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ロシアのウクライナ侵略の失敗を孫子の切り口で考えると・・・

2022年03月22日 | ニュース
 ロシアがウクライナに侵略してから1カ月になろうとしているが、出口はまだ見えない。軍事施設のみをターゲットして攻撃する精密攻撃に失敗したロシア軍は無差別攻撃に転じていると報じられている。軍隊や軍事施設に対する攻撃は適法であるが、人民や民生施設に対する無差別な攻撃は戦時国際法で禁じられている。
 ロシア軍が今やっていること及びこれからやろうとする可能性が高いことは戦時国際法の禁止事項に違反する可能性が高いのだ。
 「軍事施設の攻撃は適法である」というと、平和憲法下に暮らす日本人には奇異に響くかもしれないが、世界的に見ると国家には交戦権があると考えられている。
 おそらく国に闘う権利があると考えられたのは数千年以上も昔からだろう。
 今日的な国家が生まれるはるか前から人々は何かを求めて、また何かを守るために闘ってきた。
 そしてその中から戦争の哲学が生まれてきた。その頂点にあるのが孫子だ。今から二千五百年位前の中国の春秋時代に書かれた兵法の書である。
 孫子は兵法の書として紹介されることが多いが、実は「如何に戦うか」を論じた書物ではなく「如何にして戦いを避けるか」を説いた書物である。
 孫子は冒頭で「戦争とは国家存亡の分かれ道であり、心して取り組まねばならない」と述べ、実際に敵と干戈を交えることは下策として戦わずして相手を屈するのを上策とする。そして相手の城を攻めるのをもっとも下策とする。何故なら城攻めは膨大な兵力を必要とし、たとえ勝つにしろ味方も敵も人的・経済的損傷が甚だしいからである。
 ロシアのウクライナ侵略を見て思い浮かぶのは孫子の費留(ひりゅう)という言葉である。孫子は第十二火攻編で「夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり。命(な)づけて費留という」と述べている。
 敵軍を撃破し、領土を占領しても、その戦争の目的を達成することができなければ骨折り損のくたびれもうけに終わるという意味だ。
 今まさにウクライナでロシア軍が行おうとしていることは、この費留である。ロシアがウクライナに新ロシアの傀儡政権を作り、自分の勢力圏としてNATOに対する胸壁とするという戦略目的は侵略開始の早い段階で失敗した。電光石火の進軍で最小の犠牲でクーデターを達成する以外にロシアが戦争目的を達成する方法はなかったのだ。これから大量破壊兵器を投入してウクライナを屈服させることが可能か不可能かは分からない。はっきりしていることは仮に屈服させることができたとしてもウクライナ人がロシア人に心服ことは絶対にないから、果てのない内戦が続くのみである。
 プーチンが孫子を読んでいたかどうかは知らないが、習近平は孫子という世界最高の名著を読んでいることを期待したい。読んでいれば費留に終わるであろう戦略戦争の虚しさを知っていると期待できるからだ。
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