WSJに日本のシニアや多くの企業経営者そして政治家などが羨ましくなる話が出ていた。それは「高齢者の消費支出が景気を底支えしている」という話だ。
記事は「連銀が政策金利を上げ続ける中で何故消費支出は活発なのか?重要だけれどあまり評価されていない理由がある。それは消費者が高齢化しているということだ」と述べる。
昨年米国の65歳以上の人の消費種出は個人支出の22%を占めた。これは1972年に記録が始まって以来もっとも高い水準だ。
2010年の65歳以上の人の割合は13%で、この8月には17.7%に増加している。2010年の65歳以上の消費支出は全体の15%だった。
65歳以上の人の構成比の伸びよりも、消費支出のシェアの方が大きいから、高齢者層の支出が相対的に拡大していると考えてよいだろう。
なぜアメリカの高齢者の消費は伸びているのか?
記事は次のように分析している。
「それは高齢者が健康で、豊かで、そして多分長引くパンデミックの心理的な効果である。」
記事は66歳の不動産ブローカーのコメントを紹介している。
「人生を通じて貯蓄に励んできた。お金は銀行にある。私は今それを友だちや家族ともっと親しくするために使っている」「コロナで100万人のアメリカ人が死んだ。そのことは生きている時間を無駄にしないという教訓になっている」
消費者行動の専門家は「シニアのライフスタイルは劇的に変化している。彼らはかってないほどアクティブだ」「彼らはe-バイクに乗り、ハイキングをし、旅行を行っている。またシニアがそれらの活動を続ける期間は以前より長くなっている」
高齢者の家計支出は1982年に比べ34.5%増えている。これは若年層の16.5%よりはるかに多い。
高齢者の消費支出は、金融政策や景気変動の影響を受け難いと考えられている。何故なら高齢者は、借金が少なく、自宅を所有していることが多いからだ。またソシアルセキュリティと呼ばれる公的年金は完全物価スライド制なので、昨年は8.7%増加し、物価上昇を吸収した。
☆ ☆ ☆
平均的にみるとアメリカのシニアも日本のシニアもそこそこお金を持っている人が多く、自分のライフスタイルを貫くためにお金を使おうと思うと使えるはずだ。だがアメリカのシニアに比べて日本のシニアの方が財布の紐は固そうだ。
その違いはどこから来るのだろうか?以下は私の勝手な推測だ。
一つは「生き方に対する考え方の違い」だ。アメリカ人は旅行でもスポーツでも、年齢を気にすることなく、体が動く限り自分でやりたいことをやるという人が多い。一方日本人は、もう年だからなどと自分で自分に枠をはめる人が多いのではないだろうか?
パンデミックに対する考え方も違うだろう。日本人は感染すると嫌だから出歩くことを抑制しようと考える人が多そうだが、アメリカ人はいつ何が起きるかわからないから、元気なうちにやりたいことをやっておこうと考える人が多そうだ。
公的年金が完全物価スライドするアメリカとマクロスライド制で年金がインフレ負けする日本ではインフレ時の年金受給者の消費者マインドに大きな差がでる。
最後には相続人からのプレッシャーも違うだろう。日本では子どもたちが「親爺、贅沢しないで俺たちに財産を残してくれよ」とプレッシャーをかけるのに対し、アメリカでは「親爺、あんたが稼いだお金がから好きに使って悔いのない人生を送ってよ」というのではないか?
もちろんこれは個人差のある話で、マクロ的にみるとこんな傾向があるだろうという私の推測である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます