先日エネルギー関連のある取引先から「おたくの銀行の為替デスクの相場観~当面の円安ドル高~が当たっていたので助かった。しかし良いのは相場観が当たったことだけではない。相場観は所詮相場観で当たったり外れたりする。我々も財務のプロなので、色々な人の話を聞いて自分で判断する。おたくのカスタマーディーラーは円安なら円安とはっきり自分の相場観を述べるが、これが良いところだ。メガバンクのディーラーでも玉虫色の相場観を述べるだけの人もいるがこれは意味がない」という主旨の話を聞いた。私はこの話を聞いてGEの会長で名経営者として名高いジャック・ウエルチの次の言葉を思い出していた。
Toughminded people are always simple. Insecured managers create comlexity.
Toughmindedには「意志が強い」という意味と「現実的」という意味がある。Insecuredとは自信がないということ。
従ってウエルチ会長の言葉は「意志が強くて現実的な人はつねにシンプルである。自信のない管理者は事態を混乱させるだけだ」という意味である。
このシンプルということが、リーダーシップのみならずビジネス遂行上極めて重要なことである。ところで世の中の事象は複雑なものであり、それを人間がとらえる時どう認識するか?という問題は、その人の個性によって異なる。これは心理学は「認知的複雑性」と呼ばれるものである。複雑な事象から今自分に必要なものを切り出しフォーカスする・・・・写真に例えれば、強調したい花なら花にフォーカスし、背景を思い切ってぼかす・・・という手法がリーダーには必要ということだ。こういう認識方法を取ることができる人を「認知的複雑性が低い」というそうだ。
意志の強い人間は現実的だというのも良い言葉だ。我々はともすれば自分に有利な様に事態を解釈する傾向がある。例えば行動ファイナンス理論が教えるところでは「人は自分が持っている株が値上がりする」と思い込みたがるという。優れたファンドマネージャーとはこのような誤ったバイアスから自由でなければならない。
Toughminded people are always simple.という言葉は人生の色々な局面で思い起こすに値する言葉である。
ただし認知的複雑性が低い人は芸術家には向かないと聞く。優れた事業家と芸術家は所詮両立しないものなのだろうか?