昨日(12月18日)米下院は「権力乱用」と「議会妨害」によりトランプ大統領の弾劾訴追議案を多数決で可決した。民主党が多数を占める下院で弾劾訴追議案が可決されるというのは予想通りのシナリオである。
これから先どうなるか?というと上院で弾劾裁判が行われる。判事団の中には最高裁の首席判事ジョン・ロバーツ氏が入り、議案を提出した下院民主党議員が検事となり裁判が行われる。100名の上院議員は陪審員である。
上院の勢力図は、共和党53名対民主党47名で共和党が多数を占める。更に大統領に有罪・罷免判決を与えるには2/3以上つまり67名の支持を得る必要がある。米国では過去2回大統領が弾劾訴追を受けたがいずれも有罪を免れた。ウオーターゲート事件で大統領を辞任したニクソンは、下院で弾劾決議が行われる前に大統領を辞任したので弾劾訴追された大統領にはカウントされない。
以上のような状況からトランプ大統領についても共和党が多数を占める弾劾裁判では有罪判決を免れるだろうと予想する人は多い。
そんな中で私が一つ引っかかるのは最高裁のロバーツ判事の動きである。保守派とみなされるロバーツ判事とトランプ大統領の間には昨年11月にちょっとした出来事があった。それはツイッターで裁判官を批判するトランプ大統領に対し、ロバーツ判事が公的な声明で司法の独立性を述べて反論するというものだった。
ロバーツ判事が過去の経緯にこだわるようなことはないが、彼が検察団(下院民主党)が要請する証人喚問を認めた場合は、大統領首席補佐官代行のミック・マルバニーや9月に解任されたボルトン元補佐官の口から思わぬ証拠が飛び出し、裁判の様相を変える可能性があることは否定できないと私は考えている。
回りくどい言い方になったが、私はトランプは有罪にならないと太鼓判を押してよいのかどうか判断に迷っているのである。もっともどちらに転んでもこれは政治的イベントであり、株式相場に本源的な影響を与えるものではない。トランプ劇場としては見ものではあるが。