引き上げたので、天安門のような(流血の惨事が起きる)ことが起きる可能性は遠のいた。

diffuse(拡散する)はdefuse(緊張を和らげる)の誤用ではないか?と推測して、上記に訳した。

さてa good-faith effortだが「目標の達成に向けて行う正当と評価される努力」という程度の努力で、best effort(最善を尽くす努力)やreasonable effort(ある状況下において合理的な人間なら行ったであろう努力)よりは、頑張り度合いの低い努力と解されている。

香港の民主的な選挙を認めるか抗議活動を抑え込むか?というのは、習政権にとってタフな選択だ。自治権の拡大を認めると、中央政府に対する抗議活動がチベットや新疆ウイグル自治区で拡大する可能性が大きいし、ハードポジションをとると「香港をモデルとする」と言及している台湾の人々に懸念を抱かせるからだ。

10月1日の国慶節に向けて抗議活動がさらに活発化すると予想される香港。梁振英行政長官の辞任が落としどころになるのだろうか?

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世界は中国が米国を凌駕すると見ているか?

2014年07月17日 | 国際・政治

2日続けてPew Research Centerの調査から中国に関する見方の部分を紹介してきた。これらの記事に対するアクセスは結構多く、中国問題への関心の高さを改めて認識した次第。さて今日は「世界の国々は中国がやがては米国を凌駕するか/(あるいは)既に凌駕していると考えるか」China will eventually replace/ has replaced U.S. as superpower vs China will never replace U.S. as superpowerという調査についてポイントを紹介したい。

まず全世界の中央値を見ると、49%の人は「中国は将来スーパーパワーとして米国を凌駕するだろう/(あるいは)既に凌駕している」と見ていて、「中国が米国を凌駕することはない」と見ている人34%を超えている。

地域的には「中国が米国を凌駕する」と考えている人が多いのは欧州で、60%の人が中国が凌駕すると考え、凌駕しないと考える人は33%にとどまる。逆に中国が凌駕すると考える人が少ないのはアジアで、中国が凌駕すると考える人は42%にとどまり、凌駕しないと考える人は36%いる。

米国人の49%は中国が米国を凌駕すると考え、45%は中国が米国を凌駕することはないと考えている。

中国人自身がどう考えているかというと59%は中国が米国を凌駕すると考え、凌駕することはないと考える人は20%にとどまる。

アジアで中国が米国を凌駕することはないと考える人の割合が多いのは、離島の領有権を巡って緊張が高まっている日本、ベトナム、フィリッピンで「中国が米国を凌駕することはない」と考える人の割合が非常に高いからだ。

日本では69%の人が「凌駕することはない」と考え、「凌駕する」と考える人は26%にとどまる。ベトナムは「凌駕しない」69%「凌駕する」17%、フィリピンは「凌駕しない」74%「凌駕する」17%だ。

韓国では「凌駕する」49%「凌駕しない」49%が拮抗している。

インドでは「凌駕する」33%「凌駕しない」19%だがその隣のパキスタンでは「凌駕する」50%が「凌駕しない」9%を圧倒している。

アジア諸国の人々の「中国が米国を凌駕する/しない」の判断は、「中国を好意的に見るか・批判的に見るか」と相関関係が高い。たとえば日本では中国に批判的(unfavorable)な人が91%を占める。同様にベトナムでは78%、フィリピンでは58%の人が中国に批判的だ。インドは好意的39%、批判的31%が拮抗するが、その隣のパキスタンでは78%が中国に好意的で批判的な人は3%にとどまる。

Pewは言及していないが、私はアジア諸国の人々の「中国が米国を凌駕する・しない」の判断は「凌駕して欲しくない・欲しい」という願望に強く影響されていると判断している。

客観的に見ると為替レート基準では、中国のGDPは9.33兆ドルで米国の16.72兆ドルに較べるとかなり小さいが、購買力平価基準で見ると13.39兆ドルとかなり米国に迫っている(CIA factbookによる)。

仮に今後の中国の経済成長率7%、アメリカの成長率を2%とすると、単純計算では4.6年後に購買力平価ベースでは、中国と米国のGDPはそれぞれ18.3兆ドルと等しくなる。

