監督 ダーレン・アロノフスキー 出演 ミッキー・ローク、マリサ・トメイ
ミッキー・ロークがミッキー・ロークを演じている――という感じの映画。過去に人気を博したが、いまでは誰も見向きもしない。
彼を支えているのは「過去」の栄光だけ。ステロイドを注射し、髪を金色に染め、肌を日焼けマシーンで焼き、外見だけ強そうなレスラー。もう体は動かない。動かない体を血で飾り上げる。血を流しながら、不屈の魂で相手に立ち向かう。そのために隠したカミソリを使い、自分で額を切る。相手を傷つける「武器」ではなく、自己演出のための「道具」。いうなれば、血が観客をひきつける「武器」。
それは、いまのミッキー・ロークにとって、「醜く崩れた肉体」が観客をひきつける「武器」というのに似ている。他の人は知らないが、私はミッキー・ロークがどんなに醜く崩れた肉体をしているかにまず関心があり、この映画を見に行った。それは確かに「武器」であった。尻をさらけだして、自分でステロイドを注射するシーンまで見せている。醜いウソ。そして、ウソしか人に伝えるのもがないのである。ウソによって、いっそう醜くなる肉体が強烈である。
対照的なのがマリサ・メイトの肉体である。ミッキー・ロークの片思い(?)のストリッパー。年をとっていて、若い女性の美しさにはかなわない。醜い。醜いのだけれど、そこにはウソがない。ダンスもうまいというよりはヘタなのだが、そこにはウソがない。娘を抱え、懸命に生きている。その姿はミッキー・ロークとおなじようにみじめである。でも、ウソがない。(彼女の演技はなかなかすばらしく、彼女の演技があってはじめてミッキー・ロークの肉体が真実になる。)
ミッキー・ロークはマリサ・トメイから、ウソをやめて、ほんとうを生きるよう助言されるが、うまくいかない。わかれて生きている娘から家族であることを拒絶される。彼にとって「ほんとう」は結局、プロレスファンの歓声だけである。だから心臓のバイパス手術を受け、医師からプロレスをやめるよう言われているのに、死を覚悟して最後の試合に出場する。相手がミッキー・ロークを心配して、率先して「負け」を演出しようとするが、それを拒んで、「決め技」を披露しようとする。
ウソ(プロレスって、ウソだからね)しか生きられない――その姿が、おちぶれたミッキー・ロークに重なる。たしかプロボクサーに転身した時代もあったようだけれど、結局、ミッキー・ロークは役者しかすることがない。肉体をさらけだして、ウソという芝居を生きるしかない。
泣かせます。最後の最後に泣ける映画です。
ミッキー・ロークがミッキー・ロークを演じている――という感じの映画。過去に人気を博したが、いまでは誰も見向きもしない。
彼を支えているのは「過去」の栄光だけ。ステロイドを注射し、髪を金色に染め、肌を日焼けマシーンで焼き、外見だけ強そうなレスラー。もう体は動かない。動かない体を血で飾り上げる。血を流しながら、不屈の魂で相手に立ち向かう。そのために隠したカミソリを使い、自分で額を切る。相手を傷つける「武器」ではなく、自己演出のための「道具」。いうなれば、血が観客をひきつける「武器」。
それは、いまのミッキー・ロークにとって、「醜く崩れた肉体」が観客をひきつける「武器」というのに似ている。他の人は知らないが、私はミッキー・ロークがどんなに醜く崩れた肉体をしているかにまず関心があり、この映画を見に行った。それは確かに「武器」であった。尻をさらけだして、自分でステロイドを注射するシーンまで見せている。醜いウソ。そして、ウソしか人に伝えるのもがないのである。ウソによって、いっそう醜くなる肉体が強烈である。
対照的なのがマリサ・メイトの肉体である。ミッキー・ロークの片思い(?)のストリッパー。年をとっていて、若い女性の美しさにはかなわない。醜い。醜いのだけれど、そこにはウソがない。ダンスもうまいというよりはヘタなのだが、そこにはウソがない。娘を抱え、懸命に生きている。その姿はミッキー・ロークとおなじようにみじめである。でも、ウソがない。(彼女の演技はなかなかすばらしく、彼女の演技があってはじめてミッキー・ロークの肉体が真実になる。)
ミッキー・ロークはマリサ・トメイから、ウソをやめて、ほんとうを生きるよう助言されるが、うまくいかない。わかれて生きている娘から家族であることを拒絶される。彼にとって「ほんとう」は結局、プロレスファンの歓声だけである。だから心臓のバイパス手術を受け、医師からプロレスをやめるよう言われているのに、死を覚悟して最後の試合に出場する。相手がミッキー・ロークを心配して、率先して「負け」を演出しようとするが、それを拒んで、「決め技」を披露しようとする。
ウソ(プロレスって、ウソだからね)しか生きられない――その姿が、おちぶれたミッキー・ロークに重なる。たしかプロボクサーに転身した時代もあったようだけれど、結局、ミッキー・ロークは役者しかすることがない。肉体をさらけだして、ウソという芝居を生きるしかない。
泣かせます。最後の最後に泣ける映画です。
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