金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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中国の農民抗争

2005年06月27日 | 国際・政治

中国の土地所有権の曖昧さから農民と開発業者の土地を巡る抗争が激化していることを最近のエコノミスト誌が報じている。特に地方政府の汚職の激しさが大きな問題になっている様だ。そのポイントは後述のとおりだがその前に私見を述べておこう。

今開発優先・経済発展優先の政策のもと多くの農民が土地を失っているが、彼らの不満は「集団としての怒りの臨界点」には達していないのだろうか?それは共産党政権を揺るがす程のものではないのだろうか?

それにしても日本のマスコミは中国寄りの記事が多すぎる。私は中国共産党が14億人に人民を兎にも角にも「食べることができる」ようにしてきたことは評価するもの~個別には文化大革命等問題はあったが~だが、それは我々が享受し今後も守るべき「自由」とか「誌的財産権」が保護された世界とは全く異なる世界であることも同時に理解して置かなくてはなるまい。そのような中国の現状と問題を直視しないで、靖国問題等を論じることは不毛な観念論を弄んでいるに過ぎないといわざるをえない。中国の現実を日本人が直視する時新たな日中関係が見えてくるのではないだろうか?

  • 中国では毎年農地の盗用を巡って数万件の抗争~多くは暴力を伴うが~が起こっている。その中でも6月11日に河北県で起きた抗争は公的報道機関の特別な関心を引いた。
  • 一人の農民によりこっそり持ち出されたビデオテープによれば、彼の仲間の農民が約300名のヘルメットをかぶった若い暴徒に棒やスコップで殴られている。凶徒に発砲の音も聞くことができる。6名の村人が殺され約50名が入院した。
  • ビデオのコピーがインターネット上で広く回覧されたため、当局は迅速に対応した。村が所属する定州の市長と共産党主席は首になった。公的報道によれば22名が逮捕された。
  • 土地を巡る抗争は急成長を遂げる国ではどこでも一般的であるが、中国の場合は土地所有権に関する明快さの欠如が事態を悪化させている。理論的は地方の土地は「集団的に所有」されていることになる。
  • しかしながらそのことが村民自体がまたは数箇所の村を管理する市政府が農民のために集合的権利を行使するのかはっきりしない。
  • 農民は更新可能な30年間の土地使用権を有しているが、彼らは土地を売ることはできない。また理論的に村人達が土地処分権を持っているとしても、実際には通常村人達は共産党員にコントロールされている。共産党員はより高いレベルの命令を遂行する任務を帯びている。
  • 共産党が土地私有権を制限したことで、地方における土地の産業利用転用やインフラ整備は促進したが、一方多大な汚職の温床となった。地方政府の役人は、開発業者から土地売却により多額の金を懐に入れた。
  • 昨年共産党は農耕地の急速な減少は食料安全性に影響を与えるということで、不急の農地(から他の用途への)転用を半年間停止した。更に農地からの転用は高いレベルの認可が必要という規制も発表した。
  • 恩家宝首相は「農地収用を抑えることに失敗すると土地と職業のない農民の数が増えるので極めて重大な事態になる」と述べた。
  • 土地の収用は実は開発が進んだ沿岸部や大都市周辺で大部分行なわれている。
  • 北京近郊の村ではオリンピック関連で農地が収容されているが、農民達は土地代金の大部分は地方政府の役人の手に落ちて、彼らにはごく小額しか回ってこないことを懸念している。
コメント
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