WSJにJapan skirts immigration debate by offering 'Internships' to foreignersという記事が出ていた。
「日本は移民政策に関する議論を外国人技術実習制度を見直すことで避けている」という趣旨だ。
Skirtというと女性がはくスカートをまず思い出すが、スカートには「周辺」という意味もある。動詞としては「端を通る」とか「(困難な問題を)避けて通る」という意味がある。
記事の中に次の一文があった。
Rather than increase immigration, the government is turning back to an 'internship' program that U.S. and others have criticized as fraught with human-rights abuses.
Turn back toは「元に戻る」、fraught withは「伴う、沢山の」というイディオムだ。全体としては「日本政府は移民を増やすよりも、米国や他の国が人権侵害を伴うと批判を続けてきた外国人技術実習制度に戻ろうとしている」という意味だ。
日本の外国人技術実習プログラムには、今のところ「介護」は入っていないが、今年1月の有識者懇談会の報告を受けて、政府が「介護」を実習プログラムに加えようとしていることに対する先制パンチと思われる。
介護者については2025年までの向こう10年で70万人の増加が必要と推測されるが政府は、30万人の介護者が不足していると推計している。そしてその一部を外国人実習生で補おうとしている。
介護職は、重労働の割りに報酬が低いので、日本人で職に就こうという人が少ない。一方多くの日本人は移民拡大には反対している。そこで政府は外国人実習生制度を使って、本質的な問題を避けて通ろうとしていると記事は批判している。
政府が経済連携協定に基づき、インドネシア・フィリピン等から介護・看護職等を受け入れを2008年から始めてきたが、日本語の試験がハードルとなって外国人が国家試験に合格する割合は極めて低い(看護師の場合、日本人の合格率は9割、外国人は1割程度)。
国はこれまで数十億円の納税者の資金をつぎ込んできたが、費用対効果の点では失敗と言わざるを得ないだろう。
国としてまず考えないといけないことは、介護職の報酬を引き上げて職に就こうとする日本人を増やすことなのかもしれない。
話は変わるが、昨日(4月15日)は米国の確定申告の期日。この日にターゲットを当てて、全米規模で外食産業就労者等が「最低時間給を15ドルに引き上げて欲しい」というデモ行進が行われた。これは現在の最低賃金の倍の水準だ。
この15ドル運動は2年ぐらい前から行われていると記憶しているが、格差の問題に関心が高まる中、かなり広範な人の共感を呼ぶようになってきたようだ。
最低賃金の引き上げが、米国大統領選のホットな論点になるかどうかは分らないが、候補者たちにとっても無視できる問題ではなくなりそうだ。15ドル運動のスローガンはwe are human beings" "They exploit people worldwide to make money"というものだった。「我々は人間だ。彼ら(企業)を利益をえるために世界中で人々から搾取している」という意味だ。
日本の外国人研修制度を外国人からの搾取だと批判した米国のメディアが、外食産業就労者たちの要求にどのような評価を与えるのか興味深いところである。
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