3日間の予定でネパールを訪問しているボコバ・ユネスコ事務局長が、ユネスコの支援で運営されているコミュニティ学習センターを訪問し、大歓迎を受けた。また生涯学習センターのオープニングセレモニーで同事務局長は「学習センターは女性に識字能力を与えるだけでなく、権利と尊厳を理解を促進する」と述べた。
また同事務局長はユネスコ・国連人口基金・国連の共同プログラム「包括的な性教育と安全な学習環境を提供することで未成年の少女と若い女性に活力を与えるプログラム」を発足させた。同事務局長は「少女に活力を与えることは家族と地域社会に活力を与えることである」と述べた。
またネパール教育相ポークヘル?Pokhrel氏は「ネパールが共和制を宣言して以来、総ての教育機関は再編される必要があり、国際機関のサポートが必要である」と述べた。
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以下は私が小学校校舎寄贈のためにネパールを訪問した時の印象を含む感想・意見である。
私が属するNPO法人ヘルプ・ネパール・アソシエーションは20校以上の小学校の建設資金を提供し、校舎を寄贈している。
ただし校舎を寄贈した地域は比較的カトマンズやポカラ等大都市に近い地域で、相対的に経済力がある地域である。
これらの地域を訪問して感じたことは、家族や地域が子どもの教育に熱心だということだ。CIA factbookによると、ネパールの児童で働いているものの割合は34%に達する(水汲み等の家事労働に従事している子どもが多い)が、私が見た限りでは家族や地域は子どもの就学に力を入れていたようだ。
本当のネパールの教育問題は、大都市周辺部ではなく、もっと児童の労働を必要とする僻地も見ないと分らないかもしれない。
Factbookによると、ネパールの男性の識字率は76.4%で女性のそれは53.1%だ。女性の半分は字が読めないということだ。
またネパールでは英語教育に力を入れているが、その結果若者の中には、ネパール語の読み書きが出来ない人が増えているという話を聞いた。
「会話はできるが書くことができない」ということは、例えば海外の学校や職場に行ったネパールの青年の中には、故郷の家族(特に英語が読めない高齢者の方)との手紙のやり取りがままならないということを意味する。
国内産業が弱く海外に職場を求める必要があるネパールでは英語教育は必須だが、片方で自国語の読み書きができない若者が増えているという問題もあるようだ。
ネパールは貧しい国だが、GDPの4.7%を公的教育費に使っている。参考までに調べてみると日本の公的教育費のGDP比率は3.8%だった。
公的教育費のGDP割合の世界ランクでみると、ネパールは87位で日本は115位だった。
デンマーク8.7%(世界ランク8位)、スウェーデン7.0%(同20位)など高負担・高福祉の北欧諸国の公的教育費の割合が高いのは、当然だが、米国でも公的教育費の割合は5.4%(同63位)である。
就学児童数の割合に差があるにせよ、日本の公的教育費は対GDPで見てかなり低そうだ。余談ながら。