先週金曜日にS&P500は1,365.74ポイントまで上昇した。これは2011年4月の1,363.61ポイントを超え、08年のリーマンショック前のレベルまで戻ってきた。リーマンショック後の米国株の下落は激しく、1ヶ月で4分の1の価値が吹っ飛んだ。ただし株価は「将来の期待」を先取りするものだから、回復の方も早かった訳だ。これは歴史的に見ても、非常に素早いリバウンドだ。1929年の大恐慌や1989年の日本のバブル崩壊と比較するとそのリバウンドの素早さが分かる。大恐慌後、実質価値において株価が恐慌前の水準を回復するには25年の年月を要したし、日本では未だにピークを回復していない。
だがもっと広い眼で金融危機が先進国に与えたマイナスの影響を見てみると傷跡は大きそうだ。2月25日付のエコノミスト誌は「失われた時を求めて」のプルーストからプルースト指数という言葉を作っている。それによるとギリシャは経済危機で12年を失った。イタリア、ポルトガル、スペインといったところは7年の損失、英国は8年で米国は10年の損失ということだ。
エコノミスト誌は損失を計算するに際して7つの経済健全性指標を3つの大きなカテゴリーに分けている。第一は家計の健全性に関するもので、金融資産の価値や不動産価格がこのカテゴリーに入る。二番目は年間生産量や個人消費、三番目は実質賃金や失業率だ。
例えばインフレ調整後の不動産価格で見ると平均的なアメリカの自宅所有者は2001年の物件価値の上にいるから10年の遅れがある。アメリカの失業率は改善傾向にあるが、未だに1983年当時のレベル。英国の失業率も過去17年で最悪だ。
今回の世界的な株高は中央銀行の思い切った流動性供給や米国の景気回復ムードが牽引したことが大きい。株高が消費拡大や住宅市況の本格回復につながるかどうか?原油高などのマイナス要因を抱えながら、実物経済は前に進もうとしている。