金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

【後妻業の女】大竹しのぶ・豊悦熱演のピカレスク(悪徳映画)

2016年09月20日 | 映画

昨日(9月19日)ワイフと「後妻業の女」を観にいきました。「シン・ゴジラ」にするか「後妻業」にするか迷ったのですが、ワイフの希望を尊重して「後妻業」を選択。雨の3連休。遠出をあきらめた人たちで映画館のある武蔵村山イオンモールは混んでいました。2,3か月ぶりにここの映画館に来たのですが、券売所が大部分自販機に変わっていました。

「後妻業の女」(公式サイト http://www.gosaigyo.com/)は、再婚願望を持つ高齢資産家を狙って大竹しのぶ演じる後妻業のエースとそれを裏で操る結婚相談所所長(豊川悦治)が中心となって繰り広げるピカレスク(悪徳小説・映画)です。

登場する人物はほとんどワル。後妻業はいうに及ばず、後妻業の真相を暴くため嗅ぎまわっていた探偵も金目当てのワル。その他小さなワルが跋扈します。

ワルは結局最後まで生き延びる。「天網恢恢疎にして漏らさず」の真反対で中国の春秋時代を跋扈した大盗賊・盗跖の現代版のような話です。盗跖は天寿を全うしたばかりか、説教に来た孔子を論破したという話があります。

映画を見終えた後、正義感?のワイフは「ワルが生き延びて栄えるなんてスッキリしない映画ね」と感想を述べていました。ワイフの好きな刑事ドラマでは、ワルは最終的に捕まるのですが、実社会では必ずしもワルは捕まりません。

映画の中で「警察は週刊誌が取り上げて動く」というセリフが出てきます。マスコミ沙汰にならないワルの中には悪事を重ねるケースも多いでしょう。

特に相続がらみでは「法律上犯罪かどうかグレー」程度の領域で、消費者の無知・欲望・恐怖心を操った悪徳商法が跋扈しているのが気がかりですね。

娯楽映画ですから、特に教訓を引き出す必要などなく、大竹しのぶや豊川悦治の熱演を楽しめばよいと思います。

ただし多少何かを考えるとすれば、社会的に成功し、人間力を持っていると思われる被害者(後妻を迎える高齢者)も、己の色欲に迷い、後妻の毒牙を見抜くことができなかったということ、高齢化社会はワルがはびこる余地が多いということでしょうか?

 


 

 

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【書評】「沿線格差」~軽い読み物として面白い

2016年09月18日 | ライフプランニングファイル

1週間ほど前に「沿線格差」(首都圏鉄道路線研究会 SB新書 820円)という本を新聞の書籍広告で見かけたので買って読みました。最近は「格差」という言葉が流行っているので、首都圏の主な鉄道路線を評価したこの本にも「格差」という言葉が使われたのでしょう。

この本では首都圏の主な鉄道路線18線を「乗客増加率」「遅延回数」「混雑率」「ブランドタウン保有率」などの項目から採点し、総合順位をつけています。

格差の中で「所得格差」などはシリアスな問題ですが、鉄道の「沿線格差」の話はもっと気軽に楽しめる話です。

というのはこれから土地を買ってアパート経営をするなど特別な目的がなければ、沿線の格差は住宅を選ぶ上でそれ程重要な指標ではないと私は考えているからです。

恐らく多くの人は住まいを選ぶときに、職場や学校へのアクセスの良さをまず第一に考えると思います。次に同じようなアクセス圏の中で、「賃料」「価格」やターミナル駅・商業施設・娯楽施設へのアクセスの良さを考えながら、鉄道路線を選び、昇降する駅を選んでいくと私は思います。

つまり「路線格差」は職場や学校を選択した結果という要素が多いと私は考えています。

もっとも通勤も通学もする必要がない、好きなところに住むことができるという人の場合は純粋に「沿線格差」の高いところを選ぶことも可能です。経済的余裕があれば話ですが。