また為替レートベースでも12.2年後には米中のGDPは拮抗するというのが単純計算だ。

12年先のことは分らないにしても、4-5年先に中国のGDPが購買力平価ベースで米国と肩を並べる可能性は高いとはいえるだろう。

ただしそれはGDPのサイズで中国経済が米国経済と肩を並べるということで、それを持って中国がアメリカを凌駕してスーパーパワーになるとか、リーディングエコノミーになるのかということについては、疑問が残らない残らない訳ではない。

その一つの理由は「何をもってスーパーパワーというのか」「何をもってリーディングエコノミーというのか」という問題である。リーディングという言葉に関していうと、リーディングカンパニーという言葉がある。リーディングカンパニーは業界を牽引する会社でそこには「模範的な」という形容詞がつけられることが多いはずだ。同様にリーディングエコノミーと言う場合に世界を牽引する模範的な経済(モデル)という意味を持たせるなら、中国がリーディングエコノミーになるかどうかは議論のあるところだろう。

もう一つの理由は「持続性」である。つまり社会インフラが未整備な一方急速に高齢化が進む中国経済がトップランナーの地位を保てるかどうかという問題である。

これらの問題を中国に対する好き嫌いを離れて、じっくり見る必要があるのだろう。

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世界は安倍首相と習主席をどうみているか?

2014年07月16日 | 国際・政治

最近Pew Research Centerが発表したGlobal Opposition to U.S.Surveillance...の中に中国の習近平国家主席を世界の人々はどうみているか?という世論調査の結果がでていた。Pewは日本の安倍首相に対する同様の調査結果も発表しているので、並べてみてみることにした。

質問内容は次のとおりだ。

Confidence in Xi (習)/ Abe(安倍)to do the right thing in the world affairs

「国家間の問題について習主席/安倍首相は正しいことを行うかどうかの信頼」

回答の一部をまとめてみた。

米国

習主席     信頼できる 28%  信頼できない58%  不明 14%

安倍首相    信頼できる 49%  信頼できない35%  不明 17%

中国

習主席     信頼できる 92%  信頼できない5%  不明 1%

安倍首相    信頼できる 15%  信頼できない70%  不明 14%

韓国

習主席     信頼できる 57%  信頼できない37%  不明 5%

安倍首相    信頼できる 5%  信頼できない94%  不明 2%

日本

習主席     信頼できる 6%  信頼できない87%  不明 7%

安倍首相    信頼できる 58%  信頼できない40%  不明 2%

インド

習主席     信頼できる 13%  信頼できない25%  不明 62%

安倍首相    信頼できる 21%  信頼できない16%  不明 64%

ベトナム

習主席     信頼できる 31%  信頼できない49%  不明 20%

安倍首相    信頼できる 65%  信頼できない9%   不明 26%

習主席の調査結果についてPewは次のようにまとめている

  • 就任後1年強の習主席は今のところ世界の人々に強いポジティブな印象を与えることに失敗している。全体としては彼の印象はポジティブというよりネガティブだ。そして彼について知らないという人が多い。
  • しかし幾つかの近隣国で高い信頼を得ている。韓国(信頼57%)、マレーシア(同54%)、タイ(同52%)などだ。
  • 欧米、中東、南米においても習主席に対する信頼は低い。
  • アフリカにおいては南アフリカ(信頼29%信頼できない34%)をのぞいて、信頼が信頼できないを上回っている。

また安倍首相の調査結果は次のとおりだ。

  • 全体としては「そこそこ」ポジティブな評価を受けている。「そこそこ」の原文はfairlyだ。Fairというのは「公平」という意味だが、評価の形容詞としてはぎりぎり合格点というニュアンスではないか?と私は感じている(理由 米連銀の検査を受けたことがあるが、fairは合格の中の最低レベルだった)。このあたりのニュアンスは難しい(筆者注)。
  • 米国人の49%は安倍首相の国際的なリーダーシップを信頼し、35%は信頼していない。
  • ちなみに安倍首相を信頼しない人が多かった国は中国(信頼しない70%)韓国(同94%)の2か国だけだった。

「彼を知り己を知れば百戦危うからず 彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必負す」(孫子 謀攻第三)

現代における彼を知るというインテリジェンスの基本は、その国の人々の世論を知ることだろう。米中の力が接近していると言われているが、Pew Research Centerのような調査機関を持つ米国はインテリジェンスの点ではまだまだリードしていると私は思う。

★   ★   ★

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