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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国株、リーマンショックのレベルを回復したが・・・

2012年02月26日 | 投資

先週金曜日にS&P500は1,365.74ポイントまで上昇した。これは2011年4月の1,363.61ポイントを超え、08年のリーマンショック前のレベルまで戻ってきた。リーマンショック後の米国株の下落は激しく、1ヶ月で4分の1の価値が吹っ飛んだ。ただし株価は「将来の期待」を先取りするものだから、回復の方も早かった訳だ。これは歴史的に見ても、非常に素早いリバウンドだ。1929年の大恐慌や1989年の日本のバブル崩壊と比較するとそのリバウンドの素早さが分かる。大恐慌後、実質価値において株価が恐慌前の水準を回復するには25年の年月を要したし、日本では未だにピークを回復していない。

だがもっと広い眼で金融危機が先進国に与えたマイナスの影響を見てみると傷跡は大きそうだ。2月25日付のエコノミスト誌は「失われた時を求めて」のプルーストからプルースト指数という言葉を作っている。それによるとギリシャは経済危機で12年を失った。イタリア、ポルトガル、スペインといったところは7年の損失、英国は8年で米国は10年の損失ということだ。

エコノミスト誌は損失を計算するに際して7つの経済健全性指標を3つの大きなカテゴリーに分けている。第一は家計の健全性に関するもので、金融資産の価値や不動産価格がこのカテゴリーに入る。二番目は年間生産量や個人消費、三番目は実質賃金や失業率だ。

例えばインフレ調整後の不動産価格で見ると平均的なアメリカの自宅所有者は2001年の物件価値の上にいるから10年の遅れがある。アメリカの失業率は改善傾向にあるが、未だに1983年当時のレベル。英国の失業率も過去17年で最悪だ。

今回の世界的な株高は中央銀行の思い切った流動性供給や米国の景気回復ムードが牽引したことが大きい。株高が消費拡大や住宅市況の本格回復につながるかどうか?原油高などのマイナス要因を抱えながら、実物経済は前に進もうとしている。

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ヘッジファンドの言い訳

2012年02月26日 | 投資

先週金曜日頃から日本ではAIJ投資顧問による年金資金の不正運用問題が話題になっている。もっとも資金運用において何が不正で何が不正でないか?という点に明確な線引きができるかどうか?というと疑問が残らないではないが。

そういえば2月18日のエコノミスト誌にFrom alpha to smart betaという短い記事が出いた。資産運用業界で言葉の定義が変わっていることを揶揄したものだ。

記事はある失敗したファンドから投資家当てのレターの形である。

曰く:

投資家の皆様

我々は業界の動向に合わせて、マーケッティングとコミュニケーションに使う言葉を少し変えます。まず重要なことは「ヘッジファンド」から「代替的資産マネージャー」に名前を変えます。2008年に我々は如何にしてヘッジすれば良いか分からなかったからです。

我々はかって市場動向に左右されない「絶対リターン」を約束していましたが、これは不可能になりました。そこで「リスク調整後リターン」という言葉を使いましたが、それに失敗すると「相対リターン」という言葉を使いました。2011年のように市場のパフォーマンスに較べてはるかに見劣りするリターンしか挙げられなくなるとリターンそのものについて、お気づきでしょうが、話を止めてしまいました。

また投資家の皆様が支払う手数料の根拠である「アルファ」についても、コンセプトを変え「スマートベータ」を提供する方向に動いています。

でも我々は「2-20%」という報酬体系でスタイル・ドリフトを行うつもりはありません。

失敗したファンド会社より

投資の世界でアルファとは「個々の証券(個別株式銘柄等)が持つ価値」のことでベータとは「その証券や同じ属性の証券が持つ市場の動きに対する感応度」を指す。例えば「証券株は感応度が高い」という言い方をするがこれは証券株は「株式市況が良くなるときはそれよりも良くなり、悪くなるときは輪をかけて悪くなる」ことを意味している。

スマートベータという言葉は余り聞きなれない言葉だが、市況の変化を先取りして、値動きの荒い株を持つことでパフォーマンスを高めようという位のコンセプトか?ただしこれはリスクを増やしているに過ぎないが。

資産運用業者が運用成果について虚偽の報告をすることは無論重大な不正だ。だが運用スタイルを変えてみたり、約束したリスク以上のリスクを取ったりすることは不正にならないのか?という問題となるとグレーゾーンは大きいかもしれないと私は感じている。

コメント (1)
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