個人的な話ですが、私が住んでいるところは西武新宿線の町です。西武新宿線の総合順位は18の中の15番目。この本の中では「可もなく不可もない私鉄の平均路線」というサブタイトルで紹介されています。早稲田大学に通う学生さんが比較的多いのが特徴の路線ですが、沿線の駅にはそれほど洒落たお店はあまりありません。

私は「沿線格差」の切り口として「スターバックスなど洒落た喫茶店がある」「スーパーなどで売られている牛肉のボリュームゾーンの価格が高い」など消費レベルの格差が「沿線格差」の一つのメルクマールになると考えています(この本ではその切り口はない)。

この消費レベルの切り口から見ても、西武新宿線は南を走る中央線に比べると相当見劣りがします。

では西武新宿線にメリットがないか?と言われると私の場合、大きなメリットがあります。それは「近郊の山へのアクセス」が良いことです。

まず奥多摩方面には小平駅から分かれる拝島線(西武新宿から直通電車も多い)で拝島に行き、そこでJR青梅線・五日市線に乗り換えることができます。また所沢駅で西武池袋線に乗り換え、秩父方面に行くのにも便利です。

北アルプス方面に向かう中央線へのアクセスには新宿線・中央線を結ぶバスや多摩都市モノレール(立川=玉川上水)を使います。中央線の方が便利なことは間違いないのですが、私が自宅を買った頃、同じ通勤時間圏では中央線の物件は高すぎて手が出なかったので仕方がありません。

随分個人的な話を書きましたが、人がある鉄道路線にメリットや愛着を感じるのは、人それぞれの理由によると私は思います。

「路線格差」は軽い読み物として面白い本ですが、路線格差をシリアスに考える必要はないでしょう。色々な制約条件の下で人は住む路線を選んでいき、そこに住んでそれなりの良さを見出すものだと私は思っています。

 

 

 

 

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【イディオム】Positive volatility 意味のある株価変動

2016年09月16日 | 英語・経済

昨日(9月15日)の米国株は弱い経済指標を受けて大幅反発した。株価は通常景気に敏感で好景気の兆候が表れると上昇し、不景気の兆候が出ると下落するものだが、現在の相場では弱い経済指標が歓迎される。なぜなら来週開かれる米国の連邦公開市場委員会で連銀が景気が弱いと判断すると政策金利の引き上げが行われないからだ。

USATodayはPositive Volatilityという題で「すべてのボラティリティが悪いわけではない。昨日ダウは178ポイント(約1%)上昇した」と書いている。

ボラティリティは株価等の変動幅の大きさを表す数値で、プラスもマイナスもない。つまり株価が急騰しても急落してもボラティリティは上がるのである。オプション取引を別にして、現物取引でボラティティが投資家にとってプラスの意味を持つのは、大きな下げ相場で買い場が生まれることだ。

株価がコンスタントにじりじり上がり続ける(つまりボラティリティが低い)と中々買い場が生まれず、新しい投資家が市場に入り難い状況が続く。

8月の小売業売上高はアナリスト予想(▲0.1%)を下回る▲0.3%で、卸売物価指数も予想(+0.1%)を下回り、変化なしだった。

昨日の株価をけん引したもう一つの要因はアップル株が急上昇(3.4%)したことだった。

プラス要因が重なり、一息ついた形だが、しばらくボラティリティの高い日が続くだろう。そしてPositive volatilityが続くとも思われない。

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格差のもとになる知識とは?

2016年09月15日 | ライフプランニングファイル

少し前に「よくぞ言ってくれた『言ってはいけない格差の真実』」というエントリーを書いたところ、色々なところからアクセスがあった。このエントリーは文芸春秋に橘玲さんが書いた「言ってはいけない格差の真実」という記事を紹介しながら、私の意見を加えたものだったが、「格差の原因となる知識とは何か」という点についてあまり言及しなかったので、ちょっと触れていきたいと思う(間接的にはソフトスキルが重要だとは書いたが)。

以下は私がビジネスパーソンとして、「採用される立場」「評価される立場」「評価する立場」「採用する立場」を経験し、転職した同僚・先輩後輩の成功事例・失敗事例などを見たことをベースにしている。したがって統計的な根拠がある話ではない。一人のビジネスパーソンの感想である。

