この前ネパール人夫妻が日本に遊びに来た時、聞けば良かったのだが、タイミングを失し、確認できなかった笑い話がある。
その話は沢木耕太郎のバーボン・ストリート(新潮文庫)の中のクレイジー・クレイジーに出てくる。
「ネパールにトリブバン大学という有名な大学がある。この大学は超エリート校でこの大学を出るとエリートとして将来が約束されているので、受験生が殺到した。この過熱状況を沈静化するため、文部省のある役人がコペルニクス的転回というべき名案を思い付いた。それは全ネパールの大学をトリブバンと改名するというものだった。」沢木耕太郎は「驚くべきことに学制改革の際にこの案は採用され、ネパール中の大学はすべてトリブバンという名に変わったという。本当か嘘か確かめることもしなかったが、この話は悪くなかった。」と結んでいる。
無論この小話は超有名校への受験生の集中を揶揄した作り話だと私は思う。
なぜなら現在ネパールにはカトマンズ大学、ネパール工科大学など幾つかの大学があるからだ。また総ての大学がトリブバン大学では、トリブバンは大学という普通名詞になってしまうだろう。
ということで話を面白くした小話なのだろうが、この話がネパール生まれなのかどうかをちょっと聞いて見たかったが、今回はその機会をなくした。
ちなみにトリブバンというのは「三つの世界」という意味でヒンドゥー教では天界・人間界・地獄界を指すらしい。トリブバンはカトマンズの空港名にもなっている。
ところで現在ネパールの大学生はトリブバン大学などネパール国内の大学に進むより(あるいは進学した後で)海外の大学で勉強することを選好するようだ。海外で先端的な学問を勉強してそのまま海外で働く若者も多い。でもそんな傾向が続くと国が空洞化してしまうだろう。もう一度国内に超エリート校を作る試みがあっても良いかもしれない。