ベルリンの壁が崩壊したのは、現地時間で1989年11月9日の夜のこと。もうすぐ30年目がやって来ます。
思い返すと、私たちが生きてきた世界の構造が大きく変わった時点でした。
生まれてからずっと米ソの対立という東西両陣営が世界を二分する構図が続いていました。それが崩れ、「パックス・アメリカーナ」の世界になるかと思っていたのですが、アラブの春は訪れることがなく、イスラム過激派が西欧文明に攻撃を加え、貧しい人々が豊かな国を目指すうねりが巻き起こりました。世界は流動化しています。
東西対立という構図を支えたのは、社会主義対資本主義という政治的・経済的イデオロギーでしたが、良い意味でも悪い意味でも、それが世界各国のあり方を固定化する重しになっていたのだと感じます。
今、そうした支えとなる主義主張は消え、「大きなストーリーの時代は終わった」ということになっています。しかし、大きくなくても、やはり人々を鼓舞し、前を向かせるストーリーは必要なように思います。
それを語る人はどこにいるのか。語るべきテーマは何か。
たくさんの材料があり、それぞれのテーマごとにストーリーは生まれているようですが、それらの多くを束ねる視点が欲しいものです。