経済格差の元になるのはソフトスキル

経済格差の元になるのは、ソフトスキルである。ソフトスキルとは「論理的思考力」「折衝力」「チャレンジ精神」「リーダーシップ力」などの総称である。大雑把にいって人間力と考えてよい。ただしその定義や範囲は人によって異なるがっこでは深入りしない。「狭い意味の知識」「技能」をテクニカルスキルというので、人間の持っている知的能力の中でテクニカルスキルを除いたものと考えても良いと私は考えている。そしてそのソフトスキルの差が経済格差の一つの原因になっていると私は考えてきた。

テクニカルスキルが学習で身につくことは容易に理解できると思うが、ソフトスキルが学習で身に着けることができるかどうかは議論のあるところだ。ある種のソフトスキルは学習することで向上することは間違いないが、ある種のソフトスキルは先天的なものではないか?と私は考えている。

今年8月初めに文部省の諮問機関である中教審は今後「アクティブラーニング」を重視するという新しい指導方針を提言した。アクティブラーニングとはソフトスキルを高めるということなので、教育の専門家はある種のソフトスキルが学習の成果であると考えていることは間違いないし、私の同感である。

求められるソフトスキルは環境によって異なる

求められるソフトスキルは時代や環境・職業・地位によって異なる。私が会社に入った頃(昭和50年)は、高度成長の余韻が残ている頃で、業務の量的拡大が業績拡大の推進力と考えられていた。だから「独創性」「発想力」といった能力より「数値目標への執着」「集団帰属性」といった特性が着目された。

しかし時代は国際化に移り、低成長やがてバブルそしてバブルの崩壊、失われた時代へと進んでいく。同じことの繰り返しでは利益を上げることができなくなってくると「独創性」「新規分野へのチャレンジ精神」といった特性が「協調性」などよりも重視される時代となった。

このように見てくると重視される特性、ソフトスキルというものは時代環境で変わっていくということができる。その中で変わらないものがあるとすれば「環境適応力」であろう。環境の変化に対して持っているソフトスキルの引き出しの中から必要なものを取り出して対応できる能力があると経済的に成功する可能性は高い。

私自身は自分が「環境適応力」が高いかどうかはわからないので、私の後輩のKさんの話をしてみよう。彼は私のいた会社に海外経験を買われて中途入社してきた。そして私のいた会社が海外業務を大幅縮小した後、ある電機メーカーに転職し、最終的には役員になった。私は彼のような人間は環境適応力が高いと考えている。海外経験や英語力を持っている人は他にも沢山いたが、彼のように上手くいった例は私の周りでは少ない。

人間の本能には「現状維持をしたい」という本能と「新しいことをしたい」という本能が併存している。新しいことをするにはリスクが伴うので「リスク選好度」と考えても良いだろう。ある程度のリスクを覚悟で新しい環境に身を置き適応していく能力=環境適応力は勇気を必要とする。人の人生は「現状維持」と「勇気」のバランスで決まると考えても良いが、私は居心地の良い「現状維持」と「勇気」のバランスは人によって異なると考えている。「現状維持」指向が強い人間が過度の「環境リスク変化」を取るとストレスから心身のバランスを崩すことになる。私は「現状維持」と「新しいことへのチャレンジ」のバランスはかなり固有のものだと考えている(長期的には文化・経済環境の変化で変わっていくとも思うが)

ソフトスキルの中には資質と才能が混じっている?

ソフトスキルと一括りに話をしてきたが、恐らく「資質」と「才能」の二つに分解することができると私は考えている。

資質とは例えば「やり始めたことをやり抜く持続力」のようなもので、才能は文才だとか計算能力のようなものだと私は考えている。

環境適応力も一種の資質である。人間の資質には違いがある。違いがあるから色々な環境変化に対応でき、人類全体として発展を続けることができるようになっているのだと思う。

そしてこの資質の部分は先天性がかなり高い。そしてその資質の部分が実は経済格差の一つの要因になっているのではないだろうか?

