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山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

古くても新鮮宇野浩一郎の「味の旅舌の旅」

2022年06月21日 | ライフプランニングファイル
 時々ぷらっと図書館の新規購入本コーナーに行き、目にとまった本を借りることがあります。最近目にとまって読んだのが宇野浩一郎の「味の旅舌の旅」という本でした。初版は今から40年以上前の1980年に出版され改訂版は今年の2月に発行されました。
 宇野さんは芥川賞作家なのですが、受賞作品(「鯨神」)は読んだことはなく、私の場合は読んだのはもっぱら駅売りの夕刊紙の小説という体たらくでした。
 従ってこの「味な旅舌の旅」は初めて読む宇野さんのまとまった本なのですが、これが滅茶苦茶に面白いのです。40年以上も前の旨いもの食べ歩きのエッセー集なのですが、実に新鮮で臨場感があります。なぜ新鮮で臨場感があるのか?ということを考えてみるとそれは宇野さんの生き方そのものが自由でかつ本格的である意味妥協がないことによるということが分かりました。
 その答は改訂版に収録された「男の中の男は料理が上手」というエッセイの中にありました。幾つかのポイントを紹介したいと思います。
  • 私は子供のときから現在まで、鉄道模型製作、ヨット、ブリッジ、古典音楽、スキー、ゴルフ、狩猟、ダンス、建設設計と色々な趣味に耽溺したが、最後に残った趣味が建築と料理である。この二つは、いわば究極の道楽である。
いや宇野さんの趣味の豊富さは半端ではありませんね。一時原稿料が日本で一番高い作家といわれたこともあるそうですから、豊富な趣味を極める財力にはこと欠かなかったのでしょうが、これだけの趣味を極めるとなると体力・知力とも尋常ではありません。
 「今更ヨットや狩猟とはいかなくても料理位ならなんとか・・」と思うシニア諸氏もいらっしゃるかもしれませんが、宇野さんが説く料理道は甘いものではありません。
 宇野さんはフランス料理は料理方法が特に易しいというのですが、準備は半端ではありません。
  • 素人が料理に挑戦するに当たって心すべきは、まず服装である。必ず必ずノリのきいた帽子、コート、エプロンを着用せねばならない。・・・・何の芸道でもそうだが、まずは形から入るというのは、料理には特に必要である。
なぜ宇野さんが形にこだわるかというと、日本では古来料理は主人自ら作り、客に奨めたものだったからです。

 また宇野さんの言葉は医者から食事指導を受けている人の耳には叛旗の雄たけびのように聞こえるでしょう。
  • (自分で)作った料理は、すべて飽食し、鯨飲すべきである。医者の忠告に耳を傾ける必要はない。そもそも医者の言うことは風の中の羽のようにいつも変わるのである。
  • 医者の言葉に耳を傾けるより、自分の体の要求に注意を払うことが必要である。・・満腹するまで食べても、酔いつぶれても、少なくとも医者のくれる山ほどの薬を全部飲むより、健康に害はないはずである。
うーん、ここまで言いますか。
この本の巻末には近藤サトさんと宇野さんの対談が載っています。ここで宇野さんが言っているのは「酒と女と歌を愛さぬ者は、生涯馬鹿で終わる」(ヨハン・シュトラウス二世の「酒、女、歌」の歌詞から)です。
 いやー実に自由奔放。
 今87歳の宇野さんが再脚光を浴びていると話を耳にしましたが、自由闊達しかも手掛けたことは極め尽くす生き方に惹かれる人が多いということでしょうね。

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