金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日はまたまた沈むのか?

2009年04月03日 | 社会・経済

4月2日付けのエコノミスト誌は「信じ難いほど収縮する経済」という題で、日本の経済の先行きに警鐘を鳴らしていた。かってエコノミスト誌は前の編集長ビル・エモット氏が数年前「日はまた昇る」という論文を掲載し、日本の復活を予想したが、数年後には暗い見通しを発表することになった。因みにエモット氏は90年に「日はまた沈む」という論文で日本のバブル崩壊を予想した。

エコノミスト誌の英文は通常かなり難しいが、この記事の英語はきわめて易しい。私の勝手な推測だが、私のように英語の苦手な日本の経済人にも読み易いようにと配慮をしているのではないだろうか?

余談だが英語という言葉は、相当簡単に書くこともできるし、恐ろしく難しい文章を書くこともできる言葉だ。その大きな理由は語彙が非常に多いことだ。通常使う日本語の単語は4,5万位だが、英単語はその数倍ある。そして同意語Synonymを沢山使う程高級な文章と考える人が多いから、高級誌の文章は非常に難しくなる訳だ。

さて本題だが、エコノミスト誌は「失われた(最初の)10年は不幸とみなされるかもしれないが、二度目の失われた10年は不注意に見える」と書き出す。OECDの「日本のGDPは今年6.6%減少する」という予想を引いて、もしこの予想が正しいとすると「日本は1991年から年率0.6%しか成長していないことになる」と述べる。

今回の世界的な危機が先進国の中で何故日本に一番激しいマイナス影響を与えたかという点について、「日本は輸出に依存し過ぎている」という一般的な見解より真実はもう少し複雑だ。日本のGDPに対する輸出比率はドイツや中国より低く、最近まで米国と同程度であった。

ただし2000年代中頃からの景気回復期つまり「日はまた昇った」時期に日本の輸出企業は「円安」と「米国の消費ブーム」が永続すると信じて、設備投資を続けた。この資本支出を加えると2007年のGDP成長率の約半分は広い意味の輸出が牽引したとエコノミスト誌は述べる。

日本は世界の需要が収縮する速度よりも早く生産を減速させた。例えば日本の自動車生産は前年比50%だったが、世界の自動車販売台数は25%しか落ちていない。この事実を見てマッコーリー証券のエコノミストは「日本は在庫調整がまもなく終わるので、工業生産は短期的な回復を見せる」と予想する。これはこの前の日銀短観の3ヶ月後の景気予想が現時点より良いことと平仄を合わせるものだ。

しかしエコノミスト誌は企業利益の減少と失業率の上昇や実質賃金の低下から経済は再び悪化する可能性が高いと予測する。同誌は日本が今年度新たな景気刺激策をとっても、生産ギャップを埋めることは出来ないだろうと懸念を示す。生産ギャップは2008年の第4四半期にGDPの4%まで拡大していたが、今年の終わりには10%近くなるという。これは90年代の景気下降局面の倍だ。

暗い予想を述べた後、エコノミスト誌は日本のとって一つの選択肢は「贈与税の税率を下げて高齢層から若年層への資産移転を容易にして、若年層の消費と住宅投資を刺激する」ことだと述べる。そして高齢者は年金と介護に対する不安から、資産を保有したがるのだから、介護サービスに関する規制を緩和し、サービスを充実させて高齢者の生活の質を改善するべきだと主張する。

エコノミスト誌の記事の紹介はこの程度にして、私は退職者層(ただし後15年位は生きるだろうと考えている人)の資金を「高等教育を受ける人」に投資するような仕組を作ってはどうだろうか?と考えている。簡単にいうと中高年から資金を集めて奨学金ファンドを作るということだ。対象は日本人に限る必要はない。返済を担保する方法があれば外国人でもかまわない。ただし「飛びっきり優秀な人」の「大学以上」の教育に限る。こうすることで日本の技術レベルを向上させながら、投資する中高年も精神的な満足度と相応のリターンを得るというアイディアはどうだろうか?とふと思いついた次第だ。

思いつきはさておき、沈みかけた日をまたまた昇らせるには、本気になって何かを行動に移すべきときだろう。G20の前にオバマ大統領がこぼしていたように「これからはアメリカだけを景気回復のエンジンと頼むことはできない」からだ。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« デトロイトの新しいライバル... | トップ | Trade down (イディオム・シ... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは。  (Hiko)
2009-04-04 10:16:06
こんにちは。 

ほぼ、毎日拝見しており、時々Economist誌の解説を部下の教材に使わせています。 私自身、金融機関に勤務するものです。

今回のG20 につき昨日あたりから、共同宣言合意に至る舞台裏の話が出てきました。 なかでも、Financial Timesは、宣言の数は長いが、Toxic Assetsの解消につき具体的な道筋を示していないことに落胆の意を評していたのは、さすが!と感じ入りました。このあたりの、コメントは日本のQuality Paperとは格段の差がありますね。London G20の評価はこの記事で決まりと思いました。 一方、Tax Haevenについては、先週のEconomist誌のアメリカが一番酷いという記事はお読みになられましたか? これも、G20の宣言と重ねると、国際会議の魑魅魍魎を垣間見せてくれたと感じます。

さて、コメントのEconomist記事ですが、結局、日本は税制改正になると頑なですね。イスラム金融にしても、東京はそのアジアのマーケットになれるポテンシャルはあるが、同金融の果実を利子所得とは認知出来ない。 それと、日本の内需喚起論争は、前川レポート以来の古典的命題ですが、私自身、今の20代、30代の方たちの人生設計に、持家という点を重視するという考えは急速に薄れて来ていると感じます。よって、銀行の国内リテール業務のビジネスモデルは再構築が必要と感じます。

記事でその通りと思う点は、相続税の軽減。 この点は、早く手を打たないと、世界に誇る「個人金融資産1,500兆」は瞬く間に減価するでしょうし、それはもう始まっています。 これも、また、税制の問題ですが。。。

長文ご容赦下さい。

よい週末を。

返信する

コメントを投稿

社会・経済」カテゴリの最新記事