惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

歌う貴人たち

2020-08-18 21:31:08 | 本と雑誌

 今、読んでいるのは遠藤耕太郎『万葉集の起源 東アジアに息づく抒情の系譜』(中公新書)という本。

 万葉集の歌と、中国少数民族が今もおこなう「歌垣」とを比較し、古代人の生活や心情に迫っているのですが、読みながら私の脳裏には、幼い頃の田舎(高知)で聞いた歌の数々が浮かぶのです。

 いちばん機会が多かったのは、いうまでもなく酒宴ですが、他にも多数が集まる労働の場とか、遊びの場とか。
 単純なメロディーにのせて、歌われる歌の中には、その場その場の即興もあったのではないでしょうか。そんな中の、皆が気に入った歌詞がだんだんとスタンダードになってゆく。
 万葉集にもそんなふうに誕生した歌が採用されているのではないかと感じます。

 ただもっぱら歌を作ったのは朝廷の人々。天皇家の人たちや宮廷の役人たちが「歌人」となっています。
 で、その中心となっているのは恋の歌。

 こんな伝統を古代から持ち続けている日本という国はとてもユニークだと思います。よくまあこれで統治が出来てきたものだという気さえするのですが……。