ウクライナに侵略してから1カ月。ロシアの作戦変更が明確になってきた。ロシアの作戦本部長セルゲイ・ルドスコイ将軍は「当初の作戦目標を達成したのでドンバス地方の解放に注力する」と述べている。ウクライナ領のドンバス地方はロシア系の住民が多く、独立を求めて抗争が続いてきた地域だ。この地域で争いの焦点になっているのがマリウポリだ。ロシアがここを押さえると親ロシア色が強いドンバス地方とロシアが違法に合併したクリミア半島が回廊のようにつながる。
西側有力紙は、ロシアはウクライナのゼレンスキー政権を打倒し、新ロシア政権樹立を目指してウクライナに侵略したが、この戦略目的を達成する見込みが遠のいたので、ドンバス地方の解放に戦略目的を変えたと報じている。
米国やNATOの軍事専門家の分析によると、キーウ(キエフ)を包囲していたロシア軍がウクライナ軍に押し戻され退却が続いているということだから、ロシアが達成可能性が高い戦略目標にゴールを下げたことは十分考えられる。つまりプーチンが国内向けに戦争に勝ったという面子を守るためにだ。
ゴールを下げたので停戦交渉のハードルが下がると推測できるが、ウクライナがドンバス地方の事実上の独立を認めるかどうかは分からない。
ロシアとウクライナの直接交渉だけではなく、ウクライナの後ろにいるNATOやアメリカが手打ちに向けてどのように動くかも分からない。
結局分からないことだらけなのだが、はっきりしていることは、今回のロシアのウクライナ侵略が当初の戦略目的を果たせなかったので失敗だったということだ。
ただしプーチンにも面子というものがある。プーチンの面子を立てながら落しどころを探るか、あるいはクーデターで彼が放逐されるまで追い込むかはアメリカやNATOの判断による。
「窮鼠猫を噛む」とか「囲師は周するなかれ」という言葉もある。徹底的に相手を追い込むと死に物狂いで向かってくるので、逃げ道をあけておいた方が良い、逃げ道があると敵はそこから落ち延びて自滅するという教えだ。
私がNATOの軍師であればここは一旦プーチンの面子を立てる落しどころを探し、ロシアの自壊を待つ戦術を取りたいと思うがさて現実やいかに?
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