終盤に入った米国大統領選挙はヒラリー・クリントンが勝つ可能性が高まっている。大統領選挙ではヒラリー(民主党)が勝つ方がトランプ(共和党)が勝つより、少なくとも目先の株式市場には良いと考えていた。恐らく多くの人も同意見だろう。
ドナルド・トランプが共和党路線を混乱させているため、11月の総選挙でも上院のみならず下院でも民主党が多数を占めるのではないか?という見方が高まっている。米国の政治用語で一党が両院の多数を占める選挙のこをWave electionというそうだ。辞書を探しても適切な訳語が見つからないので、とりあえず地滑り的勝利としておくが、選挙後誰かが適訳を考え付くことを期待している。
さてこのWave electionの株式市場に与える影響だが、ゴールドマンザックスによるとマイナスの影響が予想されるという。
歴史的に見ると1932年以降6回Wave electionが起きたが、その内4回で選挙後1~3か月の間にS&P500は2%~4%下落した。一方一党勝利以外の15回のケースでは選挙後1~3か月の株式リターンの中央値は0~6%だった。
これは一つの政党が多数を占めることで大きな政策変更が起きることに起因するようだ。
セクター別の推奨についてゴールドマンは、民主党が多数を占めると国のインフラ投資やヘルスケア支出が増えるので関連銘柄は買い、薬品とバイオテックは売りと述べている。これはヒラリーの薬品価格に対する政策が製薬会社の業績にマイナスの影響を与えると考えれるからだ。
別の情報源だが、ヒラリーは相続税(正確に言うと財産税)の引き上げを提言している。現在の米国の相続税の最高税率は40%(遺産額1百万ドル以上)だがヒラリーは最高税率を65%に引き上げると提案している。
税法はどこの国でも複雑で、米国の場合も最高額545百万ドルの基礎控除があるので、税額表どおりの税金を払う人はそれほど多くない。また米国では年14,000ドのル贈与税控除が認められている。夫婦が子供や孫に贈与を行う場合は子供・孫一人につき14,000ドル×2の28,000ドルが非課税で贈与できる金額上限になる。
ということで上手にタックスプランニングを組むと相当相続税額を減らすことができるので、ヒラリーの相続税改正提案(そもそも法案になるかどうか不明)がどれ程税収面で効果があるかは簡単に予測することはできない。
「上に政策あれば下に対策あり」というのは中国の格言だが、こと税に関しては世界共通の法則だろう。
話が少し脇道にそれたが、ヒラリーの勝利と民主党の総選挙勝利が実現するとそれはそれで色々相場に影響を与えるということは頭に入れておいてよいと思った。