金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

モーゲージ買取機構案、本格化

2008年09月19日 | 金融

米国で金融機関が抱えるモーゲージ(住宅ローン債権)を買い取る政府機関を設立する動きが加速している。これはS&L危機の時に設立されたRTCに似ているのでここでは仮に新RTCと呼んでおこう。

ニューヨーク・タイムズによると新RTCを設立する法案を国会が閉会になる来週末までに成立させるのが、財務省・連銀・関係議員の目標だというから、大変なスピード感だ。新RTCの詳細はこれから詰められるが、銀行や他の金融機関が保有する不良債権化したモーゲージをディープ・ディスカウントで購入するために巨額を資金を持つことになる。これは米国史上最大の政府による救済である。

「今我々が作業していることはシステミック・リスクと資本市場のストレスに対処する方法だ」とポールソン財務長官は述べる。システミック・リスクとは「個別金融機関の支払不能や特定市場あるいは決済システムの機能不全が金融システム全体に波及するリスク」(日銀)だ。つまりモーゲージの買い手が不在になっていてそれが世界の金融市場に重大な影響を与えているので、米国政府がモーゲージ買取機構として新RTCを設立するという訳だ。

昨日連銀は各国中央銀行と連携して1,800億ドルのドル資金を供給すると発表した。しかしマーケットの反応は芳しくなかった。これを見てポールソン財務長官とバーナンキ連銀議長は新RTCを作るしかないと考えた。これを株式市場は好感し、ダウは過去6年間で最大の410ポイントの上昇となった。

ニューヨーク・タイムズは株価が急上昇したのは民主党のSchumer上院議員が「連銀と財務省はもっと包括的な解決策を実現するべきだ。」として独自の案を発表した後だという。

議員選挙を控えて、国会はまもなく閉会するので、議案作りと審議には一週間しかない。しかし私は彼等はやるだろうと考えた。もしこの法案が成立すると株式相場は底入れになる・・・・と判断して、今日少し東証コア30ETFを買ってみた。これは短期勝負だが。

「知ることの難きにあらず。知に処すことは難きなり」というのは韓非子の言葉で「知ること自体が難しいのではない。知っていることをどう利用するかが難しいのだ」という意味だ。これを投資に当てはめるなら「市場の動きや情報を知ること自体は難しくない。情報を判断して投資行動に移すことが難しい」ということである。

来週の相場を楽しみにしていよう。

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中国投資公司、モルガンに出資か?

2008年09月19日 | 金融

今のアメリカの金融市場を見ていると下手なドラマよりドラマチックだ。私のブログで今週は最も劇的な週になるだろうと予想したが、その時点では名門モルガン・スタンレーが、どこかの軍門に下るとは予想していなかった。しかしどうも、外部資本を注入しないと持たない状況になってきた。

ファイナンシャル・タイムズによるとモルガン・スタンレーは株式を最大49%までCIC (China Investment Corp 中国投資公司 中国の外貨準備金を運用するソブリン・ウエルス・ファンド)に譲渡するという交渉を始めている。(CICは昨年既にモルガン・スタンレーの株式を9.9%保有している。49%がこの9.9%を含むのかどうかは新聞記事からは明確には読み取れなかった。)

モルガン・スタンレーは既にワコビア銀行から、買収提案を受けているが弱体化しているワコビアに買収されても生き残れないと判断したのだろう。

CICのGao Xiqing(高西慶)社長は、あるプライベート・エクイティが催すカンファレンスに出席するため渡米しているが、情報筋によるとモルガン・スタンレーのマックCEOと合う予定になっている。

このように見てくると、モルガン・スタンレーがCICの資金を受け入れる可能性が高そうに見えるが難問もある。まず米国を代表する名門企業が、中国の国家そのものともいえるソブリン・ウエルス・ファンドに買収されることに対する米国政府や国民の反対意見だ。

CICから見た場合の問題は投資リターンだろう。昨年来米国の金融機関の資本増強に応じてきた中東などのソブリン・ファンドは原油高で運用資産を一層膨らましたにも関わらず、今回は金融機関の増資要請に応えようとしていない。それは株安や信用収縮で金融機関の株式よりももっとリターンの高い投資先があることと、米国金融機関のエクスポージャーが積みあがっているからだ。

このような状況下CICがどのように判断するか注目しておきたい。それにしても誇り高いインベストメント・バンカーは中国資本の下でもちゃんと働くのだろうか?ということも気になる問題だ。

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