惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

記憶のコード

2007-09-14 21:22:32 | サイエンス
 今月は連休が2回もあり、その上、連載のある1誌(遊歩人)がリニューアルということで、締切が繰り上がったり、大変。

 ということで仕事にかまけている間に、日本は――というか自民党は、激変。驚いたり、あきれたりの連続です。明日は何が起こるかわかりませんねえ。

 今日はなんとか原稿を送って、その後、久しぶりにプールへ。総合体育館にある屋内プールで850メートルばかり泳いできました。
 夏の間、無心に泳いでいるうちに耳鳴りが軽減されたり、あちこち体調がよくなっいました。これを持続したくて、市民プールが開いてなくても、時々は泳いだ方がいいのではないかと考えています。

 余裕がなくて今まで書けませんでしたが、〈日経サイエンス〉10月号に「わかり始めた記憶の暗号」という興味深い記事が載っています。
 天才マウス「ドギー」を生んだJ・Z・チェン博士の書いたもので、海馬の一領域にあるニューロンの発火パターンから記憶内容のコードを(ほんの少しだけ)解明することが出来たらしいという。

 人間の記憶内容をコンピュータや他人の脳に移し替えるというようなSFが書かれてきていますが、それがどのように実現されるかについては誰も触れていません。ニューロンの活動をナノロボットなどで詳細に調べ、それを電気信号として再現する――というぐらいの記述がせいぜい。具体的に、記憶内容がどのような信号となるかは曖昧にされたままでした。

 しかし、チャン博士らはマウスの海馬を研究することで、たとえば地震の記憶とエレベーターの落下といった、似たところのある体験の記憶のどこが同じで、どこが異なるかを割り出した。地震の場合は「びっくりする出来事」と「動き」「揺れ」というニューロン群が活動し、エレベーター落下の場合は「びっくりする出来事」と「動き」「落下」というニューロン群が活動したというのです。つまり、両方の体験の差は「揺れ」と「落下」という要素にあった。

 海馬のニューロンはさまざまな記憶と対応しており、ある人物では女優のハル・ベリーのみに反応するニューロンが見つかったという。「お祖母さん細胞」説の復活ですね。

 こうした研究が進むことによって将来は「誰かの知識や思考を解読できるようになるかもしれない」とチャン博士は書いています。
 私は思考の解読については否定的な見通しをもっていましたが、この記事を読むと「もしかすると……」と思ってしまいました。まあ、記憶ニューロンの活動パターンは個人差が大きいでしょうから、対象となる人物の脳についての入念なテストが事前に必要ではあるでしょうけれど。
 科学の進歩は凄いものだと、つくづく思います。