むしろ知能テストで測定されるIQの数値よりも資質の方が大事ではないか?と私は考えている。

 

 

 

 

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銀行預金が遺産分割協議の対象になる可能性(相続法改正中間試案)

2016年09月15日 | 相続

「銀行預金が遺産分割協議の対象になる可能性がある」というと、今まで相続手続きをされてきた方の中には怪訝に思われる方も多いと思う。

相続時に亡くなった方の銀行預金を払戻・解約のために銀行に行くと「相続人全員の方の署名・押印した遺産分割協議書が必要です」と言われ、時間と労力をかけて、遺産分割協議書を作られた方が多いからだ。

「銀行預金も遺産分割協議の対象である」というのは実務慣行である。ただし最高裁が下している判例によると「預金のような可分債権は当然には遺産分割協議の対象にはならず、相続人全員が遺産分割協議の対象にしない限り法定相続割合に基づいて分割可能」ということになっている(下級審には異なる判例もある)。

今回法制審議会(相続関係)は中間試案で相続法の改正に関するいくつかの提言を行っている。その一つとして「預金に代表される可分債権も遺産分割の対象に含める考え方」を提示しているが、試案には甲案・乙案がある。甲案というのは「預金債権を遺産分割協議の対象に含めるが、遺産分割前でも相続人は法定相続分に応じた預金の引き出しが可能」(分かり易いように「債権の行使」を「預金の引き出し」と言い換えている)というものだ。

そして遺産分割協議が整った後で、実際の遺産相続額を上回るような預金の引き出しがあれば、それを他の相続人に後で返還しなさいという考え方である。

乙案というのは「遺産分割協議が整うまで、相続人全員の合意がない限り、預金の引き出しはできない」という考え方だ。

それぞれにメリット・ディメリットがある。甲案の問題は「銀行窓口で法定相続人が全員で何人いて、自分の法定相続分はいくらでだと示さないといけない点」と「法定相続と異なる割合で遺産分割が行われた場合、最終的な調整が相続人に委ねられる点」だ。つまり預金を引き出してしまった人が他の相続人に現金を返却しないといけない場合に「もうお金はないよ」と開き直る(平たくいうと)リスクだ。

一方乙案の問題は「目先の生活資金に不足する相続人が遺産分割協議が整うまで被相続人の預金を引き出すおとができない点」だ。特にご主人が生活資金の大部分を管理していて、残された奥さんがほとんど現預金を持っていない場合である。

甲案・乙案のメリットは上で述べたことの逆である。つまり甲案だと「生活資金の問題は解決する」。一方乙案だと相続人間のトラブルや銀行の二重払いリスクは回避できる可能性は高いが、生活資金の問題は解決する。

★   ★   ★

この問題について一般社団法人 日本相続学会としては預金にある種の特約(預金者が死亡した場合あらかじめ指定した相続人が一定限度内で預金を引き出すことができる)をつけることで解決できるのではないか?と考え、そのような条件付きで乙案を支持するパブリックコメントを出す予定でいる。

なお預金が遺産分割協議の対象になるかどうかという点については現在大法廷で審議中であり、その結論が法改正に大きな影響を与えると考えられる。

★   ★   ★

さてここからが一般預金者として考えておくべきことである。

法改正がどうなるかはわからないが、実生活上トラブルが発生するのは、預金者であるご主人が亡くなって残された奥さんがほとんど自分名義の預金を持っていない場合である。このような事態を避ける一つの方法は、日ごろから奥さんの預金に葬儀費用や数か月分の生活費などの費用をプールしておくことである。たとえば奥さんに国民年金が支給されている場合、そのお金を残して、生活費をご主人の勘定から支払うことで資金をプールすることができる。

次に銀行が行っている遺言代用信託という商品を使うことだ。遺言代用信託というのは「顧客が銀行に預けた(信託した)資金を相続が発生した場合にあらかじめ指定した相続人(この場合奥さん)に給付する(払戻す)という商品だ。以前は信託銀行だけが提供していた商品だが、最近では都市銀行や一部の地銀でもこの商品を提供している。

高齢化等で複雑化する社会を法律だけ解決していくことは難しい。消費者もまた工夫が求められる時代なのである。

 

 

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